ハンバーガー1個を捨てるのは、お金と電力と浴槽15杯分の水を捨てること

(出典:MonaghanCoCo)

4月19日は、食育の日に制定されている。これとは別に、政府は毎年6月を食育月間、毎月19日を食育の日と制定しており、食育基本法に基づく「第三次食育推進基本計画」には食品ロスを削減することを盛り込んでいる。

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食べ物を捨てるということ。その行為に対して罪悪感を持つ人がいる一方、「たくさん作ってたくさん買って、余って捨てて。それで経済まわるからいいんじゃない?」と主張する人もいる。大量生産・大量消費が経済を廻す、という考え方である。実際、私が企業にお伺いすると、組織の一員として食品ロス問題に関わりながらも、個人としては「(捨てて)何がいけないんだろう?」と、どうも腑に落ちない様子の社員の方もいらっしゃる。

冒頭の動画は、今年2017年2月、大学の先生方と一緒に英仏へ視察に行った際、フランスの農業省の女性職員が見せてくれた。アイルランドのケータリング(食事の配膳・提供サービス業)における年間食料廃棄が2億ユーロに及ぶ、と訴えることを目的に作られている。食べ物を捨てることは、すなわちお金そのものを捨てることである、ということが伝わってくる、衝撃的な動画である(注:貨幣を切り刻んだり硬貨を傷つけたりする行為は決して真似しないでください)。

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食べ物を作るまでに費やされたのは、原材料費や人件費などのお金だけではない。

ハンバーガー1個を作るのに必要な水は2400リットルに及ぶという。ハンバーガーの原材料となるパン(小麦)、レタス、トマト、牛肉が生産される過程で使われた水をすべて足した合計である(出典:『信じられない「原価」買い物で世界を変えるための本 3 食べ物』ケイティ・ディッカー 稲葉茂勝訳、講談社)。

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英国の科学者であるスティーブン・エモット氏の説によると、この水の量は跳ね上がる。エモット氏は「ハンバーガー1個を作るのに3000リットルの水が使われている」と語っている(出典:『世界がもし100億人になったなら』)。

家庭用の浴槽は200〜300リットル。仮にハンバーガー1個に3000リットルの水が使われているとすると、ハンバーガー1個を捨てることは浴槽15杯分の水を捨てることになる。

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日本人の主食のひとつである「コメ」1kgを作るのに必要な水は3000リットル。ハンバーガー1個作るのに必要な量の水である。一方、牛肉1kgを作るのには、20,000リットルの水が必要である。われわれは一日3,496リットルもの水を消費しているとする考え方もある。

食料を輸入している国が、その食料を自分の国で仮に生産したとするとどのくらいの量の水が必要となるかを計算したもの。このような考え方を「仮想水(バーチャルウォーター)」と呼ぶ。ロンドン大学名誉教授のアンソニー・アラン(J. Anthony Allan)氏が提唱している。

環境省の公式サイトには、身近なものが作られるのにどのくらいの量の水が使われているかを計算してくれる、バーチャルウォーター量自動計算機(仮想水計算機)がある。

ハンバーガーを作るために必要なのは水だけではない。電力も使われている。捨てる作業は一瞬だが、その捨てている中に含まれているのは膨大なのだ。

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食品関連企業の方、特に環境関連部門や社会貢献部門の方に参考になるのは、イタリアのパスタメーカー、Barilla社の公式サイトである。

"Good for You, Good for the Planet" というコーナーのうち、"Good for the Planet”(地球によいこと)を見ると、2010年と比較して水の使用量を19%削減できたということがアイコンでわかりやすく書かれている。水だけではなく、電力に関しては、対2010年比でマイナス5%、二酸化炭素発生量に関しては、対2010年比でマイナス23%など、環境への負荷をどれだけ減らしているかについて、企業努力の姿勢を数値で示している。

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「水」といっても、日本の多くの地域では、水道の蛇口をひねればすぐ出てくるので、あまり有難みなく使っていることが多いかもしれない。台所で使い、トイレで使い、風呂で使い・・・毎日、何気なく使っている水。自然災害などで水道が使えなくなるなどの事態に遭遇し、初めて、水の有難みに気づく。でも、世界では、真水の供給を受けていない人が、依然として10億人存在するのだ。

2015年9月25日に開催された国連の「持続可能な開発サミット」で、国連加盟国は「持続可能な開発のためのアジェンダ2030」を採択した。英語名は、Sustainable Development Goals。日本では「SDGs(エスディージーズ)」などと略されている。

全部で17の目標のうち、12番目の「作る責任 使う責任」では水と食べ物について述べられており、「2030年までに世界の食料廃棄を半減させる」目標が掲げられている。英仏の研究者や社会活動家たちは、12番目の目標のうち、3番目に掲げられたこの目標のことを「12.3」などと呼んでいた。

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食べ物を捨てることは、「お金」を捨てること。とてつもない量の「水」を捨てること。東日本大震災の後、あれだけ節約し、大事に使っていた「電力」を捨てること。食べ物の原材料となる農産物や食材を作った人、食べ物を加工・調理した人、包装材料を作った人、運んだ人、売った人・・・食べ物に関わった、すべての人の想いや時間を捨てること。命は時間の積み重ねなので、食べ物を捨てることは自分の命を捨てることにもなる。

命を削って稼いだお金で買った食べ物を捨てるわたしたち。

記事中、仏英渡航の写真に関して:筆者撮影

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。Champions12.3メンバー。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てられる食べものたち』他。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/令和2年食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞

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