なぜ“ぺットボトル入り牛乳”は一般的でないの?

いちごミルク(ペイレスイメージズ/アフロ)

日本ビデオニュース株式会社が運営するニュース専門のインターネット放送局「ビデオニュース・ドットコム」。このビデオニュースの代表でジャーナリストの神保哲生さんと、社会学者の宮台真司さんが司会を務めるニュース対談番組「マル激トーク・オン・ディマンド」は、2018年4月に18年目を迎えた長寿番組だ。2018年5月12日、「食品ロスを減らすためにできること」と題して出演させていただいた。

2時間近くの対談の中で牛乳の話が出たとき、神保さんが「われわれ、牛乳にはこだわりがあるんですよ」という趣旨のことをおっしゃった。お二人とも、低温殺菌牛乳を選んで愛用していらっしゃるらしい。あまりの熱弁ぶりに、収録の翌日、低温殺菌牛乳を探しに行ったくらいだ。

ビデオニュース・ドットコム「マル激トーク・オン・ディマンド」「食品ロスを減らすためにできること」(ビデオニュース・ドットコム公式サイトより引用)
ビデオニュース・ドットコム「マル激トーク・オン・ディマンド」「食品ロスを減らすためにできること」(ビデオニュース・ドットコム公式サイトより引用)

口をつけて直接飲むペットボトルは細菌が増殖していく

筆者が、牛乳と縁が深い食品企業の勤務時代、臨床試験で何度かお世話になっていた株式会社エフシージー総合研究所が解説している記事があった。論文「ビタミン・ミネラルと食物繊維をバランスよく含むシリアルは若年女性の肌状態に好影響を及ぼす」や、論文「Effects of Wheat Bran and Brown Rice Cereals on the Intestinal Environment and Skin Conditions」などの皮膚状態の試験を担当して頂いた研究所だ。

エフシージー総合研究所の実験では、実験対象のペットボトル飲料として、500mlの麦茶(保存料無添加)と、糖分の入ったスポーツ飲料を用いた。それぞれ、コップに移し替えて飲んだ場合と、直接ペットボトルに口をつけて飲んだ場合とで、2時間ごとに細菌数の変化を追跡した。

5歳の女児に2時間おきに合計5回飲んでもらい、2時間ごとの一般細菌数を検査し、さらにそのまま24時間置いた状態でも測定した。

結果が次のグラフである。

エフシージー総合研究所による麦茶の細菌数の経時変化(エフシージー総合研究所HPより)
エフシージー総合研究所による麦茶の細菌数の経時変化(エフシージー総合研究所HPより)
エフシージー総合研究所によるペットボトル飲料の細菌数の変化(エフシージー総合研究所HPより)
エフシージー総合研究所によるペットボトル飲料の細菌数の変化(エフシージー総合研究所HPより)

折れ線グラフは、直接口をつけて飲んだ場合に細菌数が急激に増加していることを示している。

さらに、2つのグラフの、それぞれ縦軸の値を比べてみると、保存料無添加の麦茶の方が数値が格段に大きいことがわかる。

株式会社エフシージー総合研究所は、この実験結果より、「ペットボトル飲料は4~5時間で飲み切ること」を勧めている。細菌の多くは気温が30℃くらいの夏季に活発に増殖し、猛暑日にはペットボトル飲料に含まれる細菌の増殖が激しくなることが予想されるからだ。

牛乳は賞味期限の前でも開封したら早めに飲み切ろう(筆者撮影)
牛乳は賞味期限の前でも開封したら早めに飲み切ろう(筆者撮影)

なぜ“ペットボトル牛乳”は一般的ではないの?

この実験結果を見れば、なぜ牛乳が入っている容器の多くがペットボトルではなく、紙パックかガラス瓶であるのか察せられるだろう。牛乳は特に細菌によって傷みやすい。直接口をつけて飲めば、結果は推して知るべしだ。

ペットボトル飲料は、真夏でも常温下で持ち歩かれることも多い。そのような環境にも「ペットボトル入り牛乳」は不向きだろう。

2017年に、タカナシ乳業がペットボトル入り牛乳を発売したことを教えて頂いた。容量が200mlということだ。ペットボトル飲料のうち、多くの人が購入する500mlのものよりも半分以下のサイズで、これは一回で飲み切ることを想定していると思われる。ストローをさして飲むこともでき、ストローを使って飲みきれば、中に細菌が繁殖することはない。

夏場にスーパーやコンビニで牛乳を買った時には、寄り道しているとそれだけ気温の高いところに放置されてしまうので、早めに家に持ち帰ってすぐ冷蔵しよう。朝食時に紙パック入りの牛乳をテーブルに出しっぱなしにするのも要注意だ。紙パックを開けるとき、指を入れて開けると、それも細菌による汚染に繋がるので、左右から押さえて注ぎ口を開けるようにしたい。

紙パックの牛乳は注ぎ口に指や爪を触れないように、左右から押さえるようにして開封しよう(筆者撮影)
紙パックの牛乳は注ぎ口に指や爪を触れないように、左右から押さえるようにして開封しよう(筆者撮影)

ペットボトル飲料の賞味期限にも注目

最近の食品業界の動きとして、賞味期限の年月日表示を年月表示に変える、というのがある。それにより、月末まできちんと食品を流通・消費できるようになるし、業界の商慣習による食品ロスが少なくなる。日本の法律では3ヶ月以上、賞味期間がある場合、日付を省略してよい。ペットボトル飲料は日付省略の対象品だ。どの企業のペットボトル飲料が年月表示になっているか、つまり、どの企業が食品ロス削減に熱心か、コンビニやスーパーでペットボトル飲料を見る時には、キャップ部分や本体に表示された賞味期限表示にも着目してみよう。

ペットボトル飲料の賞味期限はキャップ部分に表示されることが多い(筆者撮影)
ペットボトル飲料の賞味期限はキャップ部分に表示されることが多い(筆者撮影)

500mlサイズなどのペットボトル飲料は4~5時間で飲み切ろう

上記の実験結果からわかるように、直接、口をつけて飲んだペットボトルは、時間の経過とともに細菌数が増殖していく。朝、オフィスへ行く時にコンビニなどで500mlサイズのペットボトル飲料を買って持って行き、一日中飲む場合もあるかもしれない。オフィスにマグカップやグラスなど置ける環境であれば、移して飲むのが理想的だろう。いくら冷房が効いているオフィスでも、直接、口をつけたペットボトルは、長時間、置きっぱなしにしないようにしたい。

参考資料

株式会社エフシージー総合研究所 ペットボトル飲料は4~5時間を目安に飲みきる! -コップに移して飲むのが安全です-

書籍『冷蔵庫の中の「まだ食べられる?」を完全解決!賞味期限がわかる本』(監修:徳江千代子、宝島社)

追記:記事を配信した後、タカナシ乳業が2017年に発売したペットボトル入り牛乳について読者の方から教えて頂いた。感謝申し上げます。そのため文章中にその旨を追記し、タイトルを「なぜ”ペットボトル入り牛乳”は一般的ではないの」に変えさせて頂いた(2018年5月18日8:44am)。