『週刊新潮』さん、中学校で習うレベルの単語、20年以上前のままでいつまで発信し続けるのでしょうか

2018年6月21日発売『週刊新潮』の新聞広告(筆者撮影)

『週刊新潮』が2018年5月24日発売号から「食べてはいけない国産食品」特集記事を連載し、全国紙や電車内などに広告を出している。

その中に、ほぼ毎週、使われている単語があり、気になっていた。もう20年以上前に、新しい表現が提案され、食の専門家ならそのような古い表現は使わないからだ。とはいえ、筆者の専門分野ではないのであまり関わらないようにしてきたが、あまりに毎週続くので、このまま放置してはいけない気がしてきた。

1996年に厚生省が「成人病」から「生活習慣病」へ改称を提唱

その単語とは、「成人病」である。

2018年6月21日発売『週刊新潮』の新聞広告(筆者撮影)
2018年6月21日発売『週刊新潮』の新聞広告(筆者撮影)

ここのところ、毎週のように、広告にその文字が踊っている。雑誌を買わない人でも、新聞や電車内で目にするだろう。

以前は「成人病」と呼ばれていたが、年齢にかかわらず、生活習慣によって発症や予防の可能性が示唆された。たとえ成人であっても、食事や運動、喫煙などの生活習慣に気を配れば予防できるし、逆に若年であっても生活習慣が悪ければ発症する。そこで、1996年、当時の厚生省(現在の厚生労働省)が、「成人病」から「生活習慣病」へと改称することを提案した。

年齢には抗えないが生活習慣なら誰もが変えられる

これは単に用語の問題ではなく、重要な概念だ。世界中、ひとり残らず、年齢を重ねることに抗える人はいない。年齢を経ればなる病気なら、もうどうしようもない。だが、生活習慣なら、誰もが変えられるチャンスがある。

一般社団法人日本生活習慣病予防協会は、

「生活習慣病」という用語は、従来用いられていた「成人病」対策が、二次予防(病気の早期発見・早期治療)に重点を置いていたのに加えて、生活習慣の改善を中心にした一次予防(健康増進・発病予防)に重点を置いた対策を推進するために新たに導入された概念です。

出典:一般社団法人 日本生活習慣病予防協会

としている。

 疾病の発症に関わる要因(一般社団法人 日本生活習慣病予防協会HPより引用)
疾病の発症に関わる要因(一般社団法人 日本生活習慣病予防協会HPより引用)

中学校で「生活習慣病」の概念について習っている

実はこの「生活習慣病」という用語の意味と概念については、中学校の家庭科の教科書で習っている。

開隆堂が発行している『技術・家庭 家庭分野』の64ページには次のように書いてある。

生活習慣病とは、日常的な食習慣や運動不足などが原因となって発症(はっしょう)する高血圧、糖尿病(とうにょうびょう)などの病気のことです。

中学生の時期に身についた食習慣は成人になってからの健康に大きく影響します。たとえば、朝食を食べないと、午前中の活動が十分にできないばかりか、昼食や夕食、間食を食べ過ぎてしまい、生活習慣病になるおそれがあります。

出典:開隆堂『技術・家庭 家庭分野』(平成28年2月5日発行)64ページ
開隆堂『技術・家庭 家庭分野』(筆者撮影)
開隆堂『技術・家庭 家庭分野』(筆者撮影)

東京書籍発行の『新編 新しい技術・家庭 家庭分野』の25ページには次のように書いてある。

生活習慣病は、不適切な食習慣、運動不足、睡眠不足などの生活習慣が発症や進行に関わる病気のことで、生活習慣に気をつけることで予防できると考えられています。日本では、がん、心臓病、脳卒中、糖尿病などが生活習慣病と位置づけられています。

欠食、過食(食べすぎ)、偏食(好き嫌い)、早食いのほか、食事の時間が不規則だったり、夜遅く食べたりすることを繰り返していると、栄養バランスを悪くし、生活習慣病にかかりやすくなります。

出典:東京書籍発行の『新編 新しい技術・家庭 家庭分野』の25ページ
東京書籍発行の『新編 新しい技術・家庭 家庭分野』(筆者撮影)
東京書籍発行の『新編 新しい技術・家庭 家庭分野』(筆者撮影)

つまり、『週刊新潮』は、中学校で習うレベルの単語を、20年以上古い表現のままで使い続けていることになる。

量の概念とメタアナリシスの概念が欠落している「フードファディズム」

食品には、体に益となる部分とリスクが共存している。どちらか一方だけを強調することを「フードファディズム」と呼ぶ。

ジャンクフードについて語る場合、量についても同時に議論すべきだ。年に1回摂る人と、365日連続して摂る人とで、影響は同じだろうか。食のメディアの多くの発信で、量の概念が抜け落ちている。

また、研究分野では、1つの研究結果だけではなく、複数の研究結果を俯瞰して総合的に判断する「メタアナリシス」が常識的だ。

フードファディズムはなぜ食品ロスを生み出すのか

「フードファディズムはなぜ食品ロスを生み出すのか」で述べたように、1つの食品の効能を過大に評価したり、逆に食品のリスクを過剰に恐れたりすることは、食品の需要と供給のバランスを崩し、食品ロスを生み出す。筆者は、今回のようなリスクを煽る記事で、そのような事態が生まれることを懸念している。

「賞味期限」の概念も中学校で習っている

食品ロスを生み出す要因の一つである「賞味期限」も、美味しさの目安に過ぎないことは、中学校の家庭科で習っている。だが、多くの人が過剰に気にして購買・消費行動し、そこで食品ロスが生まれる。

消費期限と賞味期限の概念(農林水産省HPより)
消費期限と賞味期限の概念(農林水産省HPより)

「おっさん」は家庭科を習っていない

先日、「おっさん」を前面に打ち出した広告があった。今でこそ家庭科は男女共修だが、それは平成に入ってからの話なので、ある一定の年齢以上の男性は、家庭科を履修していない。

とはいえ、新たな概念である「生活習慣病」にしても「賞味期限」にしても、健康に生きていく上では知っておくべき重要な内容だ。学ぶ姿勢のある人なら、学校生活を終えた後も、必要なことは学んでいるだろう。

メディアリテラシーを持たなければ食品ロスは増えるばかり

科学ジャーナリストの松永和紀さんは、週刊新潮の一連の記事について、十分に調べていないことをツイッターでこう書いている。

また、松永さんは、2018年6月21日付の記事「中国産、添加物……消費者が週刊誌に踊らされなくなっている?」でも、『週刊新潮』の記事の内容がしっかりしたものではないことを指摘している。

消費生活アドバイザーの瀬古博子さんは、フーコムネットで次のように述べている。

なお、中吊りの「成人病まっしぐら」については、調味料の話なので、前々回と前回のとおりだが、成人病という古い表現には当惑してしまう。現在は生活習慣病というのが一般的だろう。文字通り、生活習慣(偏った食べ方、運動不足、喫煙、飲酒など)が原因となる病気だ。個々の食品、調味料よりも、一人ひとりの使い方・食べ方が問われるのではないか。

出典:FOOCOM.NET 『週刊新潮「国産食品」第4弾はトランス脂肪酸』瀬古博子著

専門家だけでなく、一般の人も、数あるメディアの情報を鵜呑みにするのでなく、その真偽を冷静に判断し、主体的に読み解く「メディアリテラシー」を持たなければ、食品ロスは増えるばかりである。

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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