アメリカで毎年5月第二週目に実施されるフードドライブ 子ども食堂でもフードバンクでもない食の支援の形

2018年5月12日に実施されるフードドライブの告知バナー(公式サイトより)

2018年5月12日、アメリカで、第26回目となる"Stamp Out Hunger(スタンプ・アウト・ハンガー)”の取り組みが実施される。これはフードドライブの一環だ。

「フードドライブ」とは、家庭で余っている食品を集め、食べ物を必要とする組織や個人へと繋ぐ活動を指す。

フードドライブとは、家庭で余っている食品を集め、必要とされる組織や人へ届ける活動を指す(画像:iStock)
フードドライブとは、家庭で余っている食品を集め、必要とされる組織や人へ届ける活動を指す(画像:iStock)

「ドライブ」と聞くと、日本人としては車や運転することを思い浮かべると思うが、"drive(ドライブ)”には「寄付募集などの運動」の意味もある。たとえばブックドライブ(本を集める運動)、ペーパードライブ(新聞を集める運動)など。

この"Stamp Out Hunger”は、アメリカの郵便配達員の組合、National Association of Letter Carriers(NALC:全国郵便配達員連合)が始めたものだ。Stamp Outは「撲滅」の意味なので、"Stamp Out Hunger(貧困撲滅)”。切手(Stamp)と掛けている。

2016年のStamp Out Hungerの告知(Stamp Out Hunger公式サイト)
2016年のStamp Out Hungerの告知(Stamp Out Hunger公式サイト)

パイロットプロジェクト(試験的な導入の取り組み)が1991年10月に米国の10都市で開催された。

その後、1993年5月15日(土)、5月の第二土曜日から本格的に始まった。なぜこの時期にしたかというと、クリスマスや感謝祭などでフードバンクへ寄付された食料が、春の終わり頃には不足するだろうと考えてのことだという(NALCのStamp Out Hunger公式サイトより)。

1993年は、実施前には、アメリカの50州それぞれのNALCの支店が1つ以上参加することを目標としていた。結果的には、全国で220以上の支店が参加し、1,100万ポンド(約4,989トン)以上もの食料をたった1日で集めた。

2018年5月12日の実施で第26回目となる。毎年、5月の第二週目の土曜日、米国50州、10,000以上の都市で実施されている。2010年には、それまで集めた食品の総量が、10億ポンド(約45万3500トン)を上回った。

集めた食品は、地元のフードバンクに寄付されるなど、必要とする方へ、様々な形で役立てられる。

郵便配達員が郵便を届けたついでに家庭の余剰食品を回収

この仕組みが面白いのは、郵便配達員が本業のついでに行なうことだ。

5月の第二土曜日の実施前に、各家庭には、食品を入れるための袋と告知のチラシが配られる。

2018年5月、米国の各家庭に配布された、フードドライブの袋と告知チラシ(写真:市川文恵氏提供)
2018年5月、米国の各家庭に配布された、フードドライブの袋と告知チラシ(写真:市川文恵氏提供)

5月第二土曜日の当日、各家庭では、郵便受けの前などに、袋に入れた食品を置いておけば、郵便を届けたついでに、配達員が食品を回収してくれるという仕組みだ。

日本のフードバンクでは、課題として資金難や人員不足が挙げられてきているが、このStamp Out Hungerでは、郵便配達員が、本業のついでに行なうので、新たな人員は要らない。

2014年に配布されたStamp Out Hungerの告知チラシ(写真:市川文恵氏提供)
2014年に配布されたStamp Out Hungerの告知チラシ(写真:市川文恵氏提供)

学校給食がなくなる夏休み前に実施

Stamp Out Hungerの取り組みのメリットは、他にもある。アメリカの学校の夏休みが始まる前、あるいは始まる頃に、子ども達に集まった食品を提供できることだ。

アメリカの夏休みの時期は州や地域によって違うが、5月下旬もしくは6月に始まり、9月頃までの3ヶ月間。学校給食しか食べるものがない子ども達にとっては、食べ物がなくなってしまう。そこで、このStamp Out Hungerが役に立つ。対象者を子どもに限定しているわけではないが、子ども達も対象者だ。

Stamp Out Hungerの公式サイトを見ると、この時期に始めたきっかけは、必ずしも学校給食がなくなる時期だから、というわけではなく、前述の通り、感謝祭やクリスマスの休暇時期にフードバンクに寄付された食べ物がちょうど消費され、不足してくるから、ということのようだ。だが、結果的には、学校給食のストップする時期に子ども達に提供できるというメリットにもなった。

2018年5月12日に実施するアメリカのフードドライブのチラシ(写真:市川文恵氏提供)
2018年5月12日に実施するアメリカのフードドライブのチラシ(写真:市川文恵氏提供)

日本でも夏休み明けに痩せている子どもたちがいる

日本でも、学校給食一食しか食べていない子ども達がいる。夏休みが終わると痩せてしまっている子ども達もいる。このような現実の中、既存の子ども食堂やフードバンクは努力しているが、必ずしも十分な支援を提供できているとは限らない。

夏の時期は、日本でも、食中毒予防など、食品衛生の意識が高まる時期だ。フードドライブを国ぐるみで、大規模にやろうという取り組みは難しいかもしれない。

提言:夏休み前に日持ちのする食品に限定したフードドライブの実施

昨年、イギリスのフードバンクを取り上げた映画を上映する映画館で、フードバンクと連携し、缶詰に限定したフードドライブが実施された。日本の缶詰は賞味期限3年間。極端に直射日光に当てたりしなければ、日持ちする。たとえば、缶詰や、2年以上日持ちする乾麺(そうめん、パスタなど)、1年以上日持ちするレトルト食品などに限定したフードドライブを、夏休みに入る前に実施するのはどうだろうか。安全面を担保することもできる。

郵便局員が本業のついでに全国で余剰食品を回収し、食品ロスを削減し、食べ物を必要としている人たちへ提供する仕組み、アメリカのStamp Out Hunger。まだこの取り組みを知らない周りの知らない人に、ぜひ知らせてあげて欲しい。

参考情報:

Stamp Out Hunger公式サイト

映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』(第69回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作)とフードバンク

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。Champions12.3メンバー。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てられる食べものたち』他。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/令和2年食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞

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