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「自給率5%のエビを捨てるなんて!」安く売買しすぐ捨てる日本への提言 マシンガンズ滝沢さん語る(下)

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
お笑い芸人でゴミ清掃員のマシンガンズ滝沢秀一さん(筆者撮影)

年間2兆円近くを費やしているゴミ処理費。ゴミの70%を占めるのが生活系ゴミで、生ゴミの40%近くを占めるのが食品ロスだ。ゴミを減らすことは、イコール、食べ物のゴミ(食品ロス)を減らすことでもある。

お笑い芸人でゴミ清掃員の、マシンガンズ滝沢秀一さんに取材した。

「家庭ゴミからおせち、メロン丸ごと3個・・・ゴミ清掃員マシンガンズ滝沢さんが明かす家庭ゴミの中身(上)」からの続き

居酒屋ではエビフライや刺身が手付かずのまま・・・

ー(滝沢さんが)居酒屋で働いていたときは、家庭とは違って、調理をしたものが捨てられるということが多かったなと。

滝沢:そうですね。もうコース料理とかですよね。

ーコース料理。

エビを使った生春巻き(筆者撮影)
エビを使った生春巻き(筆者撮影)

滝沢:俺は、居酒屋でホールをやっていたんで、エビフライなんかを出していたんですけれども、手付かずのままで、そのまま捨てちゃうことがあったんですよね。

ー他に印象的なのはありました? 

滝沢:えびせんみたいなやつとかは食べないんでしょうね。最初に出てくるやつとかは、もう。

ー付き出し(お通し)みたいな?

滝沢:うん。

ーそこは何料理(の店)ですか?

滝沢:チェーン店の居酒屋です。安い居酒屋なんですけれども。

ーじゃあ、いろいろな料理があるわけですよね?

滝沢:うん。最近、調べるようになったら、エビなんて、自給率5%かなんかなんですよね。95%は輸入で(注)。輸入してまで捨てるとはなんだよ!と、ちょっと思っちゃいますね。

ー本当ですね。

注:「エビ」について

平成13年時点の自給率は5%

平成25年のデータでは、世界全体のエビ生産国のうち、日本の占める割合は4%(この数字は自給率とは異なる)。

平成28年から29年のデータでは、エビに関する日本の対外依存度は92%。いずれにせよ、消費するエビのほとんどを海外から多額を費やして輸入して流通・調理し、国内で廃棄していることに変わりはない。

滝沢:あとは、よくあるパターンで・・・これは俺も昔、心当たりがあるんですけれども、女の人が「デザートを食べたい」と言うから、「まあ食べれば」と言って、一口食って「ちょっとイメージと違う」と言って、そのまま残すとか。「なんだ、イメージと違うって?もったいねえな」と普通に思いますよね。

ー確かにそうですね。あと席替えをして、だんだん話が乗ってきて、誰が誰(の席)だか分かんなくなっちゃって。

滝沢:誰が誰だか分かんなくなっちゃうね。

道端に捨てられていたゴミ。飲食店関係と思われ、中には青菜や食品の空の容器が入っていた(筆者撮影)
道端に捨てられていたゴミ。飲食店関係と思われ、中には青菜や食品の空の容器が入っていた(筆者撮影)

安いことが物を粗末に 買う時に捨てることまで考えることが大事

ー刺身とかは、食べるんですか?

滝沢:そう言われりゃ、刺身は乾いたまま残っているのが多かったですね。(飲み会の)途中で、1~2時間ぐらいたっちゃうと、おいしくなさそうに見えちゃうから、(料理が)出てきたときにそのまま食べてくれちゃえば、一番いいんだろうけれどもな。

刺身や回転寿司の寿司は、時間が経つと乾いてくるため捨てざるを得ない(筆者撮影)
刺身や回転寿司の寿司は、時間が経つと乾いてくるため捨てざるを得ない(筆者撮影)

ーやっぱりコース料理は残るんだな。

滝沢:コース料理はそうですね。

ーイタリアの人に聞いた話では、イタリアは外食のロスが7%なんですって。で、なんでかな?と、この前、イタリア人の人に聞いたら、やっぱり(外食費が)高い、と。

日本だと500円ぐらいで牛丼とかが食べられるじゃないですか。でも、1食2,000円とかそれ以上する。贅沢だから、コースは頼まないと。で、「これが食べたい」というのを(単品で)1個頼んで食べ切る。イタリアに住んでいる日本人の男の人がいるんですけれども、彼が言うには、日本だと、(外食すると)家に帰らないで、外で食べちゃうみたいなのが多いじゃないですか。

滝沢:はい、はい。

ーイタリアでは、バーで一杯引っ掛けて、それで帰って、食事は家族と食べるという。まあ、(値段が)高いというのもあるんだろうけれども。

イタリアではバール(バー)で一杯飲みながら、チケッティ(おつまみ)をつまむ。本格的な食事は家に帰ってからというパターンが多いと現地の人に聞いた(筆者撮影)
イタリアではバール(バー)で一杯飲みながら、チケッティ(おつまみ)をつまむ。本格的な食事は家に帰ってからというパターンが多いと現地の人に聞いた(筆者撮影)

滝沢:なるほど、確かに。そう考えると、安いということが、意外とものを粗末に。

ーそうなんですよ。

滝沢:僕の本なんかもそうなんです(書いてあるんです)けれども、100円ショップかなんかの、まだ全然使える新品同様のものとか(が捨てられている)。100円ショップなんだろうなというのは、バンバン捨てられるんで。安く買って捨てちゃおうというのが、今の世の中は根付いているのかもしんないですね。

ーそうですね。

滝沢:うん。買うときに捨てることを考えていないというか、なんかね。

ーそうなんですね。(本でも)「捨てることを考えて買いなさい」とおっしゃっていましたもんね。

滝沢:そうなんですよね。居酒屋だったら、仕込みの時に捨てちゃうのが結構多かったような感じがするな。

バイトの大学生に聞くと、回転寿司は、ネタが乾いてくるから何回転かしたら捨てるし、披露宴会場でバイトしている子は、ウェディングケーキを丸ごと捨てたと言っていました。

滝沢:そうなんだ。

ー(ケーキ)カットして、ちょっと食べるけれども、あとは廃棄とか、本当にいろいろな話が出て。

滝沢:居酒屋だと、今は(お通しとして)枝豆なんかを出されることが多いけれども、その前は小鉢かなんかを出しているのがよくあったんです。酢の物だとか、そういうのは、割りかし、うわーっと(大量に)作るから、その日に残っちゃったものは、もう捨てる。みたいな感じでしたね。

ーなるほどね。根深いですね。

滝沢:そうですね。まあ、何でもかんでもそうっすね。多いんでしょうね。コース料理。この間、あるベテランの大物芸人とお話ししていたら、「なんかコース料理とか、もう多いねん。もうそんなちょっと食べて、俺なんかおじいちゃんだから、そんなええやん」と言って。「もう、コースで頼みなはるなやって、やっぱり思ってまうわ」と言って。

ー確かにそうそう、そうですよね。

滝沢:食べ切れる量を頼むということは、どうしたらいいですかね。(値段を)高くするしかないということになってきますよね。

ーそうなりますよね。

滝沢:そうなってくる。でも、そうなると居酒屋が流行らないとかと、なんかいろいろ出てくるでしょうからね。根っこが深いといったら深いですよね。

ー根っこが深いです。でも、さっき話した京都の佰食屋(ひゃくしょくや)は、億の年商を稼いでいて。

滝沢:そうか、そうか。

ーうん。必ずしも(飲食店がロスを減らすと流行らない訳ではない)。

滝沢:そうか、必ずしもか。やり方、作戦。

佰食屋なんて、10時3時(10時から15時まで)みたいな感じなんですよ。まあ10時3時まではいかない。(午後)3時には大体売り切れちゃうから、店を閉めるんですよ。それで、従業員は賄い(まかない)を食べて、翌日の仕込みをして、(午後)6時までにはみんな帰る、という感じ。

滝沢:ねえ。すごいですよね。

ー(飲食店みんな)そんなふうになればいいですね。

滝沢:子育てをしている主婦の方とかが、働いているとかでしたっけ?

ーそうそう。

佰食屋は牛肉を塊で仕入れるので歩留まりがよく、捨てる部分がほとんどない。自分の店でミンチを作って作るハンバーグは大人気(佰食屋提供)
佰食屋は牛肉を塊で仕入れるので歩留まりがよく、捨てる部分がほとんどない。自分の店でミンチを作って作るハンバーグは大人気(佰食屋提供)

ゴミを大々的に減らすには食べ物がキモ

ー日本は海外と比べて、ごみが多いというふうに(ご著書で)おっしゃっていましたけれども、その中の燃やしているのの、結構な量、結構な割合が、食べ物なんですよね。

滝沢:そうですね。

ーだから、ゴミを大々的に減らそうとすると、やっぱり食べ物が肝(キモ)かな、とは思うんですけれども。

滝沢:多分そうですよね。それこそ、手付かずのものとかが、結構(捨てられている)。メロンの話(丸ごと3個ゴミとして捨てられていた)もそうです。レトルトカレーも、そのまま誰も手を付けないで捨てているわけですから。

ーそうですね。

滝沢:誰かにあげりゃいい、という単純な話なんですけれども。でも、そんなにコミュニケーションを取っていないと、いきなりあげるのは難しいのかな?

ー海外だと、消費者同士でアプリを使ってて。たとえばご飯1合余ってて、アプリで募集をかける。それを欲しい人が、近くでGPSで(検索して)見つけてつながる、というのもあるし。日本だと、飲食店が、残ったものを安くして(アプリを通して)売る、という仕組みは出てきているんですけれども。

滝沢:なるほどね。そういうふうに普及していけばという感じなのかな。

旅館の朝食でお櫃(ひつ)に余ったご飯(筆者撮影)
旅館の朝食でお櫃(ひつ)に余ったご飯(筆者撮影)

ものを買うとき思いを込めて「ああ、買った」となれば、そう簡単に捨てない

滝沢:僕の本も共通しているのは、安いものを買ってそのまま捨てればいいというのをどこかで止めなきゃいけないんだろうなとは思いますね。

ーそうですよね。

滝沢:食品に関しても、そうなんだろうなとは思いますね。

ーそうですね。

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滝沢:安い居酒屋にせよ、安く大売り出しに一斉になったら買って、食べ切れなかったら捨てる、ということが、もうイコールなのかな。ものに関してもそうですけれども。

ーそうでしょうね。

滝沢:大事に買うということ。ものを買うにしても、思いを込めて「ああ、買った」となれば、そう簡単に捨てないんで。

滝沢:食べ物に関しても、そういうことなんだろうなと思いますね。

2つのキャリアを持ち現場で得た情報をわかりやすく伝えていく

ーインタビュー記事で拝見したんですけれども、(お笑い芸人として)目指すところが「売れること」と話していらっしゃったと思うんですが、どのぐらいが(芸人として)「売れる」というのでしょうか?

滝沢:バイトをしない(で済む)ということが1段階目じゃないですかね。で、次は、営業じゃなくてテレビだけで食える、となったら、売れていなかったらできないことなんで。テレビ出演で売れるとなったら、もう「売れている」でしょうね。売れているライン。

ーこの(お笑い芸人とゴミ清掃員の)2つの役割、というのも、すごい、いいな。そういうキャリアというのか。私も取材してもらったことがあって、確か「複線型のすすめ」といって、複数の複という字に、線。単線(キャリア)だと、昔の終身雇用みたいな、入ったらもうがーっと(一つの組織だけで働く)。

滝沢:そのままという。

ーそう。今の時代というのは、2つの仕事を持って同時並行みたいな、そういうインタビュー、シリーズがあって、それで取材をしてもらったことがあって。そういうの(働き方)は、結構、どちら(の仕事)にもいい作用があるのかな、と思うんですよ。

滝沢:そう。そうですね。僕なんかは、そうだと思います、はい。

ーだから、そういうキャリアというか、これからの将来像として、仕事について最初から思っていたのが、「伝える」というのと、「伝わる」というのとは違うな、と思って。

滝沢:「伝える」と「伝わる」。

ー伝えるというのは、一方的に「言っといたよ」みたいな感じ。「言いましたよね?」みたいな感じなんだけれども、言った相手は「いや、聞いていません」みたいな。そうじゃなくて、ちゃんと相手に届けば、それが「伝わった」ということ。廃棄物の世界でも、みんなが超アカデミックになっちゃうと、(一般の人に)関心が届かないんですよね。

滝沢:そうですね。

ーだから、それが伝わらないというか、(ゴミは)そういう分野かなと思うんで。今回のご本は、それを分かりやすく、(読み手に)届いたわけじゃないですか。それがすごいな、と思って。この業界で。

滝沢:そうですね。なんかまず、やっぱり面白おかしくしゃべろうとしないと、興味を持ってくれないというかね。

ーそうですね。

滝沢:「ゴミの世界、こうなっていますよ」と言っても、なかなか見向きもされないから。

ーそうなんですよね。

滝沢:ちょっとクスッと笑うところから始めるのが、一番いいのかなと思いますよね。その橋渡しみたいな感じで、この本を使ってやっていけたら、それこそ講演だったらいいのかな、なんて思ったりしますがね。

ーゴミを収集している人の中でも、そういう、ネタ、情報を集める人と、そうじゃない人もいるわけじゃないですか。

滝沢:そうですね。

ー私もフードバンクに(広報として)いたときに思ったのは、フードバンクはもちろんいい活動なんだけれども、現場にいるからこそ分かる情報があるんですよ。こんな、何百ケースとか(余剰食品が大量に)来るんです。備蓄とかも、もう(量が)半端ないんですよ。ビル(の備蓄)だったら、すごいじゃないですか。何千人が勤めているわけだから。(備蓄)入れ替えのときに、こんなに出るんだ、みたいな、賞味期限の切れる1年前ぐらいかな。もう本当に(日本の食品ロスの)縮図を見るわけです。スーパーからも(余剰食品が)来れば、メーカーからも来る。もちろん、それ(大量の食品)が来る、ということは、困っている人に届けられるからいいんだけれども、これが延々と続いていたら、事態は改善しないなと思って。

滝沢:そうか。

ーそういう現場にいるからこそ、「今の日本はこうなんだよ!」と言って、講演にしても、本にしても、そういうの(を伝えること)が必要かなと。それを書いていくという。使いながら(リユース)減らしていく(リデュース)という。

滝沢:それは面白いですね。確かに延々と終わらないという、その根源自体を何とかしないと、ということになっちゃいますもんね。

ーそうなんですよね。

滝沢:その思想というか。

ー環境の世界で3R(スリーアール)と言っていて。リデュース、リユース、リサイクル。本の最後にも書いていらっしゃったと思うんですけれども、買い過ぎない、売り過ぎない、つくり過ぎないのがリデュースです、(ゴミを)出さない。で、2番目がリユース(再利用)で、フードバンクとか、集めて寄付する、という行為。最後にリサイクルです。食べ残しはリサイクル。マスメディアは、この下の2つ(リユースとリサイクル)が好きなんです。私も今日、この後、テレビの収録行くんですけれども。リサイクルというと、映像が衝撃的だから、テレビの方は好きなんですよ。

滝沢:なるほど。

ー「おいしそうなふわふわのパンが、ガーッ(とリサイクル)」みたいな、「全部、豚の餌(に)」と言って。ショッキングだから、そういう映像も(テレビ界では)好まれる。リユースだと、日本は困窮者の方がすごく多いので、「助かるんですよ」みたいなことを、お涙頂戴じゃないけれども(言って)。もちろん(余ったのを必要なところに渡して)ウィンウィンですよね。それはそれでいいんだけれども、でも、使い切るには余り過ぎてるんですよ。リユースするには使い切れないぐらいなんで。数字でいうと、今は年間646万トンの食品ロスが出ていて。

滝沢:640。

ー646万トン。フードバンクが全国に80近くあるんですけれども、全国のフードバンクが使っている量を合わせても、5,000トンとか4,000トンなんですよ。ということは、余っている全体のうち、0.01%かそのくらいのレベルなんですよ。だから意味がない、というのではなく、本当に、この根元(ねもと)のところを(なんとかしないと)。

滝沢:そうか。

ーそうそう。

滝沢:(食品ロスを)ちょっと調べて、六百二十何万トン、六百三十何万トンでしたから、また増えている。

ーそうなんです、増えたんで。今は、毎年、農水省や環境省が発表していて、4月ぐらいに発表するんですけれども、2018年の4月17日に発表したのが646万トンで。

滝沢:増えているんだ。

ーはい。なので、(使い切るには)余り過ぎなんですよね。

滝沢:確かに。根源的なことは・・・だからなかなか普及しにくいというか、そうか。

時に何百ケースという単位で届く食品(筆者撮影)
時に何百ケースという単位で届く食品(筆者撮影)

手を変え品を変え、いろんな人たちに伝えていく

滝沢:これ(食品ロス問題)は、なんか言っていっていたら、誰かに潰されるとかはあるんですかね。

ーTwitterでも、匿名の人で来るのはありますよね。誰かから聞くとか。西日本豪雨でトラックが高速を通れないから、すごく遅れちゃったんです。で、弁当とかおにぎりとか、消費期限の切れる2時間も手前に販売期限があって。それが来ると、もう廃棄なんですよ。レジを通んないんです。ああいう(非常事態の)ときは、急いでも(トラックは)通れないから、販売期限の切れる1時間前に着いて。もう全部捨てた、というのを(直接、店舗から)聞いていて。それを記事に書いたら、すごく文句を言っていたみたいで。「一生懸命運んだのに」みたいな。

滝沢:そうか。

ーそう。(でも、被災者に届かなくて捨ててたら目的は果たせていない)。

滝沢:何か絶対いいことを言ってんだろうなと思っても、それに反対する人は出てきますからね。そんなんがあるんだ、と思って。

ー多分(食品ロスは)ゼロにはできないから、今は本当に使い過ぎているわけで、これを適量にするという。

滝沢:そう、そういうことなんですよね。それを言いたいだけなんですけれどもね。

ー別にその人を・・・

滝沢:「根絶してやろう」ということではないですからね。

ーうん。その人の仕事を奪うわけでもないし。

滝沢:そうそう。ねえ。

ーこの(反発勢)力というのは、なかなか深いんですよね。

滝沢:深いですね。

ー深いし、ゴミというと、みんなは「関係ない」みたいな。

滝沢:関係ない、そうですね。

ーと思っちゃうからこそ、こういう(滝沢さんの)Twitterの投稿もそうだし、分かりやすい本も大事だなと思います。

滝沢:まだ勉強中の身ですけれども、これがこうというのをきちんと理論立てて、順序立てて考えたら、子どもたちに教えていって、子どものときから教育していくのが一番いいんじゃないかと思いますね。

ーそうですね。小学校4年生で、確かゴミのことを習うんですよね。中学校の家庭科でも習うし。京都市は、市内の小学校4年生に、食品ロスの(ことを書いた)下敷きを配っているんです。

滝沢:面白いですね。そうか、そうか。小学生もそうですけれども、幼稚園だか保育園の頃から・・・。そう考えると、本だけじゃなくて、僕は漫画もやったりとか。

ー絵本も描いてらっしゃいましたよね?

滝沢:絵本とかも。手を変えていろいろな人に届けるというのが、まずは第一かな、なんて思っているんですけれども。

長野県の風景(筆者撮影)
長野県の風景(筆者撮影)

ーそうなんですよね。長野県松本市が、保育園で(食品ロスを減らすための食育を)やっているんです。

滝沢:そうなんですね。

ーうんうん。ゴミ箱、多分、作り物のあめとかお菓子だと思うんですけれども、捨てさせて、そこから何かを学んでいるみたいなんですけれども。

滝沢:あれ、長野県は、そんなにゴミが出ないんじゃなかったかな、違った? 確かそうですよね。

ーそうなんです。全国で3年連続、(ゴミの少なさで)全国一

滝沢:そうだ、そうだ。そうそう。

ー長野県はいろいろな面ですごいというか。

滝沢:そうですね。

第一回となる全国食品ロス削減大会は長野県松本市で開催された(筆者撮影)
第一回となる全国食品ロス削減大会は長野県松本市で開催された(筆者撮影)

ヨーロッパでは18ヶ月以上賞味期間があるものの期限表示は「年」表示だけでOK

ー海外と比べると、イギリスとかヨーロッパでは、18カ月以上(1年半以上)賞味期間があるものは、賞味期限が「年」でいいというのを知って、結構「え、年だけなんだ」みたいな。

滝沢:年だけなんだ。

ーうん。日本は、缶詰は(賞味期間)3年間なんだけれども、日にちまで書いてあるものがほとんどです。

滝沢:ありますね。そうか。そう考えると、まだまだ、でもやることはありますね。

ーありますね。はい。共にまた何かを。

滝沢:そうですね。導かれるように、なんかいろいろ教えていただいて。

ーいえいえ、ありがとうございます。

滝沢:もちろん、こちらでも協力できることがあったらしたいですし。

ーはい、ぜひよろしくお願いします。

滝沢:ぜひ、ありがとうございます。

ーありがとうございました。

取材を終えて

2018年9月下旬にラジオ出演されていた滝沢さんの話を初めて聞いた時、ゴミから社会を推察する話がとても面白かった。その直後にご著書を買い、一気に読んだ。年間2兆円もの税金を費やしているゴミ問題。どんなに重要な課題でも、人々の意識が変わり、行動が変わらなければ、課題解決しない。その意味で、滝沢秀一さんのTwitterや著書は、これまでゴミなど関心を持たなかった人たちにまで届いていて、「伝える」ではなく、「伝わる」を実現している。お笑い芸人でありゴミ清掃員でもある、という2つのキャリアの相互作用は、滝沢さんの価値をより一層高めている。と同時に、社会に対しても、課題解決に向けて、良い影響を及ぼしている。自分もこうありたいと思った。今後、滝沢さんとの協働の機会を創り、ゴミや食品ロスといった社会的課題の解決に少しでも寄与していければと強く思った。

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取材日:2018年12月25日

注:環境省の発表では「ごみ」と平仮名表記になっており、マシンガンズ滝沢秀一さんの著書では「ゴミ」とカタカナ表記になっている。どちらの表記も使われるが、ここではカタカナに統一させて頂いた。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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