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飲食系でバイトする学生へ 忘年会はここをチェック!いくら業績が良くてもやめておいた方がいい会社とは?

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:アフロ)

2018年12月17日(月)の朝5時50分ごろ、NHK「マイあさラジオ」で、「娘が、宴会で食事を運ぶアルバイトを初めてして、その体験を話してくれた」という方が投稿していた。大人数の宴会では、大皿など重い食器が多く、運ぶのが大変だったとのこと。

中でも印象に残ったのは「食べ残しや飲み残しがとても多い」ということだったそうだ。「男性の多い席では、お酒は飲むが、食事は食べ残す。本当にもったいない。今、食品ロスが大きな問題となっている」と、投稿が紹介された。アナウンサーからは、「忘年会では食べ残しがないように」とのコメントがあった。

飲食系バイト経験者の95%が「仕事で食べ物を捨てた」

高校生や大学生にとって、アルバイトは、社会で働く初めての体験となることが多いだろう。そんな貴重な機会に、われわれ社会人が見せるのが「大量に食べ残し、飲み残す姿」だとは、なんとも情けない。

『1282人の大学生に聞いた「飲食系のバイトで食べ物を捨てたことがありますか?」』で紹介した通り、飲食系でアルバイトをしている学生はとても多い。リアルタイムアンケートシステム「レスポン」を使った筆者の調査によれば、1282名中、約77%にあたる987名が「飲食系でバイトしたことがある(今もしている)」と回答しており、飲食系バイト経験者は、調査対象全体の約8割にあたる。さらに、バイト経験者のうち、95%が「仕事で食べ物を捨てた」と回答している。

1,282名対象の大学生のうち、飲食系バイト経験者の95%が「仕事で食べ物を捨てた」(レスポンで調査、筆者作成)
1,282名対象の大学生のうち、飲食系バイト経験者の95%が「仕事で食べ物を捨てた」(レスポンで調査、筆者作成)

そこで、飲食系で働く学生たちに、忘年会の増えるこの機会に「社会人のここをチェックして!」というポイントを5つほど挙げてみたい。将来の就職先を選ぶ時にも参考になるだろう。企業や大学など、組織の公式サイトにはカッコいいことしか書いていなくても、飲み会の場では本性が現れる。

忘年会で、必ずしも組織名で予約するとは限らないだろう。背広を着ている男性なら、背広に社章をつけているかもしれない。会話からわかるかもしれない。社名の入った紙袋やカレンダーを持っているかもしれない。これは、飲食の場に限らず、電車内や社用車(会社の名前をつけた車)など、公共の場でも要チェックだ。

1、食べ残し・飲み残し

予約した食事やお酒を大量に食べ残したり飲み残したりしているかどうか。

先日、あるホテルの美容室に行ったところ、近くの席にいた年配の女性が「(ここのホテルの)中華料理店、ビュッフェでほとんど残ってたから(残った食事を)タッパーに入れてもらうよう頼んだら、バシッと断られたのよ・・・あれ、全部捨てるんだって。もったいないわよねー」と、美容師さんと話していた。ああ、このホテルの中華料理店では食べ残したものを持ち帰るのを一切禁じているのだな、とわかった。隣でハッキリ聞きましたよ。まさに「壁に耳あり障子に目あり」。どこで誰が何を聞いてるかわからない。怖いですねぇ。

ホテル業界も、今や、環境配慮に努力をし始めている。

たとえば、「食べ残した外食の持ち帰りは日本に根付くか 海外では一般的「ドギーバック」で寄付策も」(東洋経済オンライン)で紹介した通り、国際ホテルグループでは、エコの推進として、持ち帰ることが可能な食事は持ち帰ることのできるよう、ドギーバッグを準備している。

また、『宴会での「食べ残し=食品ロス」を減らす5つの心得』(ダイヤモンド・オンライン)で紹介したように、長野県・軽井沢のホテル、ブレストンコートでは、披露宴の当日に、参列客に量や嗜好を聞いて食べ残しを減らしたり、1つのテーブルに1人の職員を配置したり、ビュッフェでは食べ物の在庫を見ながら少しずつ出してロスが出ないような取り組みをしたりしている。

そんなホテルもあるのに、一方では、気温が下がった冬のこの時期、ほぼすべて加熱調理してある中華料理ですら持ち帰りを禁じているホテルもある、ということだ。いくら知名度やブランド力はあっても、環境配慮の取り組みは途上だな、と感じた。

忘年会の時間にアルバイトしている高校生や大学生は、そのテーブルで食べ残しや飲み残しをどれほど出しているか、チェックしてほしい。予約した組織名もチェック。その名前をソーシャルメディアでおおっぴらにバラすようなことはしない。あなたが就職先を決める時、参考材料の一つにすればいい。

そもそも、今、働いている店舗や企業が、食べ残しや飲み残しを減らす努力をしているかどうかもチェックしてほしい。

全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会には、全国380自治体が参加している(2018年12月13日現在)。自治体によっては、食品ロスを減らす努力をしている店を認定する仕組みを導入している。

たとえば、京都市食べ残しゼロ推進店舗には900以上の店舗が認定されている。横浜市の食べきり協力店は816店舗が認定されている(2018年12月6日現在)。京都市と横浜市は全国でもトップクラスの多さだ。

ある旅館でおひつに残ったご飯(筆者撮影)
ある旅館でおひつに残ったご飯(筆者撮影)

2、店員に対してぞんざいな言葉遣いをするかどうか

店員に対して、丁寧な言葉遣いをするか、それとも、命令口調でぞんざいな言葉遣いをするか。これは就職先を決める時だけではなく、人生のパートナーを選択する時にも要チェックだ。

3、我を忘れるほど飲む

「酒は飲んでも飲まれるな」。

『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』の著者で医師の津川友介氏は、記事『「お酒は少量なら健康に良い」はウソだった? 「海外一流誌」の最新論文をどう読むか』(東洋経済オンライン)で、飲酒量に比例して疾病リスク(病気にかかるリスク)が上昇することを指摘している。

自宅ならともかく、公共の場で、我を忘れるほど酒を飲むような人は「敬して遠ざける」(敬遠する)のが賢いだろう。

4、セクハラ・パワハラは論外

ハラスメント行為は論外だ。

筆者が参加した飲み会の最後。食べきり啓発ツール「3010(さんまるいちまる)」の三角柱(環境省HPより)をテーブルに置いておくだけで参加者の意識が高まる(筆者撮影)
筆者が参加した飲み会の最後。食べきり啓発ツール「3010(さんまるいちまる)」の三角柱(環境省HPより)をテーブルに置いておくだけで参加者の意識が高まる(筆者撮影)

5、立つ鳥跡を濁さず

宴会が終わってその場を去る時には、後で片付ける人がラクなよう、ある程度の心配りが必要だろう。去った後が「しっちゃかめっちゃか」な状態では、仕事に対する姿勢も推して知るべしだろう。

以上、主なものを5つ挙げてみた。

ふだんを変える。それがいちばん人生を変える。

書籍『毎日読みたい365日の広告コピー』(ライツ社)には、2010年の新聞広告に載った本田技研工業の、次のコピーが掲載されている(コピーライター:岡本欣也氏、荒木俊哉氏)

「ふだんを変える。それがいちばん人生を変える。」

飲み会や忘年会など、気の緩みがちな日常の時こそ、その組織や職員の姿勢が垣間見られる。飲食系でバイトしている高校生や大学生は、今こそチャンスだ。企業説明会や公式サイトなど、よそいきの場では見られない、真の姿が見られる。将来の就職先や人生のパートナーを選ぶ時に備えて、今から、冷静に客観的にチェックしておいてほしい。

参考情報:

「金さえ払えば食事を残すのは客の自由」なのか   宴会が増える年末に考えたい、客が取るべき行動

2018年11月30日環境省発表 外食時の「おいしい食べきり」全国共同キャンペーンの実施について(環境省・農林水産省・消費者庁)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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