「今日食べるあんパンでも奥から取ります」1,542名に聞いた「棚の奥から日付の新しいの取りますか?」

(ペイレスイメージズ/アフロ)

買い物の時、商品棚の奥に手をのばし、賞味期限や消費期限の日付の新しいのを取ったことはないだろうか。講演で聞いてみると、苦笑いする人、隣の人と顔を見合わせて体験を話す人、いろいろいらっしゃる。ある人は「今日食べるあんパンでも必ず奥から日付の新しいのを取ります!」と話していた。取材に来た方だった。

実際、どのくらいの人が奥から取っているのだろうか。その体験について、全国での講演で、リアルタイムアンケートシステム「respon(レスポン)」(株式会社レスポン)を使って1,542名に聞いてみた。(対象:1,542名、2017年9月19日~2018年11月3日に調査)

その結果、88%に当たる1,367名が「はい」と答えた。11%(157名)が「いいえ」、1%(18名)が「わからない(覚えていない)」と答えた。

1,542名に聞いた「商品棚の奥に手をのばして期限表示の新しいのを取ったことがありますか?」(2017年9月19日~2018年11月3日調査、リアルタイムアンケートシステムrespon(レスポン))
1,542名に聞いた「商品棚の奥に手をのばして期限表示の新しいのを取ったことがありますか?」(2017年9月19日~2018年11月3日調査、リアルタイムアンケートシステムrespon(レスポン))

賞味期限って、いつから始まったの?

こういう話をすると、「賞味期限って、いつから始まったんですか?」と質問される。「昔はなかったわよね」と。

その通りで、期限表示は、かつて、存在しなかった。日本では、昭和23年(1948年)に、飲用牛乳など、一部の品目で「製造年月日」表示が義務づけられた。長期保存可能な食品では省略が可能だった。筆者は、勤めていた食品メーカーで、保管されていた昭和30年代のパッケージを見たことがある。現在の表示に比べると、表示が極端に少なかった。長期保存が可能だから、ということもあったが、見事に何も書いていなくて、「こんなんでいいんだ・・・」と思った。

昭和60年(1985年)に、CODEX(コーデックス:食品基準)規格で期限表示(賞味期限)が導入された。その後、平成6年(1994年)8月に、JAS調査会答申で、「消費期限」または「賞味期限(品質保持期限)」を表示することになった。翌年の平成7年(1995年)4月から義務付けられたので、質問の答えとしては「平成7年(1995年)から始まった」となる。

その後、平成15年(2003年)に、「品質保持期限」は「賞味期限」に統一された。現在の期限表示は「賞味期限」と「消費期限」の2種類のみである。

賞味期限と消費期限については、2018年11月9日発売の「栄養と料理」12月号に詳しく特集されている。

コメは精米年月日が表示されている。精米から1ヶ月経つと、スーパーなどの棚から撤去されてしまうことが多い。1合や2合など、少量パックのコメについては精米日とともに賞味期限まで表示されている(筆者撮影)
コメは精米年月日が表示されている。精米から1ヶ月経つと、スーパーなどの棚から撤去されてしまうことが多い。1合や2合など、少量パックのコメについては精米日とともに賞味期限まで表示されている(筆者撮影)

消費期限は劣化の早いもの、賞味期限は日持ちするもの

消費期限は、比較的、品質の劣化が早いものに表示される。たとえば、弁当や、サンドウィッチ、総菜、など。

賞味期限は、品質の劣化が遅いもの、日持ちするものに付けられる。缶詰、レトルト食品、スナック菓子、カップめん、乾麺など、多くの食品がここに該当する。

賞味期限(黄)と消費期限(赤)の違い(賞味期限と消費期限のイメージ:農林水産省HP)
賞味期限(黄)と消費期限(赤)の違い(賞味期限と消費期限のイメージ:農林水産省HP)

3ヶ月以上の賞味期間があれば日付は省略可能

日本では、3ヶ月以上の賞味期間がある食品については、賞味期限の日付表示を省略することができる。

ヨーロッパの食品表示を調べてみると、おおむね同じで、3ヶ月から18ヶ月の賞味期間のものは「年月」表示が可能。18ヶ月を超えると「年」表示も可能となる(個々の食品によって異なる)。

そこで、食品ロス削減や、輸送の効率化の観点から、省略できる日付表示を抜く取り組みが、スーパーなどの小売やメーカーで進んできている。

食品業界の商慣習である「日付後退品問題」(前日納品より一日たりとも賞味期限表示の古いものの納品が許されない)も、日付表示を省略することで、緩和される。

ペットボトル飲料の場合、キャップやボトル本体に賞味期限が印字されている。ただ、聞いてみると、確認して買う人は少ない(筆者撮影)
ペットボトル飲料の場合、キャップやボトル本体に賞味期限が印字されている。ただ、聞いてみると、確認して買う人は少ない(筆者撮影)

「今日食べるあんパンでも奥から取ります」?

「今日食べるあんパンでも奥から取ります」という人がいる、とお話しした。コンビニのオーナーさんに取材した時、「パンは、3種類の鮮度表示は置きません。お客さんが奥から取っていくから」と話していた。コンビニのパンは、当日の期限表示のものは置かれない。翌日、2日後、3日後・・・となる。でも、そのように「3種類の鮮度表示」を同時に並べておくと、必ず、奥から取っていかれて、手前のパンが残ってしまい、捨てることになってしまうのだそうだ。お客さんに直接注意するわけにもいかず、困っていると言う。ここの店では、パンは、必ず2種類の鮮度表示までに留めて棚に置いている。

とはいえ、消費者側の言い分としては「同じ値段なら新しい方から取るよ」ということだろう。

見切り販売を積極的に行うスーパーと違い、コンビニでは、弁当やパンなどを見切り販売する店舗は全国55,000店舗のうち1%しかないという(映画「コンビニの秘密」による。写真は筆者が撮影)
見切り販売を積極的に行うスーパーと違い、コンビニでは、弁当やパンなどを見切り販売する店舗は全国55,000店舗のうち1%しかないという(映画「コンビニの秘密」による。写真は筆者が撮影)

期限に応じて価格が自動的に変わる「ダイナミックプライシング」

そんな状況を打破するかもしれないのが、「ダイナミックプライシング」という仕組みだ。期限に応じて価格が自動的に変わるというもので、日本や海外で実証実験がなされている。これなら、鮮度の新しいものが欲しい人は定価で、近づいたものでも構わない人はそれより安い値段で買うことが可能だ。

ダイナミックプライシングの仕組みが普及すれば消費期限・賞味期限に応じて自動的に価格設定が可能となる(経済産業省「参考情報」2017年4月発表資料より引用)
ダイナミックプライシングの仕組みが普及すれば消費期限・賞味期限に応じて自動的に価格設定が可能となる(経済産業省「参考情報」2017年4月発表資料より引用)

今でも全国のスーパーでは「見切り」といって、定価から値引いて売りきる努力がなされている。だが、店員さんが定期的に売り場を見て廻り、値引きシールを貼り、・・・という作業が生じており、コストや労働力の面から負担になっている。

「ダイナミックプライシング」が普及すれば、全国のスーパーの方々はラクになるし、われわれ消費者にとっても、それぞれの価値観に応じての商品選択がしやすくなるだろう。食品ロス削減にも貢献することが期待される。