世界初「すべて無料」のスーパー、あり?なし? ~2017食品ロス関連10大ニュース~

スーパーマーケットで買い物する男性(写真:アフロ)

2017年は、「食品ロス」という社会的課題が、一歩、一般の人たちに近づいた一年と言える。Yahoo!ニュースでは、1分でわかる食品ロスのモーション動画ができた。「え?この人が食品ロスを語るの?」という異分野の人も、この問題について気軽に語るのを目にするようになった。

私自身、りそな銀行とのコラボレーション企画や、Yahoo!ニュースとパナソニックの企画など、食品業界ではない分野の方とのお仕事が増えた一年だった。

まずは2017年に報道された食品ロス関連ニュースを振り返ってみたい。たくさんあるが、その中から10をピックアップする(順不同)。

1、日本の食品ロス発生量 年間621万トン

2017年4月11日、日本で発生する年間の食品ロス量が621万トンになったと、農林水産省が発表した。この日の発表時刻の10分後、食品ロスの担当者から私宛に連絡があった。「すぐに報せてくれようと思ったんだな」と思い、嬉しかった。

ここ数年間を振り返ると、農林水産省が発表している食品ロスの年間の数字は、次のように推移している。

500~900万トン → 500~800万トン → 642万トン  → 632万トン → 621万トン

2017年4月11日に「621万トン」の数字が発生された後も、食品ロスに関わる人々は、様々な数字を使っていた。食品ロスを活用しているフードバンクは全国に77あるが(流通経済研究所調べ)、団体によって、使っている数字は異なる。今年参加したある学会の食品ロスの部門では、500~800万トンという発表者、642万トンという人、632万トンを使う人など、様々だった。「この分野の専門家として最新の数字を使わないでいいのだろうか?」とも思った。

2、第一回食品ロス削減全国大会開催

2017年10月30日、農林水産省・環境省・消費者庁・全国おいしい食べきりネットワーク共同開催で、長野県松本市で第一回食品ロス削減全国大会が開催された。私も9月に東京・銀座、10月29日に長野県松本市でプレイベントで登壇した。10月31日の自治体職員向けの研修会では、全国から集まっており、その熱気に圧倒された。

2017年10月30日に長野県松本市で開催された第一回食品ロス削減全国大会(筆者撮影)
2017年10月30日に長野県松本市で開催された第一回食品ロス削減全国大会(筆者撮影)

3、食品ロスをテーマにした映画『0円キッチン』上映

食品ロスをテーマにしたエンターテインメントロードムービー、映画『0円キッチン』が、東京・渋谷のアップリンクで2017年1月に上映され、その後も年間を通して全国で自主上映された。オーストリア人のダーヴィド・グロス監督が、5週間かけてヨーロッパ5カ国を廻り、食品ロスだけを使って暮らしていく様子を描いている。私も映画レビューを公式サイトに書いたり、発売3ヶ月で3刷となった拙著『食品ロスはなぜ生まれるのか』を映画館で販売して頂いたり、映画とのコラボレーションが多くなった。2018年には第二弾として日本での撮影が予定されている。

映画『0円キッチン」ポスター(ユナイテッドピープル提供(C)Mischief Films)
映画『0円キッチン」ポスター(ユナイテッドピープル提供(C)Mischief Films)

4、日本気象協会が気象データを活用し、食品の需要予測精度向上によるロス削減

日本気象協会が、気象データを食品事業者に提供することで、事前に予測する需要の精度を向上させ、ロスを減らした。これは2017年より前に、経済産業省も連携しての3カ年プロジェクトとして進められてきた。「なぜ食品業界は日本気象協会に仕事を依頼するのか」 という記事にまとめたところ、日本気象協会にも多くのお問い合わせがあり、Yahoo!ニュース個人では2017年3月度のMVA(Most Valuavle Award)を頂いた。

前日との気温差が大きいほど寄せ豆腐が売れることを示す「寄せ豆腐指数」(日本気象協会・相模屋食料)(資料:日本気象協会提供)
前日との気温差が大きいほど寄せ豆腐が売れることを示す「寄せ豆腐指数」(日本気象協会・相模屋食料)(資料:日本気象協会提供)

5、高機能包装による食品ロス削減

2017年4月11日、農林水産省が「食品ロスの削減につながる容器包装の高機能化事例集」を発表した。例えば、お醤油のボトルなど、押して初めて出てくるように改良することで、酸素に触れづらく、酸化しにくくなることで品質が90日間保てるようになり、ロスが少なくなる。他にも、小分けや個包装にすることで食べきりできるようにする、ヨーグルトやケーキの生クリームなどが包装フィルムにつきにくくすることでロスを減らす、輸送時に壊れるのを防ぐ、フィルムの構造を改良することでポテトサラダやきんぴらごぼうなどのお惣菜の賞味期間が数日から数週間まで延長できるなど、食品の業界において、包装分野がロス削減に貢献できる部分は大きい。

農林水産省は、2017年10月27日にも、食品ロスの削減につながる容器包装の高機能化事例集(第二版)を発表している。

6、年月日表示の年月表示化

賞味期限を年月日で表示していたものが、一部、年月表示に移行している。これは、日付を省略することで、食品企業が、在庫管理や販売管理などを簡略化できるためだ。食品業界には、前の日に納品したものより一日でも賞味期限が古いと納品できない「日付の逆転」問題(日付後退品)がある。そのため、トラックが何度も運搬することになり、人手不足に追いうちをかける。また、余分な二酸化炭素を排出することになり、環境にも悪い。

2013年には、清涼飲料水など、ペットボトルの2リットルサイズの賞味期限表示が、年月日から年月に変わった。その後、少しずつ移行していたが、2017年は、イオンや味の素などの大手企業が、賞味期限一年以上の商品の一部を年月表示化すると発表して話題になった。

日本の法律では、賞味期間が3カ月以上あれば、日付を省略できることになっている。

参考記事:賞味期限論争:「年月」表示化に異を唱える人が知らない業界の裏事情とは?

ペットボトルに表示された賞味期限。左が年月表示、右が年月日表示(筆者撮影)
ペットボトルに表示された賞味期限。左が年月表示、右が年月日表示(筆者撮影)

7、すべて無料のスーパーがオーストラリアに誕生

2017年7月に報道された世界初「すべて無料」のスーパー 値札なし、レジもなしは、多くの人がTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアで話題にしていた。「え?全品無料?」の衝撃。オーストラリアのシドニーで、市民団体「オズハーベスト」が立ち上げた。

これを追うように、東京の多摩市でも、2017年9月3日から、月一回だけの無料スーパーが始まり、12月3日までの毎月一回、開催された。この取り組みは、NPO法人「シェア・マインド」が立ち上げた。生活に困窮している人が対象ではなく、誰でも来ることができる。何度もテレビで報道され、多い時には200人が行列し、「一人3品まで」と限定した食品は、あっという間になくなった。主に個人宅で余っている食品を集めているので、食品に関するコストはかからない。

「無料スーパー」寄付された食品を提供 月1回で開始

8、東京都が賞味期限接近した備蓄食品の希望者への配布をスタート

2017年は、東京都に関する話題の報道が多かった。2017年1月5日、東京都が、2月末に賞味期限の迫った備蓄食品のクラッカーを希望者に配布する、と発表した。

東京都:2017年2月末賞味期限の都の防災備蓄食品を配布

その後も、夏と12月に、備蓄食品の配布を行った。これまでは廃棄されることも多かった備蓄食品が、このように活用されるようになった動きは評価できる。

環境省が制作した30・10(さんまるいちまる)運動啓発ツール(筆者撮影)
環境省が制作した30・10(さんまるいちまる)運動啓発ツール(筆者撮影)

9、宴会食べ残しを防ぐ「30・10(さんまるいちまる)運動」がますます全国化

忘年会や新年会、飲み会など、宴会での食べ残しを防ぐ啓発活動「30・10(さんまるいちまる)運動」が、全国区になった。環境省では啓発ツールが作られた。もともと2006年から、福井県でスタートしていた「食べきり運動」だが、2010年代に入って、長野県松本市で、市長が宴会の食べ残しをなくしたいと、市役所内で始めた「30運動」(宴会の最初の30分間に席について食べる)。これが、「せっかくだから市民にも」ということで、最後の10分間を足して「3010」となった。京都市では、宴会で、幹事が声がけした場合とそうでない場合とで、前者の方が食べ残しが少ないという実証実験の結果も発表された。

京都市など、全国で「食べ残しゼロ」推進店舗の認定制度が始まった(京都市提供)
京都市など、全国で「食べ残しゼロ」推進店舗の認定制度が始まった(京都市提供)

10、2030年を目標にすえたSDGs(エスディージーズ)を取り入れる企業が登場

国連サミットで定めたSDGs(持続可能な開発目標)を、自社の3カ年計画や戦略などに導入する企業が出てきた。国内では、イオンが、「2025年までに食料廃棄物を半減させる」との目標を打ち立てた。

国連が定めた2030年までの持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」(画像:国連広報センターHPより引用)
国連が定めた2030年までの持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」(画像:国連広報センターHPより引用)
17の目標のうち、12番目に「2030年までに世界の食品ロスを半減させる」が含まれている(画像:国連広報センターHPより)
17の目標のうち、12番目に「2030年までに世界の食品ロスを半減させる」が含まれている(画像:国連広報センターHPより)

以上、10にまとめてみた。ここには挙げていないが、個人的には、コンビニでの取材記事に数百万というアクセスが殺到したのは大きなニュースだった。

10大ニュースの中で、最も一般の方の興味を惹いたのが、オーストラリアで始まった、世界初の「すべて無料のスーパー」だろう。生活困窮者に対象者を絞らず、一般に広く「無料」で提供し、値札もレジもないという斬新さが衝撃的だった。

傾向として言えるのは「シェア」の文化が浸透してきたことだろう。食べ物が余っているところから足りないところへシェアする。「シェア」は、食品だけでなく、住宅やオフィス、旅館やホテル、車など、世界の至るところに誕生してきている。

「無料」は、魅力的である一方、送料無料を謳った通信販売では、消費者にとっては良いかもしれないが、運ぶ側にとって負荷がかかる。一部の業界で過剰労働になっているのは、すでに社会問題と言えるだろう。地方の書店が次々と閉店している背景には、「送料無料」で注文できてしまうインターネット書店の影響がある。もし送料が無料ではなく、高ければ、地元の書店で購入していたかもしれない。果たして「無料」スーパーは、好影響をもたらすのか。

2018年は、食品ロスの分野で何が待ち受けているか。スーパーでの売れ残りを廃棄しないという、世界初の法律がフランスで2016年に成立した。日本でも、食品ロス削減のための法案が水面下で動いている。食品の在庫管理やトレーサビリティ(追跡可能性)を担保する、電子タグの開発も進んでいる。余った食品を、レストランから消費者へ、あるいは事業者同士や消費者同士でつなぐための、食品ロス削減のアプリケーションも登場している。

食品ロスは、残念ながら、ゼロにすることは難しい。だが、これまで日本の食品ロスが少しずつ減ってきたように、2018年、少しでも食品ロスが減ることを願っている。