7年目の3.11 防災備蓄食品を「食べずに捨てる」から「おいしく食べる」で食品ロスを減らす取り組み

石巻港 被災地(ペイレスイメージズ/アフロ)

2018年3月11日に、東日本大震災から7年目の3.11を迎える。防災備蓄食品については、行政での大量廃棄の問題が取り沙汰される。自然災害の多い日本、備蓄は避けられない。防災備蓄食品はどうあるべきか。

防災・減災の基本は自助→共助→公助

自然災害の発生に備え、被害を防ぎ(防災)、少しでも少なくする(減災)ための基本として、

「自助(じじょ)」

「共助(きょうじょ)」

「公助(こうじょ)」

の3つが大切だと言われる。そこで、防災備蓄食について、この3つを順番に考えていきたい。

自助(じじょ)

基本は「自助(じじょ)」。自分の命を自分で守る、ということ。これを防災備蓄食品について考えると、自分で食べたり飲んだりする分は、自分自身で備える、ということになる。

東日本大震災では、自治体の倉庫も被災してしまったケースがあった。平成11年以降に進められた市町村合併により、自治体の範囲が広くなり、限られた備蓄に到達できないケースもあった。筆者自身、震災後に定期的に通っていた自治体では、震災後5ヶ月経っているにもかかわらず、公民館で40名程度が暮らしていたところに、自治体からのコメが届かないと聞いた。いざという時に備えて、まず自らの身を自らで守ることを考える必要がある。

無駄をなくす事例 ローリングストック法

東日本大震災以降、注目されている家庭の備蓄法が「ローリングストック法」だ。使ったら、使った分だけ買い足していく・・・という方法である。

日本気象協会の公式サイトに載っているイラストが、ローリングストック法のやり方をイメージしやすい。

パンの缶詰や5年間保存がきく井村屋の「えいようかん」(羊羹)(筆者撮影)
パンの缶詰や5年間保存がきく井村屋の「えいようかん」(羊羹)(筆者撮影)

どんな食べ物がよいのだろうか。内閣府の公式サイトにある防災情報のページには、冷蔵庫や冷凍庫に保管してある食品をはじめ、レトルト食品や缶詰、乾麺、フリーズドライ食品などが挙げられている。

どのくらいの量、用意すればよいのだろうか。東京ガスの公式サイトには、水分に関しては、一人1日3リットルの水を6日分と書いてある。これに、家族の人数分を掛け算する。食料については、1食分を3食、3日分が基本で、これに家族の人数分を掛け算する。コメ、餅、麺、缶詰、レトルト食品、乾物、汁物、菓子類など、お薦めの備蓄食品も詳しく載っている。

ローリングストック法は、日持ちする食品を何年も溜めておくのではなく、日常生活の中で消費しながら循環させていくので、ロスが出にくい。災害時はストレスがかかるが、普段から食べ慣れたものを食べることで、ストレス軽減に役立つ。使っては買い足し、使っては買い足し・・としていくので、何年間も賞味期限があるものを選ぶ必要はない。

共助(きょうじょ)

自助の次が「共助」(きょうじょ)だ。自治会や町内会などの地域コミュニティや、事業者などの単位で助け合うことを指す。では、「共助」の備蓄食品のロスを少なくするためには、どのような方法があるだろうか。

無駄をなくす事例(1)事業者が自治体と連携する

事業者が所在地の自治体と連携することで、重複して備蓄することを避けることができる。たとえば、地元スーパーと自治体が連携することで、スーパーにある食材を災害時に活用することができる。

東日本大震災の翌月、勤務先から支援物資を宮城県石巻市までトラックで運び、積み下ろしする筆者(2011年4月、知人撮影)
東日本大震災の翌月、勤務先から支援物資を宮城県石巻市までトラックで運び、積み下ろしする筆者(2011年4月、知人撮影)

企業だけでなく、お寺と自治体とが連携する事例もある。

日本にはお寺が約78,000ある。全国のコンビニエンスストア約55,000を上回る。お寺の社会福祉活動として「おてらおやつクラブ」がある。お供え物を、仏様のおさがりとして、食べ物を必要とする子ども達へ提供する取り組みだ。お寺はスペースと食べ物があるということで、東日本大震災以降、自然災害発生時の貢献が議論されてきた。西本願寺の公式サイトには、災害発生時の対応フローが、誰でも使えるように公開されている。「寺社Now」には、自治体と協定を結ぶ寺社の事例が紹介されている。

無駄をなくす事例(2)食べ慣れたもの、味の良いものを備蓄する

自治体の場合、コストを抑えることが優先し、多少食べづらいものでも仕方ないという考え方があると、ある自治体職員に伺った。一方、予算の許される事業者やコミュニティであれば、味の良いもの、食べ慣れたものを準備するのも一策だ。

パン・アキモトのパンの缶詰「救缶鳥(キュウカンチョウ)」(パン・アキモト提供)
パン・アキモトのパンの缶詰「救缶鳥(キュウカンチョウ)」(パン・アキモト提供)

イザメシは、普段のご飯に近い備蓄食だ。

パン・アキモトのパンの缶詰は、製造から37ヶ月備蓄することができる。製造から2年経ったパンを先日食べたが、まだふんわりとして柔らかく、美味しかった。保管して2年経ち、再購入する場合、また新たなものを替えて、保管していたものは戦地や被災地に寄贈することができ、無駄にはならない。

企業で寄贈していたクラッカーをフードバンク岡山に寄付(2017年12月、筆者撮影)
企業で寄贈していたクラッカーをフードバンク岡山に寄付(2017年12月、筆者撮影)

無駄をなくす事例(3)職員に配る、フードバンクに寄付する

事業者の多くが実施しているが、防災の日に新しい備蓄と入れ替えて、保管していたものを職員に配る、などを行なっている。

実施している事業所は限られるが、フードバンクへ寄付する組織は東日本大震災以降、増えている。アルファ米や栄養調整食品、パンの缶詰などであれば、フードバンクでも使いやすい。特にコメはフードバンクで需要が高い反面、不足しがちなフードバンクも多いので助かる。

フランスのフードバンクに届いていた缶詰(2017年2月、筆者撮影)
フランスのフードバンクに届いていた缶詰(2017年2月、筆者撮影)

公助(こうじょ)

公助(こうじょ)は、国や地方公共団体など、行政による支援を指す。

自治体の備蓄食品の無駄をなくす事例として、過去にも紹介した事例も含めて紹介する。

備蓄の無駄をなくす事例(1)行政の備蓄をゼロにする

自治体の中には、行政がすべて備蓄するという想定ではなく、各家庭に備蓄を促すことに力を入れているところもある。山形県寒河江市は、賞味期限切れなどによる廃棄費用がかさむこともあり、各家庭に備蓄を促すことに力を入れているという(山形新聞 東京地方版 2017年8月31日付 25面「家庭で食料備蓄」主流に 民間と協定、行政保管ゼロも)。山形新聞の記事によれば、白鷹町は「町の備蓄目標がない」。金山町は「大半の農家で自前の米を持つ」。鶴岡市は、「行政による自前の保管備蓄はゼロ」。上山市は「食料小売店”コストコ”の運営会社と(災害)協定を結んでいる」、三川町は町内で大型店を運営する「イオンリテールと(災害)協定を結んでいる」という。

無駄をなくす事例(2)地元企業と災害協定を締結

地元で事業を展開する企業と災害協定を締結するケースは他にもある。千葉県銚子署と銚子市春日町の廃棄物処理会社「ガラスリソーシング」は、2017年8月29日、災害時の支援協定を結んだ。地震や津波などの自然災害が発生した際、同社が備蓄物資を提供するなどして協力するという(2017年8月30日付読売新聞東京版朝刊29面 災害支援で銚子署と廃棄物処理会社協定)。

神奈川県秦野保健福祉事務所と地域食生活対策推進協議会が平成26年3月に発表している災害に備えた非常備蓄食の考え方には、備蓄食についての考え方、運用の仕方が詳しく書いてある。

東日本大震災では海外からの支援物資も多く届いた。写真は韓国からの支援物資(2011年8月、宮城県石巻市で筆者撮影)
東日本大震災では海外からの支援物資も多く届いた。写真は韓国からの支援物資(2011年8月、宮城県石巻市で筆者撮影)

無駄をなくす事例(3)普段食べる食品を防災備蓄にする

前述の、家庭での自助の取り組み「ローリングストック法」に相当する。

江崎グリコの子会社グリコチャネルクリエイト(大阪市北区)が展開する、オフィスの置き菓子「オフィスグリコ」は、防災備蓄の役割も担うことができるとして注目されている(2017年7月31日付 日刊工業新聞5面 次世代ビジネス・防災 グリコチャネルクリエイトー「置き菓子を防災備蓄に」)。1998年に試験的にスタートしたこの事業は、当初、苦労も多かったそうだが、2011年の東日本大震災ではオフィスグリコが通常通り補充に来たことで、防災備蓄としての可能性が見出されたという。

支援物資の仕分け作業を行なう筆者(2011年4月、知人撮影)
支援物資の仕分け作業を行なう筆者(2011年4月、知人撮影)

無駄をなくす事例(4)希望者に配布する

東京都は、2017年1月5日、プレスリリースで、2017年2月末までの賞味期限のクラッカーを都内の希望する団体などに配布することを発表した。その後も、夏、秋と、定期的に、備蓄食品を希望者に配布してきた。廃棄せずに必要なところで活用するのは良い取り組みだ。

無駄をなくす事例(5)学校給食で活用する

東京都小平市では、備蓄食を給食に活用した。クラッカーをリゾットにして子ども達が食べた(毎日新聞 2017年12月10日付「防災備蓄食 給食に再利用」)。

埼玉県所沢市では、埼玉県が備蓄していたアルファ米を、運動会の前日に「勝つカレー」として給食で提供し、運動会が終わってからは「ウインナー(勝者)ピラフ」などにして給食に使っている(埼玉県所沢市公式サイトより)。

2018年2月1日には、東京都足立区立梅島小学校で、防災備蓄品のアルファ米を使った学校給食が提供された。

まだ食べられる食品が廃棄される「食品ロス」。農林水産省によると、年間約621万トンと推計される。こうした食品ロスを減らそうと、賞味期限が近づいた防災用の備蓄食品を廃棄せずに活用する試みが行われている。

今月1日、足立区立梅島小学校(児童631人)の給食で提供されたのは、水で調理できる「アルファ米」のおかゆを使った「キャロットスープ」。

おかゆのとろみを生かして開発されたメニューで、児童たちからは「まろやかで美味しい。おかわりしたい」と笑みがこぼれた。

2016年春に設立された一般社団法人「食品ロス・リボーンセンター」などが企画。同センターの山田英夫さん(64)によると、乾パンやクラッカー、アルファ米などは5年ほどで賞味期限が切れ、そのほとんどが処分されているのが実情だという。

同センターは、都内の自治体や企業などから賞味期限が近くなった食品を受け取り、学校や福祉施設、地域イベントなどで活用してもらう取り組みを続けている。16年度は約52トン、17年度はこれまでに約130トンの防災備蓄食品を出荷した。

足立区の社会福祉法人「友興会」でも、先月下旬にクラッカーやアルファ米などダンボール約380箱の提供を受けた。今後、施設の食事で出したり、近隣住民へ配ったりする予定だという。

「一般食品は種類や賞味期限がバラバラで回収のタイミングが難しいが、防災用の備蓄食品は種類が限られ、期限も長いので、回収・配布がしやすい。まずは備蓄食品で、循環の仕組みを確立したい」と、山田さんは話している。(写真と文 片岡航希)

出典:読売新聞 2018.2.11 東京朝刊 23頁

無駄をなくす事例(6)防災イベントで活用する

自治体が実施する防災イベントで、備蓄食品を活用する。たとえば2018年1月23日には、東京都主催の学習講座が開催された。

賞味期限が迫った防災備蓄品の活用を通して、まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」の削減について考えてもらう都主催の学習講座が23日、千代田区で開かれた。抽選で選ばれた都民ら約40人が参加し、備蓄食品を使った料理のアイデアなどを学んだ。

都では、かつては賞味期限が近づいた防災備蓄食品を廃棄していたが、昨年度から、支援が必要な人に食料を届けるフードバンクに寄贈したり、都民に配布したりしている。講座ではそうした取り組みのほか、都備蓄の乾パンや乾燥米などを使ったドリアやケーキなどのレシピが紹介された。

また、自宅にどんな非常食を備え、どう活用するかを参加者らが考え、発表するワークショップも行われた。大学生の宮川典子さん(22)は「そのままでは食べにくい非常食も、ひと手間加えるとおいしく食べられた。自分でも作ってみたい」と話していた。

出典:読売新聞 2018.1.24 東京朝刊 25頁
2017年2月26日に都内で開催したパーティでは、備蓄の乾パンと粒うに、焼き海苔を使って香ばしくおいしい「うにカナッペ」ができた(筆者撮影)
2017年2月26日に都内で開催したパーティでは、備蓄の乾パンと粒うに、焼き海苔を使って香ばしくおいしい「うにカナッペ」ができた(筆者撮影)

以上、ロスをなくすための取り組みについて紹介した。

まとめ

日本は自然災害が毎年のように発生する。だからこそ、備蓄は避けられない。「インプットとアウトプット」をセットで考えると、備蓄することが「インプット」。備蓄を使うことが「アウトプット」。幸いにして災害が発生しなければ、それを活用することこそが「アウトプット」であり、捨てることがアウトプットではない。「入れたら出す」仕組みを作らないと、国じゅうで備蓄食品の廃棄が発生する。しかも日本の食品ロスの統計値に備蓄食の廃棄は含まれていない。自助、共助、公助、それぞれの立場で、備蓄食品を活用する仕組みを考え、食品ロスを少しでも少なくしていきたい。

参考記事:

防災食「入れたら出す」仕組みで無駄なく活用

「9・9・9」(スリーナイン)に始めた 9(救)缶鳥プロジェクト

3.11を迎え防災を考える 日本の食品ロスにカウントされない備蓄食品の廃棄、5年で176万食、3億円

あれから6年。3.11のときほど、食べ物を必要なところへ届けることが難しいと感じたことはなかった。