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三つ葉(328)の気持ちも考えて

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:アフロ)

今日3月28日は「三つ葉(328)の日」。旬の食材百科「三つ葉」によると、三つ葉の旬は、3月から初夏にかけて。ハウスものなら一年中とれるが、天然ものは今の時期がちょうど旬、ということになる。だが、クリスマスの時期やお正月近くになると卵の需要が増えるように、お雑煮に使う三つ葉も、お正月前の年末になると需要が増え、価格が跳ね上がる。

ある小売店が主催した食の講演で、主催者の方が「正月前になると、三つ葉と卵の需要が急激に増える。でもそんなに急激に増やせないし、無理がある。本音を言えば、一年を通して均(なら)して買って欲しい」という趣旨のことを話していたのが印象的だった。

教えて!たまご先生によれば、にわとりは一日に一個しか卵を産むことができない。人間の都合で、クリスマスや正月前に大量消費しているが、にわとりの立場に立てば、「24時間以上かけて必死に1個の卵を産み出しているのだから、日本全国で一気に消費しないで・・」というところではないだろうか。

今年の2月3日、ダイヤモンド・オンラインにコンビニ恵方巻「大量廃棄」問題の解決が難しい事情という記事を書いたところ、42万PVを超えるアクセスがあった。

恵方巻(iStock)
恵方巻(iStock)

限定された一日にしか消費されない食べ物というのは、需要と供給のバランスをとるのが難しい。したがって、調整できなくて無駄になってしまうことが多い。

土用の丑の日も然り。ニホンウナギは絶滅危惧種だが、毎年、土用の丑の日になると、小売店には多くのうな丼やうな重が並び、売れ残る。

うな重(iStock)
うな重(iStock)

「最初から、売れ残るほど置かなければいいじゃないか」と思うかもしれないが、小売店側は、メーカーに対し、欠品しないようにと指示することが多い。加工食品の場合、欠品すれば、せっかく売上を上げられる「販売チャンス」を失わせた、ということで「欠品ペナルティ」(欠品粗利補償金)を払わなければならないケースが多いのだ。

旬でない時期に農産物を大量に消費する、あるいは特定の食べ物を特定の日に消費することを煽る風潮は、そろそろ考え直したほうがいい。需要予測が困難な中、欠品を無理に防ごうとすれば、売れ残りが出て食品ロスが出るのは避けられない。日持ちしない食べ物ならなおさらである。

勤め人の通勤時間が集中するラッシュアワーを避けて通勤することを「オフピーク(off-peak)通勤」などと呼ぶ。組織によってはフレックスタイム制度を導入し、コアタイム(たとえば午前10時から午後3時まで、など)には従業員は必ず就業し、それ以外の時間帯に関しては、育児・介護などライフスタイルに合わせて、あるいはラッシュアワーを避けての通勤など、個人の意向や生活に合わせて柔軟に変えることができる。私も会社員時代は、満員電車を避けるため、フレックスタイムを利用していた。

人間の場合、一極集中して負荷がかかるのを避けるためのさまざまな工夫や制度を導入するのに、こと食べ物になると、そうはしないのはなぜだろう。「売れるこの時期に売れるだけ売っておかないと」という事業者側の都合もあるだろうし、食べ物を ”モノ” だと思っていることもあるのではないか。食べ物を人とみなすような、食べ物への敬意があれば、もう少し変わるのではないかと、いつも思う。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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