食品ロスだけではない、母の日の「花ロス」 子ども食堂へ寄付する事例も

(ペイレスイメージズ/アフロ)

2018年2月は恵方巻の食品ロスが話題になった。恵方巻のように、その日にしか販売できない食品は、ロスになりやすい。もちろん、余った物は値引きして売るものの、値引きしても、全てが売り切れるとは限らない。どうしても売り切れない場合は、廃棄せざるを得ない。

食品ロスをテーマにして活動していると、このような状況は、食品だけではなく、他の業界にもあることがわかる。たとえば、薬、書籍、洋服、など。薬のパッケージには「使用期限」が表記されている。それを過ぎれば廃棄されると聞いた。書籍や雑誌は、書店の棚に並べられるものの、販売されて在庫が回転していかないものについては出版社に返品される。洋服は、食品と違って賞味期限はないものの、流行り廃りがあるので、ファストファッションなどは早くに処分されやすい。

食品に似たものが他にもあった。花である。花の業界の方から、「花も売れなければ捨てられる」という話は聞いていた。

母の日(2018年5月13日)の翌日14日、花屋さん数軒とスーパーの花売り場を見て廻ると、カーネーションがたくさん売れ残っていた。ある花屋では30%引きになっていたが、それでも売れている気配はなかった。

母の日の翌日、スーパーの花売り場にあふれているカーネーション(筆者撮影)
母の日の翌日、スーパーの花売り場にあふれているカーネーション(筆者撮影)

2017年12月18日、岡山県にあるフードバンク岡山の理事である三田善雄(みた・よしお)氏に取材した折にも、「花ロス」に関する話が出た。

フードバンク岡山理事、三田善雄氏(筆者撮影)
フードバンク岡山理事、三田善雄氏(筆者撮影)

子ども食堂へ、花を

三田善雄氏(以下、敬称略)「うちは農業やっているので、近くの子ども食堂の方とお話しして、お野菜を少し頂くようになったんですけど、花でロスが出るそうなんですよ。」

筆者「ああ、この前、ちょうど聞きました。”花ロス”があるって」

三田「ああ、そうでしたか。それで、その花を頂いて、それを食卓に飾って頂くという形に、今、させて頂いているんです」

三田「ちょうどその知り合いの先生と話をしたところ、その方は花の専門家なんですけど、炭水化物(が多い)じゃないですか、緊急(食料)支援の現場って。そうじゃなくって、花や文化とか、そういうのを、少しでも大事にしたいよねっていう。受け取る側の子ども食堂も、(中略)子どもたちに、お花があるとか、そういった部分も感じて欲しいから、ぜひ、くださいって(いうことに)なって、早速もらって頂いて、“部屋に飾ります”とか “食卓に飾ります”とか。その花も、パッと見たところ、ロスだと(いうことは)わからないんです。そういう繋がりも、ちょっとずつできたらいいなあ、と。」

母の日(2018年5月13日)の翌日の14日、花屋の店頭で30%割引になったカーネーション(筆者撮影)
母の日(2018年5月13日)の翌日の14日、花屋の店頭で30%割引になったカーネーション(筆者撮影)

三田さんによれば、食べ物だけでなく、ロスになっていたお花も、子ども食堂の食卓へ活かされることに、花の専門家の方がとても喜んでいらっしゃるとのこと。母の日に限ったことではなく、一年を通して花の寄付が行われている。全国の子ども食堂で、商品として流通できない「お花」を定期的に受け取る事例は珍しいのではないだろうか。

花屋さんに来た”一見(いちげん)さん”の男性客には・・・

この取材の数日前に、筆者が講演に呼ばれた席で、講演後、主催者の方に聞いた話が「花ロス」だった。ある花屋さんでは、鮮度に差がある花のうち、鮮度がよくないものについては、リピート客や顔見知りのお客さんではなく、男性で、かつ、初めて来店したようなお客さんに渡すのだそうだ。男性の場合、家に飾る目的で買うというより、誰かにプレゼントするために花束を買うことが多く、知らない人に渡してしまう場合が多いので、リピート客や顔見知りのお客さんと違って、すぐにしおれてしまうことがわからず、後くされがないのだとか・・・もちろん、これは、n=1(1名)のみに伺った話なので、全ての花屋さんがそうだという話ではない。

母の日(2018年5月13日)の翌日14日、30%割引になったカーネーション(筆者撮影)
母の日(2018年5月13日)の翌日14日、30%割引になったカーネーション(筆者撮影)

その日だけしか売れない生鮮品は、余ればロスになる

食品の場合、2月3日の節分にしか基本的には販売しない恵方巻や、7月の土用の丑の日だけに販売する鰻(うなぎ)など、食べられる期間が限られており、かつ、1日しか売ることのできないものは、余れば値引き、値引きしても余れば捨てるしかない。

中には「必要なところへ寄付する」例もあるだろうが、食品衛生上、全国的に普及しているとは言い難い。

スーパーマーケットの花売り場でもたくさんのカーネーションが母の日の翌日に余っていた(筆者撮影)
スーパーマーケットの花売り場でもたくさんのカーネーションが母の日の翌日に余っていた(筆者撮影)

売る側は適量を売り、買う側は買う日を変えてみては

花屋さんを営んでいる方のSNSなどでの発信を読んでいるうちに、遠方から仕入れた1,500本のカーネーションのうち、300本しか使うことができなかった、という事例が書かれているものがあった。15年間、花屋を営んできて、こんなに無駄にしたのは初めてだ、と。「母の日は、(大量に仕入れて)売上を上げることはもうしない」と書かれていた。

国連サミットで採択された、2030年までに世界で達成する17の目標、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)(国連広報センターHPより)
国連サミットで採択された、2030年までに世界で達成する17の目標、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)(国連広報センターHPより)

2015年9月に国連サミットで採択された、2030年までに世界中で達成すべき17のゴール「SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)」の中には、12番目に「つくる責任 つかう責任」という目標がある。

12番目のSDGs「つくる責任 つかう責任」(国連広報センターHPより)
12番目のSDGs「つくる責任 つかう責任」(国連広報センターHPより)

食品にしても、花にしても、売る側は、余らせるほどの大量の商品を仕入れるのでなく、適量を仕入れてはどうだろうか。その商品が、すぐに傷みやすいものであればなおさらだ。花にも食べ物にも命がある。

買う側は、節分に恵方巻を買う、母の日にカーネーションを買う、それもいいが、買う日をほかの日にずらしてみるのも一案ではないか。

筆者は母の日にカーネーションを贈ったことがない。少なくとも、ここ10年くらいでは、ない。代わりに、誕生日と母の日を合体させて、ちょっと奮発して、一緒に行く泊まりがけの温泉旅行をプレゼントしたり、一緒に竹富島へ旅行したりするなどの贈り物にしている。ここ最近は、自分が掲載された新聞や雑誌、海外渡航のお土産など、毎週、何かしらを郵便で送ってあげたり、病院で人間ドックを受ける時や他の検査を受ける時の費用の負担や付き添いなど、花を贈る代わりのことをしている。もちろん、カーネーションを贈ることを否定する意図はないし、皆がみんな同じことをする必要はない。たった一日に大量生産・大量販売・大量消費が一極集中するのは、どこかに負担やひずみを生み出すのでは、ということを伝えたいのだ。

一回の買い物、一回の食事、一口の食べ物から世界が変わる

林修氏の著書にはこう書いてある。

「母の日」だから電話するのではなく、毎日親孝行しているから、「母の日」には大騒ぎしなくていいような日々を送ることこそ、真の「イベント」だと僕は考えています。

出典:『いつやるか?今でしょ!今すぐできる45の自分改造術!』(林修氏、宝島社)

世界的な霊長類学者であるジェーン・グドールは、「すべての食料品の購入が投票になる」と語っている(『ジェーン・グドールの健やかな食卓』日経BP社より)。

人はつい、自分ひとりが取るささやかな行動は重要でないし、今している食事が違いを生むことなどないと考えがちだ。しかし、一回の食事、一口の食べ物の裏には、必ずそれがどこでどのように育てられ、どんな風にして収穫されたかという複雑ないきさつがある。私たちが買うもの、つまり私たちの投じた票が、この先自分たちが進む道を決めていく。

出典:書籍『ジェーン・グドールの健やかな食卓』(日経BP社)

食べ物にも花にも命がある。命を最後までまっとうさせるためにも、適量作って、適量売って、適量買う・・というサイクルを、事業者も消費者もみんなで作っていきたい。

参考記事:

コンビニ恵方巻「大量廃棄」問題の解決が難しい事情

恵方巻チラシ30枚167個を解析してみた 最も使われている具材ベスト10

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。Champions12.3メンバー。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てられる食べものたち』他。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/令和2年食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞

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