「食べきれないほど出すのがおもてなし」ベトナム流の歓待と光盤(食べ残し撲滅)運動で変わりつつある中国

(写真:ロイター/アフロ)

ベトナムではお客が食べきれないほどご飯を出す?

農林水産省ASEAN事業の一環で、ハノイにあるベトナム国立農業大学に来ている。8月1日に、食品ロスの講義と、農産物をロスにしないための食品加工・商品開発のワークショップを6チーム対抗で行なった。

2週間でフードバリューチェーンの最新技術や知識を学ぶことのできるプロジェクト。食品関係を専攻する学生が200名近く参加している。午前の部と午後の部の講義は、階段状の教室で行う。昼食は、別の建屋に移動して食べている。

ベトナム国立農業大学で出される食事の一例(筆者撮影)
ベトナム国立農業大学で出される食事の一例(筆者撮影)

昼食時、講師や教職員は、5・6人ずつのテーブルに分かれて食べる。おかずがどんどん出て来て、ご飯もてんこ盛りで出てくるので、毎回、食べきれない。

食事が終わった後のテーブルの状態(筆者撮影)
食事が終わった後のテーブルの状態(筆者撮影)

今回のプロジェクトで通訳を務めてくれているベトナム人女性に聞いたところ、「お客さんが全部食べてしまうと、またおかわりを持ってこないといけないし、最初から食べきれないくらい出す」とのこと。日本人講師の間で「日本とは考え方が違うよね」という話になった。

中国では「光盤(食べ残し撲滅)運動」がスタート

中国でも「お客が食べきれないほど出すのがおもてなし」で、お客側は「食べ残すのがマナー」と言われる。ただ2013年頃から、宴会の食べ残しが年間5,000万トン以上という尋常じゃない量を憂いて、国も、そして市民の間でも、「光盤(食べ残し撲滅)運動」が始まってきている。

オルタナオンラインの記事を元に筆者作成。写真は筆者撮影
オルタナオンラインの記事を元に筆者作成。写真は筆者撮影

ここ数年は中国に渡航していないが、出張した方の話を聞くと「結構(食事)捨ててたよ」と。

10年来おつきあいのある在日中国人女性に聞いてみると、地方はともかく、北京は、以前に比べてかなり食品ロスが減ってきたという。彼女は2012年12月4日、中国の習近平氏が提案し、接待飲酒を禁止したことが大きいと語っている。習近平氏が提案した、いわゆる「官僚のぜいたく禁止令」は、彼の名前を取って「習八条」と呼ばれている。2016年1月から10月までには、違反した45,000人以上が処分を受けている。

日本の「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」には全国354自治体が参加

日本では、福井県が全国に先駆けておいしいふくい食べきり運動をスタートした。その後、長野県松本市が、宴会の最初の30分間と最後の10分間は席について食事を食べようと呼びかける30・10(さんまるいちまる)運動を始め、全国の自治体が倣い、今では環境省が啓発ツールを作るまでに至った。

福井県に事務局を設置した全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会は、2018年6月6日現在、全国354自治体が賛同し、参加している。

食品衛生や安全性の観念から、持ち帰りのドギーバッグはどうしても100%賛成にはなりづらいが、持ち帰り以前に「食べきろう」という呼びかけは受け入れられやすい。頼み過ぎないよう、適量頼もうという意識づけにもなる。

メイドさんに持ち帰るというインド

中国では、残った料理を包んで持ち帰り、家で雇っている使用人に食べさせるという文化もあるという。出されたら出されただけ食べきろうとするのが日本人だが、逆に、中国では残るのが前提で、それも使い道が決まっているのだ、と。

2015年1月、東京都環境局が主催した、タイとインドの行政職員の研修で、食品ロスの講義をした。質疑応答で、インドの行政職員の方が、残った食事は自宅にいる2人のメイドさんに食べさせると話していた。そうなると、食べきることで、食事がなくなってしまうということになるのかもしれない。もちろん、メイドさんを雇用できる層は限られるだろう。

何をもって「食品ロス」と呼ぶのか、その定義は国によって違う。食文化や考え方が違うので、定義を完全に統一させるのは難しいし、一概に「こうしろ」と強制することもできない。ひとくちに「頭痛」と言ってもその原因が様々なように、「食べ残す」という表面的な事象だけをとらえていては不十分で、その奥には、どのような思想や考え方、食文化があるのかまで理解する必要があるだろう。

SDGs(持続可能な開発目標)では、先進国が主導し、途上国も含めて「誰一人取り残さない」で持続可能な社会を2030年までに達成すると定めている。宴会や接待などの食事の食べ残しの問題を、国をまたいで解決するのは、なかなかハードルが高いようだ。

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