定価5,250円、賞味期限が5ヶ月残っている食品を家庭ごみで丸ごと捨てたあなたへ

東京都内の家庭ごみ収集現場から出てきた賞味期限・消費期限の手前の食品(筆者撮影)

2012年5月、筆者はセカンドハーベスト・ジャパンの広報として、NHK『特報首都圏』の取材を受けていた。テーマは「もったいないを生かせ 食品ロス 飽食と貧困の矛盾」。30分番組の中の15分間のVTR(録画)を作るため、2週間以上、撮影部隊と同行した。その中で、東京都内のある自治体で、家庭ごみが集まる所へ行った。そこで衝撃的なものを見た(上記画像)。

菓子パンや鉄火巻き、カツ丼、惣菜、ピザ、長ネギ、かぼちゃなど。

その中に、細長い食材があった。その場ですぐ定価を調べたところ、5,250円の高級和菓子だった(当時は消費税5%)。賞味期限は、2012年10月。この時点で、まだ5ヶ月残っていた。

撮影にあたったNHKの人たちだけでなく、この自治体の職員も驚いていた。

あまりに衝撃的で、筆者は、食品ロスの講演を依頼された時には、この写真を使うようになった。食品ロスをテーマにした拙著『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書、3刷、2016年10月上梓)にも掲載した。

『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書、3刷)
『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書、3刷)

何度も使っていたら、ポプラ社の『ごみゼロ大作戦!めざせ!Rの達人(2)リデュース』(監修:浅利美鈴氏、2017年4月出版)の表紙に使わせて欲しいという依頼を頂き、本の表紙にもなった。

ポプラ社の『ごみゼロ大作戦!めざせ!Rの達人(2)リデュース』(監修:浅利美鈴氏、2017年4月出版)
ポプラ社の『ごみゼロ大作戦!めざせ!Rの達人(2)リデュース』(監修:浅利美鈴氏、2017年4月出版)

この本が出版されてまもなく、筆者は埼玉県川口市から講演依頼を受けた。川口市の廃棄物処理や分別について、市内で啓発や指導を行なう「クリーン推進員」など、800名に、食品ロスと廃棄物について学んでもらう内容だ。講演するからには自らも実践しなければと思い、川口市の助成を受けて、家庭の生ごみを乾燥させて減量する「パリパリキューブ」(島産業)という機械を購入した。2017年7月には埼玉県川口市の廃棄物対策新議会の委員となった。

 

家庭用生ごみ減量乾燥機「パリパリキューブ」(筆者撮影)
家庭用生ごみ減量乾燥機「パリパリキューブ」(筆者撮影)

2017年6月から2018年5月まで、家庭から出る生ごみを162回乾燥させた時の、前後の重量は、グラフの結果となった(縦軸に生ごみの重量g、横軸に回数をとった)。

家庭用生ごみ減量乾燥機にかける前(青)と後(赤)の重量(筆者作成)
家庭用生ごみ減量乾燥機にかける前(青)と後(赤)の重量(筆者作成)

乾燥前の生ごみの合計は約86kg。乾燥後の生ごみの合計は約40kg。半分以下になった。

環境省が2018年3月27日付で発表している一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成28年度)についてによれば、日本のごみ処理事業費は19,606億円(1兆9606億円)。ごみのうち、生活系ごみが約70%。この生活系ごみの処理費が仮に70%の13,528億円(1兆3,528億円)とすれば、日本中の生活系ごみが半分になれば、6,764億円も削減できることになる。(もちろん、現実にはこんな単純な計算式は当てはまらないが)。

ごみ処理事業経費の推移(環境省 2018年3月27日発表資料より)
ごみ処理事業経費の推移(環境省 2018年3月27日発表資料より)

定価5,250円、賞味期限が5ヶ月残っている食品を家庭ごみで丸ごと捨てたあなたへ

2012年5月の撮影の時期に、あの食品を捨てた人は、今、どこにいるのだろう。どんな理由で捨てたのかはわからない。

ごみのことを少しずつ学んでいる筆者は、ごみの中に占める食品ロスが場合によっては40%前後あり、水分を含んだ食品は処理しづらいことを知った。捨てられた食品もそうだ。

5月30日は、ごみゼロの日。生きている限り、ごみをゼロにすることは難しい。でも、減らすことはできる。

あの時、高級食品を捨てた人へ、この文章が届くことを願って。

参考資料:

『生ごみは可燃ごみか』福渡和子著(幻冬舎)

『ごみ効率化 有料化とごみ処理経費削減』山谷修作著(丸善)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。世界資源研究所(WRI)とオランダ政府が運営し食品ロス削減を目指すチャンピオン12.3メンバー。著書に『賞味期限のウソ』『食品ロスをなくしたら1か月5000円の得』。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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