ダニエル・グスタフソン国連食糧農業機関(FAO)事務局次長を迎えて 「食品ロスを考える国際セミナー」

SDGs(持続可能な開発目標)(国連広報センターHPより引用)

2018年2月2日、訪日中のダニエル・グスタフソン国連食糧農業機関(FAO)事務局次長を迎えて、「食品ロスを考える国際セミナー さあ、今日から実践!」が外務省主催により開催された(於:日本プレスセンタービル。協力:FAO、料理ボランティアの会)。本記事は、そのレポートである。

本セミナーの目的は、食品ロスについて、国際的な観点から理解を深めることである。

まず第一部で、外務省・外務大臣政務官の岡本三成(みつなり)氏が開会挨拶を行なった。

世界では8億人を超える人が飢餓に苦しんでいる。日本では食品ロスが年間621万トン発生しており、日本国民全員が、毎日お茶碗1杯分を捨てている計算になる。食品ロスを減らすことは、日本および世界の重要なテーマである。政府のみならず、全国の地方自治体も取り組みを続けている。食品ロス削減の機運を、より一層、国内で高めていきたい。海外では常識のドギーバッグ、日本でも持ち歩くことが常識になって欲しい。

外務大臣政務官の岡本三成(みつなり)氏(筆者撮影)
外務大臣政務官の岡本三成(みつなり)氏(筆者撮影)

次に、日本ホテル株式会社で統括名誉総料理長を務める中村勝宏日本担当FAO親善大使が、これまでの活動報告を行なった。

2017年5月、FAO親善大使に拝命された。2011年の東日本大震災の時、料理人として何かやらなければならないのでは、「最低10年は被災地に付き添って、食を通した活動を続けていこう」と考え、任意で活動を続けてきた。今は帝国ホテルの田中さんがリーダーとなっている。

2017年9月にFAOのイベントがあり、親善大使として挨拶をした。このFAOの報告で最も胸を痛めたのは、飢餓人口が「2030年にゼロ」の目標を掲げているが、今の傾向として、増加傾向に転じてしまっていること。この背景にある一つの大きな問題は難民。国際的な問題で、由々しきこと。何らかの形で、我々も(解決に)関わっていかねばならない。

魚の骨や新鮮なアラは、スープ・ド・ポワソン(筆者注:南仏のビストロの定番スープ)などに利用してきたが、最近は、業者から、すでに(魚の骨やアラを取った)加工済みのものを仕入れる場合も多い。放棄してしまうのはどうなのか。2017年10月、国連ホテルで世界食料デーのイベントが開催され、第二部で「料理ボランティアの会」が、魚のアラを使った「あら~麺」を提供した。グスタフソンさんも、今回の訪日中、あら~麺を美味しく召し上がったとのこと。

2017年11月にはFAOのアジア太平洋シンポジウムが開催され、料理ボランティアの会での活動実績の講演を行い、海老のカレーを振る舞った。料理人の立場として仲間と共に、今後も、食品ロス(削減)に向かって、何かやっていきたいと思う。

中村勝宏日本担当FAO親善大使(筆者撮影)
中村勝宏日本担当FAO親善大使(筆者撮影)

FAOローマ本部から訪日中のダニエル・グスタフソンFAO事務局次長が基調講演を行なった。

今回の訪日の目的は、日本政府と対話をするため。この機会を捉えて、食品ロスのレクチャーに参加できるのを嬉しく思う。世界においても「食品ロス」「食品廃棄」は重要なテーマ。これを、日本の文脈でみるのが興味深い。日本は、食の質の高さや美しさが文化に根付いている。日本のデータや特徴を事前に調べ、いかにこの問題が(日本にとって)複雑で、いかにクリエイティブになりうるかと考えた。

まずは、世界での取り組みについて、ハイライトを紹介したい。FAOが2011年に初めて食品ロスの調査を行なった。予想通り、非常に大きなことがわかった。世界の生産量の3分の1がロスされている。この「ロス」は、途上国と先進国とに分けることができる。途上国の場合、問題の大半は、生産の段階や収穫の後で起こる(ポストハーベスト・ロス)。一方、先進国の場合は、小売以降で発生する。どこで?スーパー、コンビニ、宿泊施設、レストラン、家庭など。途上国と先進国の場合、どちらも、全体の3分の1を損失している。問題の大半はどこで起きている?途上国では食品の貯蔵、輸送の段階。一方、先進国はサプライチェーンに入ってから。

途上国と先進国、どちらのロスも「飢餓」の問題につながるが、先進国の場合、環境と温室効果ガスの問題につながっていく。温室効果ガスの全体の6%が食品ロス・廃棄から発生している。途上国で減らすより、先進国で減らした方が、温室効果ガスへの影響は8倍大きい。とはいえ、先進国における食料廃棄を減らしても、飢餓を解決できるわけではない。

これだけロスがあるということは、世界のフードシステムが「持続可能」ではなくなってきているという、非常に大きな問題である。持続可能なフードシステムには、人、小売、加工工場、料理人、家庭・・・といったもののすべて含まれている。持続可能なフードシステムは、すべての人に、長期的に食の安全保障を提供しなければならない。

では、日本ではどうなのか。ある意味、皆、有罪と言えるが、一つの(ロスの要因)が「賞味期限」、食品の表示だ。消費者は、賞味期限が先であればあるほどいいという、誤った考えを持ちがちだ。賞味期限前だったら食品としてパーフェクトである。にも関わらず、消費者は、できるだけ賞味期限が先のものを買う傾向がある。スーパーでも、3分の1ルール(賞味期限の手前で売らない)というルールが出来上がってしまっている。そのような食べ物を、捨ててしまう、もしくは、消費者に販売をしなくなってしまう。品質が保証されているのに売られなくなってしまう。食品の表示システムの中で、賞味期限まで価値があるのに、ある時点を超えるといきなりゼロになってしまう。

多くの商品、特に弁当などは、期限が短い。12時間を切るものもあれば、数時間というものもある。消費者は新鮮なものを求めているわけだが、食品廃棄の面では、期限が短いのは問題だ。

これに対抗する例として「Eco Buy(エコバイ)」という(東京都とNTTドコモの)取り組みがある。このアプリが素晴らしいのは、通常の消費者は「賞味期限が長いものを買いたい」(合理的な理由がなくても)が、「賞味期限が迫っているものを買うことでポイントがもらえるなら買おう」と思うかもしれない点だ。

人々は、毎日買い物に行く時間がない。女性も最近、仕事を持っているので、毎日買い物に行くことができなくなってきている。スーパーがプロモーションをして、(2個より3個まとめて買った方がお買い得、といったような)必要以上に買わせることが起きている。日本ではまとめ買いがどれくらいあるのかわからないが、英国では盛んだ。たとえば英国では、消費者がスーパーに払うお金のうち、およそ3分の1がプロモーション関連である、とも言われる。必要以上に買ってしまう。

米国では、料理せずに捨ててしまう食材の金額が、年間370ドルにも及んでいる。英国に至っては年間580ドル、食品に費やす金額のうち、9%にも及ぶ。

ロスの測定も、改善をコントロールするのも難しい。SDGs(持続可能な開発目標)の12.3(食品廃棄)について、それぞれの国がこれをどう測定するか、どう進めて行くかがFAOの責務でもある。人々の(ロス削減への)意識を高めること、啓蒙すること(ドギーバッグを啓発するなど)。宮城県石巻市のあら~麺。これは美味しいし、ファッショナブル。みんな気に入ると思う。

日本の、もう一つの例として、ビッグデータの活用(によるロスの削減)が挙げられる。気象データを活用し、豆腐の売れる量を予測し、仕入れをすれば、無駄な食品廃棄が減らせる。

食品ロスの分野では官民の協力が必要。日本ではフードバンクやこども食堂など、イノベーティブな取り組みがある。これは、日本の飢餓や栄養不足を解消する方法である。間違いなく、「食」は、経済にも文化にも必要な分野である。日本は、食の質の高さや美しさを求める国で、健康的な食事をとる国である。日本が、この分野でリーダーになれるはずだ。

SDGsの17の目標のうち、12番目が「つくる責任、つかう責任」(国連広報センターHPより引用)
SDGsの17の目標のうち、12番目が「つくる責任、つかう責任」(国連広報センターHPより引用)

SDGs 12

つくる責任 つかう責任 (12.3)

2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。

Responsible Consumption and Production (12.3)

By 2030, halve per capita global food waste at the retail and consumer levels and reduce food losses along production and supply chains, including post-harvest losses.

出典:国連広報センターHP
FAOローマ本部から訪日中のダニエル・グスタフソンFAO事務局次長(筆者撮影)
FAOローマ本部から訪日中のダニエル・グスタフソンFAO事務局次長(筆者撮影)

第一部と第二部の間にはティーブレイク。料理を通じて被災者支援を行う有志団体「料理ボランティアの会」の協力で開発された、福島産フルーツを使ったフルーツケーキが紹介され、参加者全員に振舞われた。料理ボランティアの会、事務局長の渡辺幸裕氏がケーキの紹介をし、帝国ホテルの望月氏に指導を受けてフルーツケーキを完成させた、福島市の菓匠清泉堂の社長、斎藤隆一さんがお話しした。

福島県産のモモ、リンゴ、イチゴ、ブドウなど11種類のドライフルーツを厳選して作られた、福島市の菓匠堂清泉堂、斎藤隆一さんの、渾身のフルーツケーキ(写真:料理ボランティアの会事務局長、渡辺幸裕様ご提供)
福島県産のモモ、リンゴ、イチゴ、ブドウなど11種類のドライフルーツを厳選して作られた、福島市の菓匠堂清泉堂、斎藤隆一さんの、渾身のフルーツケーキ(写真:料理ボランティアの会事務局長、渡辺幸裕様ご提供)

指導してくださった帝国ホテルの望月さんは、お菓子に対して厳しい目を持っている方。わかりやすく、かつ厳しく、指導していただいた。フルーツケーキの作り方は至ってシンプル。賞味期間は4週間。超えても問題ない。いろんなフルーツを入れてあり、作りたては、いろんな味が喧嘩しあっているので、作ってから、5日から一週間くらい寝かせた方が美味しくなる。お酒が入っているので、お子様にあげるのは難しい。大人向け。

「福島民友」2018.1.31付記事によれば、このケーキは、福島県産のモモ、リンゴ、イチゴ、ブドウなど11種類のドライフルーツを厳選して作られたという。

料理ボランティアの会の渡辺氏(右)と福島市の菓匠清泉堂の社長、斎藤隆一氏(筆者撮影)
料理ボランティアの会の渡辺氏(右)と福島市の菓匠清泉堂の社長、斎藤隆一氏(筆者撮影)

魚のアラを活かした「あら~麺」を作った、麺屋武蔵(めんやむさし)の矢都木二郎社長も登壇した。

「あら~麺、ということで、その時に出た魚のアラを使って作る。その時、その産地で獲れた魚を使うので、毎日、味が違う。それを「良し」とするのが、あら~麺の良さだと思う。

麺屋武蔵(めんやむさし)の矢都木(やとぎ)二郎社長(筆者撮影)
麺屋武蔵(めんやむさし)の矢都木(やとぎ)二郎社長(筆者撮影)

第二部は、パネルディスカッションが行なわれた。

パネリスト(敬称略):

中村勝宏 日本担当FAO親善大使

ンブリ・チャールズ・ボリコ FAO駐日連絡事務所長

小林富雄 ドギーバッグ普及委員会理事長、愛知工業大学経営学部教授

河合亮子 農林水産省食品産業環境対策室長

モデレーター:高橋美佐子 外務省経済局経済安全保障課長

まず、小林富雄先生がプレゼンテーションを行なった。

ビュフェ料理で食べ残しがよく発生する。ホテルでよくあるが、リンゴを一口だけかじって、それだけで捨ててしまう。では、こうした外食でのロスがどれくらい出ているのか。日本の食品ロスの総量621万トンのうち、外食から出ているのが120万トン。うち80万トン(全体の70%)が食べ残しであると推計されている。業態によって発生の仕方が異なるため、削減の対策が難しい。ラーメン店だと麺の食べ残しは少ないが、スープは残る場合が多い。

米国や中国では、食べ残しを持ち帰るのは一般的だが、日本は持ち帰りを禁止するケースが多い。台湾でも持ち帰りは一般的だ。フランスでは持ち帰りはマナー違反だが、それをなんとかしようという「グルメバッグ」という活動が進んでいる。中国では国としても「光盤運動」(食べ残し撲滅運動)が進んでいる。

日本ではどうなのか。居残り給食という話もあるが、衛生面を考えると、食べ残しを持ち帰るのは難しい。とはいえ、いまの時代、どういう感覚を持つべきなのか。全国の自治体でも「食べきろう」という動きが出ている。たとえば兵庫県川西市のポスター「完食は愛だ」には「愛」(Love)という言葉が出てきている。提供する側は、食べきれる量を出すこと。まずは美味しいということ。香港では、大皿料理でも、余ったものは、フードバンクなどへ提供されている。英国では、飲食店の売れ残りを消費者につなぐためのアプリ「Too good to go」が開発されており、日本でもその動きが出てきている。ドギーバッグ普及委員会のインスタグラムでは、食べる前だけでなく、食べきった後の写真も載せている。食べきったということは「美味しかった」ということ。名古屋の宴会では、手羽先なども全部持ち帰り、店の人も喜んでいた。相手のことを考えてコミュニケーションしていくこと。ドギーバッグ普及委員会では自己責任カードも作っている。

ドギーバッグ普及委員会理事長の小林富雄先生(筆者撮影)
ドギーバッグ普及委員会理事長の小林富雄先生(筆者撮影)

次に農林水産省の河合亮子氏がプレゼンテーションを行なった。

なぜ食品ロスを減らさなければならないのか。日本はゴミ処理費用に年間2兆円も使っている。このことを覚えておいて欲しい。年間621万トンの食品ロス。うち、外食から発生している120万トンというのは全体の5分の1に当たる。飲食店より宴会が多く、14%にのぼる。宴会の7皿に1皿が無駄になっている。

フランスの法整備などを例にひき、諸外国の取り組みが賞賛されるが、日本はフランスの法律のずっと以前から取り組んでいる。2000年に食品リサイクル法が成立した。食品事業者は、国に、廃棄量の報告義務がある。ここまで徹底している国は、なかなかない。

今、日本でターゲットになっているのが2020のオリンピック・パラリンピック。この時に、日本は、何を大事にする国なのか、「もったいない」の精神を、世界に広めるチャンスである。これをアピールする必要がある。ぜひ、皆様に応援していただきたい。

全国の自治体では、「全国おいしい食べきり運動」を広めている。自治体は「30・10(さんまるいちまる)運動」など、多くのポスターを作っている。宴会で、幹事が一言、声をかけるとかけないのとで、ロスの量はどれくらい違うのか。京都市が実証実験を行なったところ、声かけだけで、4分の1が減った。声かけならコストもかからない。

農林水産省では関係省庁と連携し、食べ残しを少なくする運動をやっている。まずは、自分が食べられる量だけ頼もう。飲食店は、お客様が食べきれる量だけ出して欲しい。飲食店ではご飯の食べ残しが多い。どんなお客さんに対しても、丼(どんぶり)で出すのでなく、小盛り・中盛り・大盛り、など、サイズを揃えるなどの工夫ができると思う。

最近では、お寿司やさんでシャリだけ残す人もいる。もちろん、これは悪いことだが、一方、店側で、ご飯を減らす、刺身だけを出すなどの取り組みや工夫はなされてこなかった。店側も、どんなものが残されるのか、調べて、(それを減らすために)工夫できるところがあるはず。食べ残し対策は、まだまだ知恵が足りない。

結婚披露宴も、宴会同様、ロスが発生しやすい。長野県・軽井沢のブレストンコートでのロス削減の取り組みがある。披露宴の参列者に、その日に洋食・和食、量などを決めてもらう。

他にも、1つのテーブルに1人のシェフがつく「ワンテーブル・ワンシェフ」の取り組みもある。

ビュフェ。(会の)最後まで台の上が華やかでないと、ケチっぽく見えてしまう。そこで、小皿方式や、ハーフポーションにするなど、工夫ができるのではないか。軽井沢ブレストンコートでは、「食品ロスGメン」を置き、ビュフェで、どういうものがロスになるのか、見張っている人がいる。

農林水産省でもこのような取り組みを応援している。「食品ロス」という言葉がみなさんの心に残るよう、ゆるキャラ「ろすのん」の普及にも努めている。

農林水産省の河合亮子室長(筆者撮影)
農林水産省の河合亮子室長(筆者撮影)

ここから議論に入った(以下、敬称略)。

司会(高橋美佐子):今までは「量」の時代だった。でも、いまは「質」で感動してもらう時代。食事提供側は声かけをし、考え方を変える(必要がある)。海外に住んでいた時、大使公邸でレセプションの時には、余った料理はドギーバッグで持ち帰り、残らなかった。マイバッグやマイボトルの持ち歩きが普及してきているので、ドギーバッグも普及を望みたい。

中村:料理人としては、いかに食材を使いきるかが、やるべき使命。若い頃、先輩によく注意された。残さないのは料理人のあるべき姿。最近の若い料理人は、若干、そういう気持ちが薄くなっているのではないか。個々に行なっている活動を、レストラン、ホテル、作り手、生産者、コンビニ、デパ地下、漁協、ユーザーなど、それぞれのエキスパートが、横の連携を密に取りながら、食品ロスに対する対策や、組織づくりをしてもらいたいし、我々もしていきたい。

ボリコ:1、賞味期限・品質・鮮度など、厳しさを求めることが食料廃棄の原因となっている。2、社会が豊かになり、安易に残すようになっている。一口残すのは、地球を壊すことで、悪影響を及ぼす。消費者教育が必要。捨てることは、「持続可能」ではない。

河合:持ち帰りに関しては、国でも応援している。一番大切なのは食中毒を起こさないこと。何を持ち帰るのか。「小さいとき、お父さんが折詰を持って帰ってくると嬉しかった」という気持ちを忘れないようにしたい。

小林:余ったらメールで一斉配信する、というのは大学でもやっている。プリンターのトナーが余ると、メールで一斉配信され、必要な人が受け取る。なんでもかんでも持ち帰ればいい、というのではない。持ち帰って、だめになっていたら、捨てることも仕方ない。諦めも肝心。農産物や自然への敬意、料理を作った人のことを考える。社内の組織のみんなの関係性を考えるということ。KPI(筆者注:Key Performance Indicators、重要業績指標・目標達成指標)にもなり得る。

司会:カレンダーや手帳なども、余ったら必要なところに渡していたので、食べ物でもできるはず。

(ロス削減のために)日本に何が必要か。パネリストの皆さんからひとことずつ頂きたい。

パネルディスカッションで登壇する中村氏(左)とボリコ氏(右)(筆者撮影)
パネルディスカッションで登壇する中村氏(左)とボリコ氏(右)(筆者撮影)

中村:ドギーバッグの取り組みは素晴らしい。とはいえ、現状の日本の気候や風土を考えると(実現は)難しい。ホテルには、何百人、何千人というお客様がいる。その中で、個人の責任になったとしても、食中毒を(完璧に)避けることはできない。巨大な組織では、基本、ご遠慮、ということになる。(持ち帰りに対する)社会的な機運を高めていかねば。

食べきってもらうための、レストランの施策として、スモール・ポーション(筆者注釈:小さいサイズ)をやっているところも多い。食べ手が利口に食べるということ。これだけ日本が捨てているのだから、前向きに努力しなければ。組織のトップにも認識してもらう。粘り強く。

ボリコ:スーパー閉店前、弁当を買いに行った。値段は半額になっていた。

マクロレベルで考えると、みんなが必要以上に買わないようにすれば、食料価格が下がる。それは、貧しい人が買えることにもつながる。

自分は、2013年から、食べものを何も捨てていない。だから、(みんなも)できるはず。ドギーバッグ、これから使います。雨の時は傘。花粉症の時はマスク。寒い時はコート。食べ残す時はドギーバッグ。

河合:食品ロスの仕事に関わっていると、経営者から「仕方ないよね」という話をよく聞く。閉店間際のお客様にも、ビュフェでも、お客様に不便をかけないように。でも、これを続けていると、ロスは、いつまで経ってもなくならない。自分の住まいの近くのスーパーは、閉店前にいくと、残っていない。でも、安い。経営者の考えにもよるが、「仕方ない」と言って残すのとは違うやり方があるのではないか。そういうところに、知恵や工夫をしていきたい。そして、それに対し、農林水産省もお手伝いしていきたい。

中村:ビュフェ。最初(スタート時)は、見せなくちゃというのでバッと(多く)出す。でも、見てくれを重視して、最後までバンバン出すことはない。貧弱にならないようにはしているが。ホテル協会やオーナーも、(ロス削減に)前向きに取り組まなければならない。

田中(帝国ホテル):素晴らしいセミナーありがとうございます。バイキングもビュフェも、本来、いくらでも出す、というものではない。本来は、食べ放題ではない。日本全体で、今回のセミナーのような、食の啓蒙活動を続けていって欲しい。

小林:愛だと思う。ビュフェでも、小さく盛りつける。そのような提供側の配慮に対し、消費者は、どう答えていくのか?捨てるときにはごめんなさいという気持ちを持つ。お金払ってるから何やってもいい、というのではない。(ロス削減の機運の)うねりは起こせる。これから育てていきたい。

河合氏(左)、小林先生(真ん中)、高橋氏(右)(筆者撮影)
河合氏(左)、小林先生(真ん中)、高橋氏(右)(筆者撮影)

司会:(総括)

「食品ロス」という問題は、単にロスしてるだけではなく、環境などへ、さまざまなネガティブな影響を及ぼしている。これを解決するためには、まずは、横のつながり、ネットワークを広げていく。そして、そのネットワークを強化すること。

二番目には、食中毒や衛生問題。(これとロス削減とは)バランスの問題。解決策を見出していく。

三番目には、利口に食べる、利口に買う。必要以上に買わない。

そして、最後には、食品への愛と感謝を忘れない。食べるということに対し、もう少し、理解や愛を持って向き合うということ。

以上で会は閉会した。

SDGs(国連広報センターHPより引用)
SDGs(国連広報センターHPより引用)

以下が、今回の会で登壇した方々のプロフィールである(配布資料より、敬称略)。

基調講演者:ダニエル・グスタフソン FAO事務局次長

1994年からFAOに勤務。モザンビーク農業省での事業に従事した後、FAOケニア、ソマリア、インド及びブータンの国事務所代表を務める。2007年、ワシントンD.C.にあるFAOの米国・カナダリエゾンオフィス代表。2012年にはFAOの変革プロセスにおける分権化に関連した側面を支援。現職の前は、事務局次長(オペレーション)として、世界各国のFAO事務所やオペレーション関連部署を統括。アメリカ国籍。メリーランド大学にて博士号を取得。2015年には、インドのアチャルヤNGランガ農業大学から名誉博士号を授与された。

パネリスト:

中村勝宏 日本担当FAO親善大使、日本ホテル(株)取締役統括名誉総料理長

鹿児島県阿久根市出身。国内ホテルで修行後、1970年に渡欧。フランス各地の名だたるレストランで活躍。1979年、パリ「ル・ブールドネ」のグランシェフとして日本人初となるミシュラン一つ星を獲得。1984年、帰国しホテルエドモントの統括調理長、1994年、同ホテル常務取締役総料理長。2007年、ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ総料理長に着任し、翌年の洞爺湖サミットで全料理の指揮統括を務める。2013年より現職。2015年、クルーズトレイン「TRAIN SUITE四季島」の料理監修、2016年、フランス共和国より農事功労章の最高位「コマンドゥール」叙勲を受ける。2017年、日本担当FAO親善大使に就任。

ンブリ・チャールズ・ボリコ FAO駐日連絡事務所長

コンゴ民主共和国出身。キサンガニ大学で学士(心理学)及び修士(産業心理学)取得。キンシャサにある商科大学で3年間教鞭を執った後1990年に来日し、名古屋大学大学院国際開発 開発研究科より国際開発論で博士号を取得。1年程名古屋大学での講師の後、1997年より国際連合食糧農業機関(FAO)に勤務。1998年から2003年までFAOニューヨーク連絡事務所、2003年より事務局長官房付としてローマ本部へ異動。2009年からはFAO人事部雇用・配属担当チーフ。2013年8月、FAO駐日連絡事務所の初の外国人所長として着任。FAOでの勤務の傍ら客員教授として人事管理及び行政・開発について母国コンゴ民主共和国・カトリック大学で教鞭も執る。

小林富雄 ドギーバッグ普及委員会理事長、愛知工業大学経営学部教授

2005年名古屋大学大学院生命農学研究科博士後期課程修了。商社、短大勤務等を経て2015年から愛知工業大学経営学部経営学科准教授。2017年度より同教授。食品流通から発生する食品ロスやフードバンク等について専門的に研究しており、「愛知県食の安全・安心推進協議会」副会長や環境省の「食品ロス削減に関する検討会」、東京都の「食品ロス削減パートナーシップ会議」の委員を務めている。また外食の際に食べきれなかった食品の持ち帰り容器「ドギーバッグ」の普及委員会理事長も務めている。

河合亮子 農林水産省環境対策室長

1990年農林水産省入省。本省および九州農政局にて勤務、文部科学省では日本食品標準成分表の作成を担当。2016年から現職。

モデレーター:

高橋美佐子 外務省経済局経済安全保障課長

1993年外務省入省。アラビア語研修。パリ、マレーシア、ジュネーブ等で勤務した。2016年G7食料安全保障作業部会議長。2016年から現職。