日本の労働生産性最下位は今回だけじゃない 1970年から50年近くG7(先進7カ国)でずーっと最下位

(写真:アフロ)

2018年12月19日、公益財団法人日本生産性本部が「労働生産性の国際比較 2018」を発表した。

日本生産性本部は、OECD データベースなどをもとに、毎年、分析・検証を行い、労働生産性の国際比較を公表している。人口減少が進む日本において、労働生産性の国際的な位置付けを時系列でとらえ、政策立案や施策の展開に役立てるのが目的だ。

全国紙5紙など主要メディア150紙誌の報道は

日本最大級のビジネスデータベースサービスであるG-Search(ジーサーチ)などで調べたところ、今回の日本生産性本部の発表を受け、日本テレビ系列の「news every.」や日本経済新聞読売新聞などが報道している。

だが、1970年からの時系列の順位について言及しているのは、調べた限り、日本経済新聞のみだった。

G7 各国の1時間当たり労働生産性(日本経済新聞社公式サイトより)
G7 各国の1時間当たり労働生産性(日本経済新聞社公式サイトより)

1970年から50年近く、日本はG7で最下位

日本生産性本部のプレスリリースに明記してある通り、日本がG7で最下位なのは、今回に限ったことではない。

主要先進7カ国でみると、データが取得可能な 1970 年以降、最下位の状況が続いている。

出典:2018年12月19日発表 日本生産性本部 プレスリリースより

1970年以降、50年近く、ずーっと最下位なのだ。

主要先進7カ国の時間あたり労働生産性の順位の変遷(2018年12月19日、日本生産性本部発表プレスリリースより)
主要先進7カ国の時間あたり労働生産性の順位の変遷(2018年12月19日、日本生産性本部発表プレスリリースより)

労働生産性を上げるには

では、労働生産性を上げるには、どうしたらいいのだろうか。

労働生産性は、産み出した付加価値額もしくは生産量などの「アウトプット」を、投入した労働者数もしくは労働者×労働時間などの「インプット」で割り、算出する。

労働生産性の算出方法(2018年12月19日発表 日本生産性本部のプレスリリースより)
労働生産性の算出方法(2018年12月19日発表 日本生産性本部のプレスリリースより)

分子であるアウトプットが激増する、という状況は、なかなか難しいだろう。となれば、分母であるインプットを小さくする。

2018年3月12日に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが発表した経済レポート「2030 年までの労働力人口・労働投入量の予測」によれば、労働力人口の減少ペースはなだらかで、就業者数の減少ペースはさらに緩やかだ。

就業者人口の推移(2018年3月12日発表、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの経済レポートより)
就業者人口の推移(2018年3月12日発表、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの経済レポートより)

となれば、一人当たりの労働時間を減らすことが一案だろう。

「売上げ」以外を軽視しているのでは?

「売上げ」だけでなく、製造工程で発生したロスを考慮し、経済効果と環境負荷軽減を両立させるマテリアルフローコスト会計(MFCA)の考え方が注目されつつある。SDGs(持続可能な開発目標)が採択されてからは、なおのことだ。

SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)(国連広報センター公式サイトより)
SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)(国連広報センター公式サイトより)

いくつかの企業では、KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指数)として、「売上げ」以外の項目を軽視している傾向はないだろうか。その売上げを達成するにあたり、そこに投入された労働時間や、社員の満足度、食品の廃棄した量(食品ロス・フードロス)といった環境負荷など、他にも見なくてはならない項目はある。

食品業界には労働時間と食品ロスを減らし経済効果も上げた優れた事例がある

日本経済新聞社の月刊誌「日経WOMAN(ウーマン)」が毎年行なっている顕彰制度「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」は、今年度、京都の飲食店「佰食屋(ひゃくしょくや)」を経営する中村朱美(あけみ)さんを大賞に選んだ。

京都・佰食屋の中村朱美さん(中村朱美さん提供)
京都・佰食屋の中村朱美さん(中村朱美さん提供)

「食品ロスゼロで働き方改革!佰食屋の中村朱美さんが日経WOMANウーマン・オブ・ザ・イヤー2019受賞」で紹介した通り、100食限定、店舗に冷凍庫はなく、食品ロス(フードロス)は、ほぼゼロ。飲食店だが、午後3時には100食売り切り、全従業員が18時までには店を出る。

『「何億円パンを売ろうが大量に捨てるなら何の価値もない」借金店を年商2500万円にした 捨てないパン屋』で紹介した、広島市のブーランジェリー・ドリアンも、売上げをキープしながら働く時間を減少させた好事例だ。

広島市・ブーランジェリー・ドリアンのパン(ブーランジェリー・ドリアン公式サイトより)
広島市・ブーランジェリー・ドリアンのパン(ブーランジェリー・ドリアン公式サイトより)

時間があればあるだけ労働に注ぎ込む強欲さ

全国の講演で常々お話している通り、食品ロス削減は、働き方改革でもある。なにしろ、世界の食料生産量のうち、3分の1にあたる13億トンもの食料を捨てているのだ(FAO:国際連合食糧農業機関による)。最初から作らなければ、働く人はどれだけラクだったか。さまざまな理由で作り過ぎ、売り過ぎ、買い過ぎているために、食品ロス(フードロス)の一部が生じている。

「50年近く主要先進7カ国で労働生産性最下位の日本で障害者も介護者も一人親も働き続けられる京都の飲食店」でも書いたが、ある弁護士は、フランチャイズにおいて、本部の粗利益が大きくなる仕組みについて、本部の「強欲さ」を指摘していた。必要以上に儲けよう、稼ごうとする結果、時間があればあるだけ労働に注ぎ込み、労働者に大きな負担と歪みが生じてしまう。

日本の時間当たり名目労働生産性は過去最高

望みもある。G7ではずっと最下位だが、日本の推移を見てみると、少しずつ上昇している。2018年11月9日に日本生産性本部が発表した「日本の労働生産性の動向 2018」によれば、日本の時間当たり名目労働生産性は、過去最高を記録している。

とはいえ、国内の結果だけを見て満足するのでなく、SDGs(持続可能な開発目標)が採択され、世界レベルで達成すべき目標が設定された今、世界視野で物事を見る姿勢が必要だ。

毎日の満員電車で見せる顔が恥ずかしい

ラッシュアワーの朝の時間帯、満員電車に乗ると、すでに疲れ切った表情で居眠りする人たち。来日する観光客が多い今、日本の代表として見せる顔が、恥ずかしくて仕方がない。

自分も20年近く会社員として通勤していたので、疲弊して車内で眠ってしまったことは何度もあり、気持ちはわかる。でも、客観的に、満員電車の、特に朝の顔を見ると、もう少し、どうにかしたいと感じる。だって、これから働く「朝」なのに、働く前から疲れているのだもの。精気を失っている。

外国へ行くと、電車に乗り、そこの国の人たちの表情を見る。どんなことをしているのか、どんな風に振る舞うのか。

もちろん、「どう見えるのか」の前に、働く人たちが、働くことに幸せを感じられる世の中であって欲しいと願う。

「なんとかジャパン」などと言って、よそいきのカッコいい日本を魅せようとしても、大事なのは、日常がどうあるか、ここで暮らしている人たちが幸せを感じられているかどうか、ではないか。まあ、お偉方は電車など乗らないから知らないのでしょうけど。