「もう会社の忘年会なんてやめてしまえばいい」44%が「参加したくない」組織にとってもリスクになり得る

(ペイレスイメージズ/アフロ)

田辺三菱製薬株式会社が、全国の20~40代の社会人男女500名に、職場の忘年会について調査した。その結果、44.2%が「参加したくない」もしくは「どちらかと言うと参加したくない」と回答した。

田辺三菱製薬株式会社の調査結果「会社の忘年会に参加したいと思いますか」(Value Press!に掲載された内容を引用)
田辺三菱製薬株式会社の調査結果「会社の忘年会に参加したいと思いますか」(Value Press!に掲載された内容を引用)

2018年12月19日(水)のNHK「マイあさラジオ」で、アナウンサーが「この結果を受け、何らかの対応策が必要」とまとめていた。(え?単に忘年会をやめればいいだけじゃない?)と、思わず心の中でツッコミを入れた。

筆者は、どちらかというと、会社の飲み会は好んで参加していた方だ。2011年3月11日の東日本大震災を機に会社を辞めた。当時は「会社の飲み会がいや」どころか、他の部署まで遠征し、よく飲み会に参加していた。「営業部の飲み会、いつもいるよね?」と同僚に言われたくらいだ。飲み会どころか、年に一回の社員旅行も積極的に参加していた。当時の社員旅行は、給料から天引きで積み立てたお金を使い、部署ごとに企画していた。筆者が所属する部門の企画だと、2時間食事して帰るというパターンだったため、他部署の2泊3日の社員旅行にわざわざ遠征して参加していた。一回だけでなく、二回も三回も。しかも、2011年9月に会社を辞めた後にも誘ってもらい、それまで積み立てたお金を使って有志の社員旅行に参加していた。会社を辞めてからも社員旅行に参加する人って・・・。

会社を辞めてから参加した2011年9月の社員旅行で。愛媛県松山市へ行った(筆者撮影)
会社を辞めてから参加した2011年9月の社員旅行で。愛媛県松山市へ行った(筆者撮影)

自分の場合、会社の飲み会がすごくいやだった、ということはない。でも、2011年に独立して、義務的に参加する飲み会がなくなったのは、すがすがしく、いいものだなと感じるようになった。

外食のロスが少ないイタリアでは「いやいや参加する飲み会はない」

日本は「いやいや参加する飲み会が多いのかも」と思った。2018年10月、イタリアに取材してからだ。

イタリアのピエモンテ州の行政の方によれば、イタリアの食品ロス(フードロス)の発生源として、外食に由来するのは7%だという。

イタリア・ピエモンテ州の行政職員によるプレゼンテーション。「Restaurants and Canteenが7%」とある(筆者撮影)
イタリア・ピエモンテ州の行政職員によるプレゼンテーション。「Restaurants and Canteenが7%」とある(筆者撮影)

『日本が国をあげて取り組む忘年会・新年会の3010(さんまるいちまる)運動、イタリア人に話したら「?」』に書いた通り、日本が国をあげて展開している、宴会の食べきり運動「3010(さんまるいちまる)」について、イタリアで紹介したら、あまり趣旨が理解されなかったようだった。

「3010(さんまるいちまる)」は、宴会の、最初の30分間と最後の10分間は席について食事を食べることに専念し、食べ残しをなくそう、といった趣旨だ。日本にいる時には特に何も思わなかったが、イタリアから客観的に見ると、「規則」を決めなければ食べ残してしまう方が不思議なのかもしれない。彼らイタリア人も会社の仲間と飲み食いするとは言っていたが、それは「そうしたいからする」のだ。いやいや、ではなく、行きたい人と、食べたい場所で。好きな人と好きなものを食べていたら、そうそう大量には食べ残さないだろう。11日間のイタリア滞在でも、レストランで大量に食べ残すような場面には出くわさなかった。そもそも日本でよくある団体行動は、イタリアでは少ない。ほとんどの団体行動では、誰かがどこかで我慢を強いられる。

筆者が受賞した食生活ジャーナリスト大賞の授賞式のテーブルには「3010(さんまるいちまる)」の啓発ツール(環境省)が置かれ、食べ残しはほとんど発生せず、主催者が驚いていた(高山千香氏撮影)
筆者が受賞した食生活ジャーナリスト大賞の授賞式のテーブルには「3010(さんまるいちまる)」の啓発ツール(環境省)が置かれ、食べ残しはほとんど発生せず、主催者が驚いていた(高山千香氏撮影)

いやいややっていたのでは変革できない

2007年7月、筆者が登壇した第12回国際女性ビジネス会議。その前の年の、2006年7月15日に開催された第11回 国際女性ビジネス会議では、脳科学者の茂木健一郎氏が特別講演し、「脳科学からみた、人間の無限の可能性」と題して、次のような趣旨を話していた。

脳というのは、基本的に快楽主義者である。いやいややっていたら、変わることができない。よく「(自分は)変わりたいんだけど、変われない」という人がいるが、そういう人は、物事をいやいややっているということ。

マザー・テレサは、身を粉にして働くことに嬉しさを感じていた。いやいややったのではだめ

出典:第11回国際女性ビジネス会議での茂木健一郎氏の特別講演の趣旨(2006年7月15日)

「いやいややる」という姿勢では、いつまで経っても同じ場所に留まり、そこから成長することができない、ということだろう。しかし、「仕方ないけど、いやいややる」という姿勢が、忘年会に限らず、日本の職場には多くないだろうか。

好きなことをやれば疲れを知らない

同じく第11回国際女性ビジネス会議では、当時、一橋大学院国際企業戦略研究科教授だった、石倉洋子氏が、特別講演で「世界級キャリアのつくり方」と題して、次のような趣旨をお話しになった。

世界級キャリアを持っている人は、スポーツの世界でも、芸術やビジネスの世界でも、3つの「P」を持っている。

1、Passion

情熱。これが好きです、と言えるもの。好きなことをやれば、疲れを知らない

2、Pride

品格。「私はこれで勝負しています」というもの。こんな結果は私のプライドが許さない、というような「私」の品質基準。

3、Professional

一流の人は親切。自信を持っていて、どんな相手でも、分け隔てなく接する。

出典:第11回国際女性ビジネス会議で石倉洋子氏がお話しになられた趣旨

石倉氏は、「好きなことをやれば疲れを知らない」と話した。「いやいややる」のとは対極の姿勢だろう。

筆者(一番奥)が社会人大学院をテーマにした分科会で登壇した2007年の第12回国際女性ビジネス会議(国際女性ビジネス会議公式サイトより)
筆者(一番奥)が社会人大学院をテーマにした分科会で登壇した2007年の第12回国際女性ビジネス会議(国際女性ビジネス会議公式サイトより)

やらされ感が疲弊につながる

書籍『MBB:「思い」のマネジメント 知識創造経営の実践フレームワーク』(一條和生・徳岡晃一郎・野中郁次郎、東洋経済新報社)には、

世の中には、仕事を楽しんでいる人と仕事にやられている人がいる。

出典:書籍『MBB:「思い」のマネジメント 知識創造経営の実践フレームワーク』(一條和生・徳岡晃一郎・野中郁次郎、東洋経済新報社)

やらされ感で仕事をこなすようになると、そこに仕事への思いがなくなって疲弊感が増し、そうした個人で構成される組織は責任感を欠いた脆弱な集団になり下がる。

出典:書籍『MBB:「思い」のマネジメント 知識創造経営の実践フレームワーク』(一條和生・徳岡晃一郎・野中郁次郎、東洋経済新報社)

という言葉がある。この書籍には、続編とも言える「実践ハンドブック」があり、どちらも、社員が思いを持つことの大切さを訴えている。

「やらされ感」は、できるだけ無くした方がいいのだ。

終業後の時間帯だと参加できない職員もいる

それでも「いやいや、飲み会の席でこそ、腹を割って話ができるんだよ」という人もいるかもしれない。

多様な人材を活用する「ダイバーシティ」が問われる今、終業後の夜の時間帯には育児や介護などの予定が入っている職員もいるだろう。「飲み会も仕事のうち」と言って強制はできない。

「飲み会の場で上司に対するマナーを学ぶことができる」という人もいるだろう。そんなのは就業時間内にやってほしい。

飲み会や忘年会は「業務」とみなして労災認定の事例も、組織にとってはリスクになり得る

下手に飲み会を増やすことは、企業などの組織にとってもリスクを増やすことになりかねない。飲み会や忘年会は「業務」の一環とみなし、労災認定の事例も出ている。

弁護士の谷原誠氏は、

宴会については建前としては自由参加であっても、実質的には全員参加で断ることができない状況であれば企業に責任が生じる可能性がある、ということは会社の経営陣は知っておいた方がいい

出典:弁護士 谷原誠氏のブログ

と述べている。経営陣が雇用者に訴えられるリスクが生じる、ということだ。

飲み会や忘年会に限らず「いやいややる」姿勢や生き方は、できる限り早く、やめた方がいい。命の持ち時間は今日終わるか明日終わるか、いつまでなのかは誰にもわからない。「いやいや飲み会」をやめることで、食品ロスは、きっと今より少なくなるだろう。組織にとってもそこで働く人にとっても、いい変化をもたらすと信じている。