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SHIBUYA CITY FCのシームレス・フットボール。戸田和幸TD兼コーチに聞く、その正体。

小澤一郎サッカージャーナリスト
写真提供:SHIBUYA CITY FC

 7月10日(日)に渋谷区スポーツセンターで開催された東京都社会人サッカーリーグ1部1stステージBブロック第9節「SHIBUYA CITY FC(以下、SCFC) vs. ZION FC」は5-0でSCFCが勝利した。

 これでSCFCは開幕8連勝を飾り、今節2位チームが敗れたことで最終節を前に1位での1stステージ通過が決まった。

 今年から元日本代表の戸田和幸氏をテクニカルダイレクター兼コーチに迎え、Jリーグ経験のあるベテランや大卒1年目の若手を積極補強したSCFCだが、切り替えや切れ間のないシームレスなフットボールの質と強度の高さに度肝を抜かれた。

 試合当日はいちサッカーファンとして観戦していたため、後日「SCFCのシームレス・フットボールの理解を高めるために、戸田TD兼コーチに話を聞きたい」とクラブに唐突なお願いをしたところ、すぐに快諾・対応頂いた。(この場を借りて感謝申し上げます)

 以下、SHIBUYA CITY FCでテクニカルダイレクター兼コーチを務める戸田和幸氏との一問一答のやり取り、インタビュー全文を掲載する。

写真提供:SHIBUYA CITY FC
写真提供:SHIBUYA CITY FC

――改めて、前節は5-0での勝利おめでとうございます。前半の試合の入りからお聞きします。相手のZION FCは試合前の順位が(10チーム中)6位、試合は5バックで低いDFライン設定で入ってきました。ピッチのサイズが狭いということで、簡単に攻略できる、サイドチェンジするスペースもあまりなかったと思いますが、その中で序盤から上手く左右に振りながら、サイド攻撃からチャンスを作っていました。試合の入り、前半の手応えは?

 手応えですか?パターンで何かトレーニングをしてきているわけではないのですが、(ボールを)保持することの目的を全体でしっかり共有はしています。あとは、相手の情報を入れたり、実際の相手を把握した時に、「(狙うべきスペースは)どこだ?」ということを中盤センターの選手、今回だと背番号8番の植松亮らには伝えながら。センターバックの運び出す場所、そこからまず見る場所というのも、ある程度共有した上で、鋭く相手の背後を取っていくこと。そこはある程度コンセプトとして継続してやってきている部分なので。それに基づいてプレーした、という意味ではみな努力をしてくれたんじゃないかなと思います。

(11分の)先制点が入るまでの決定機もありましたので、あのスピード感の中でしっかり点が取れるところまで持っていけたらいいなとは思って見ていましたが、今回はやはり環境(※)が特殊でしたから。(※今季初の渋谷区開催、約500名の観客を入れてのホームゲーム)

お客さんも入っていたし、選手からすると普段の試合以上に色々なことを感じたり、背負った中でプレーをしなければいけなかったので。あと、ここはピッチが正規サイズ(105m×68m)よりも狭く、横は4m、縦は9mほど狭いので「難しい試合になるよ」と伝えていました。ただし、いつも試合前には、「相手より1点でも多く取って勝てばいい」とも伝えています。

もちろん、求めているものはあるけれど、サッカーの試合というのは「相手よりも多く点を取って勝てばいい」と。それを忘れずにプレーした方がチャレンジもできるので。そういう意味では、前半も良かったと思うし、確かに(3-0で折り返した)後半は飲水タイムまでちょっと弛緩した部分もありましたが、それはしょうがないかな?と。

前半で3点をとって選手には伝えました。「この試合の意味は?」と。だから、得点数じゃなくて、何を見せるか、何を伝えるか、が大事だから「続けていこう」とは言いましたが、そうは言ってもね、というところもあります。

(後半の)飲水の時にちょっと伝えて、またゴールに向かい始める感じになったから。まあ、求めるものはいくらでもあるし、もっと個々人のレベル・質を、サポートのアクションもそうだし、体の向きもそうだし、蹴るボールの質ももっと上げられるとは思いますが、みんな一生懸命、仕事をしながらの選手も多いから。努力はしてくれている。少なくとも、(この試合を)観てくれた人がみんな笑顔にはなっていたし、(失点)ゼロで終わって勝てて良かったんじゃないかな?とは思っています。

写真提供:SHIBUYA CITY FC
写真提供:SHIBUYA CITY FC

――特に攻撃面でのアクションの質が高く、そのアクションがグループとして繋がっているのは確実に見えました。例えば前半の右サイドで言うと、サイドバックの大津(佑和)が幅を取り、サイドハーフの轟木(雄基)が内側に立ってDFライン背後にスプリント。その二人の関係で何回も右を攻略していたわけじゃないですか?5バックの相手に対し、SBがあの(低めの)位置でボールを持つことによってWBを引き出す。一方で、逆サイドからも必ず斜めのランニングで内側に入って来るから、相手としてはアクションがわかっていても、あのタイミング、精度、スピードで合わされ実際にパスを出されるとついていけない、というのはよくわかりました。その辺は、狙いとして持って試合に入ったのですか?

 それはもう、完璧にあります。フォーメーションの狙いもあるし、相手が下がったらどうするというのも準備はしていたのですが、下がらなかったから。基本的には轟木のところ。轟木が(内に)入った時の場所と、それによって相手の守備陣がどこを意識するのかを見てもらって。あとは、8番の植松のところを、最初はあまり前に入らないでちょっと手前から見て欲しい、という話をして。やはりここは横幅が狭く、相手がもしギュッと締めてきた時に前に入りすぎちゃうと、4番のCB國廣(周平)は意外に出せるところがない、となる。無理やり(縦に)さして、(パスが)引っかかることがあるかもしれないな、と思ったから。

8番の植松が戦術的にも結構キーマンで。ハードワークもできるのですが、彼のところでちょっと見させて、右のSB大津はちょっと外から、基本的には外から。ドリブルも使うし、斜めも使うし、背後、というところと。轟木と左SH9番の井上(大地)は基本的にはランナーだから。ランナーにはしっかり走ってもらう。

そして、逆サイドは必ずストライカーになる。実際9番(点取り屋)のポジションがいるようでいない感じ。宮崎泰右が9番になる時もあれば、14番の本田(憲弥)が9番になる時もある。厳密にレーンみたいなものは作ってないのですが。このサイズのコートでは無理だから。そういうバランスで物事を考えて。プレーができるよう、色々と練習をしてきた。そんな感じです。

――90分で見た時には、この暑さの中で緩んでもいいような試合展開、相手の中で後半の終盤はずっとそうでしたが、スローインで切れてもすぐに入れる。キーパーがキャッチしてもすぐ配球。ああいう切れ間のないシームレスなサッカー、切り替え自体をなくそうといった意識は、外から見ていてもよくわかりました。そこはチームとして掲げている部分ですか?

 掲げています。とにかく、ボールを持っていても、持っていなくても、常に相手のゴールに向かうということを忘れない。その繋ぎ目のところ。スローインも含めて、これはトランジションだと。準備のアクションの質を上げて、準備のアクションの質が上がれば、相手をよく見ることができる。

その上で、プレーする時のスピードは上げすぎない。ボールを扱う時のスピードを上げすぎないということ。前向きの選手をどこで作るか、作れた時にはゴール方向にアクションを起こす。ボールは持つけれど、ゆっくりボールを動かして、相手を押し下げる、というよりはもう相手が前から来るなら、前向きを作ったら、どんどん背後を取りに行く。そこで点を取りにいく。どんどんゴール前の場面を作っていく。それがコンセプト。選手は大変だと思いますが。

去年だと、ボールを保持して保持して、そこから沢山カウンターを受けていた。選手も入れ替わってはいますが、今回みたいな試合になった時に、見に来る人に何を伝えるか、ということを考えると、別にトライアングルを作ってパスをポンポンと回すことじゃない。そもそも、そういうクラブ側のニーズがあったし、できるだけ今のフットボールをしっかり捉えた上で、チャレンジを続けて行くことが、こういう新しいチームが存在感を発揮していく理由で。勝っていくっていうのはすごく重要なので。

あとは選手個々人の顔ぶれを見た時に、宮崎をどういうふうに使うか。そういうことを全体的に考えてチームを作らせてもらって。蹴れる人には蹴ってもらう。走れる人には走ってもらう。ドリブルができる人にはドリブルをしてもらう。そういうことを上手くこの試合の中でグループとして発揮できるように。

写真提供:SHIBUYA CITY FC
写真提供:SHIBUYA CITY FC

――左サイドで言うと、左利きのSB阿部(翔平)、CB岩沼(俊介)はやはり対角へのボールの質が高いですね。それも含めてやはり、個人の特徴をうまく吸収しながらのサッカー、システムにしているということですね?

 そうです。その上で、準備のアクションの質を上げる。だから、「どこに」ということがやはり必要になってくるし、「まずどこを」というのも必要になってくる。そこは繰り返し、繰り返しトレーニングと試合でやってきています。そういう意味では、(昨年まで2年間指導した)一橋大の学生たちと比べてみると、サッカー面での理解と吸収のスピードは、やはりSHIBUYA CITY FCの選手たちの方が早い。

――技術的なレベルが高い選手が揃っているから、要求したことを則座に実行できますもんね?

 今回の前に対戦をした相手は3バックで、その時はもっとプレッシングのところをしっかり準備しました。今回も準備はしましたが、おそらくは(ボールを)持つ方が多くなるし、そこからのカウンタープレスの方が主流になるので、あまりセットしたプレスのことは言っていません。後半の半ばまでのところは、まずボールをしっかりプレーすることに対する目的意識が薄れて、ゴールキックになった時に(GKが)ちょっと相手が来たからといって前に持って蹴ったじゃないですか?

あれで今回は、「GKを替える」ことを決断しました。後半の序盤もそうで、GKまで一度下げた時に、アンカーにパスをつければいくらでも(相手のプレスを)外せるのに、準備のところのアクションがちょっと弛緩していて、ボンと大きく蹴っていた。そういう1個1個のプレーで、相手が何を感じるのか、というのと。自分たちが何をこの試合で表現するかということを考えたら、チャレンジの質が低いと思いました。そこは一切ブラしちゃいけないところ。その上で、ゴールを目指し続けるんだ、というメッセージも常に発信しているから。それに基づいて、GKを替えました。

写真提供:SHIBUYA CITY FC
写真提供:SHIBUYA CITY FC

――改めて、こういう強度の高い、シームレスなサッカーをするためには、フィジカルが一番重要だと思います。どうやってここまでのチーム、フィジカルを作り上げてきたのですか?今回の試合を見ても、それこそ後半から入った菊岡(拓朗)もそうですし、スタメンの阿部もそうですし、30代半ばのベテラン選手でも強度高くプレーできているように私には見えました。

 まずは去年のパフォーマンスのチェックから始めました。それは映像で見て確認しました。(菊岡)拓朗に関しては、今年から来てくれた選手なので、合流してからのチェックでした。ヨーヨーテストも2回やりました。1回目のデータを取った時に、去年の印象のままで。これはまずいぞと。あとは、自分にはプロで活躍しているフィジコの友人もいるので。一応、色々と教えてもらいながら。まずは怪我をしないよう、ある程度中長期のスパンで、手探りですがトレーニング計画を立てていく。コンセプトだけは最初にポンと出した上で、ハードワークを自然にしなきゃいけないようなトレーニングを設定しています。だから、うちでは素走りは一切していません。

ボール持ってのグループアクション、個人のアクション。それがゴールに向かう、ボール保持に向かう、そうした目まぐるしく展開が変わるようなトレーニングを行っています。そういうことをずっと続けてきて、やはり彼らの生活環境でいうと、仕事をしています。だからこそ、レスト(休息)の部分をしっかり取らせた上で、どれだけトレーニングの質を上げられるか。ここは確かに手探りですが、今のところトレーニング中の筋肉トラブルはゼロです。これは一橋大の時もそうなのですが。

でも、自分一人でできることばかりじゃない。やはり、色んな人に教えてもらっているし、あとはやりすぎないこと。やりすぎないけど、この練習の中に自分たちとして必要なものは全部詰め込むというトレーニングをずっと行ってきたから。多分、試合よりも練習の方がきついはずです。実際、今季は始動から7週目あたりまで、ゲーム形式は8対8までしかできなかった。それも金曜日に8分を2回ぐらいしかやっていない。というのも、練習が火曜、水曜、金曜の3日しかないから。

水曜にフルコートのゲートとか、それもやってないですが、やはり少しずつグループから作っていくので。ゲームだけやってフィジカルが作られるわけでもないですし、4局面のところのシームレスという言葉はあるけれど、自分たちとしてどうプレーするか、というところを、落とし込むことを考えた時に、意外に「ゲームが要らない」って思うところもあるから。でも、ゲームをやらないと選手によってはしっくりと来ないから、金曜日にゲームを行ってきましたが、本当に10週目くらいまで11対11はなかった。人数が揃わなかったのもありますが。

フィジカル的には、どうしても個人差、ばらつきがあったので。リーグで結果を残すところがクラブとして決まっているから、そこからの逆算で全部やらなきゃいけないからSHIBUYA CITY FCとしてしっかりとパフォーマンスを発揮できる人だけにプレーをしてもらっています。

要するに、「そこまで来なさい」と。自分から選手に何かを強要したことは実はないですし、菊岡も最初は本当ジョギングをして息が上がります、みたいな感じだったから。だいぶ良くはなったと思います。でも、本人がそうしたい、しなきゃって思えるように。それがマネージメントにおいて重要なところで。若くてすごくやる気があって、伸び盛りの選手もここにはいるから、そういった状態のいい選手に、どんどんプレー機会を与えたり、フィードバックしたり。チームを作っていって。あとは、そこに少し遅れて入ってくるような選手もいるけれど、何とかついてこられるように持って行く。だから、基準は明確です。

パフォーマンス。

フィジカル的に整ってない限り、試合に出れないし、それはクラブが求めていることから自分は考えています。自分がこうしたいからではなく、ここはクラブとして「絶対勝たなきゃいけない」と決めているので。でも、「フィジカル」と一言で言ったって、しっかり頭を使わなきゃいけないし、コミュニケーションも取らなきゃいけない。それも含めて、全部トレーニングをして、だから大変だとは思います。

でも、やっただけの価値はあるでしょ?みたいなところを、試合をしながら選手が感じてくれればいいなと思っています。幸い今季はまだ1回も負けていない。私の指導者人生で初めてですよ。もう20試合以上やっていると思いますが、プレシーズンの練習試合で2回引き分けただけで、あとは全部勝っている。

みんな良くやっていると思います。選手に聞いたら、しんどいとか、難しいとか、言うと思いますが、やっただけの価値はある、みたいなところは多分試合で感じてくれていると思います。あとはこっちが詰め込もうとしすぎずに、ZION FC戦後の次の火曜(7月12日)の練習は自由参加にしましたが、やはりみんな仕事をしている分、完璧なオフがない。いかに心の疲労感なくトレーニングに来てもらえるか、ということは気にしています。

あとは、限られたトレーニングをとにかく良いものにする。そこです。自分からすると、それなりのところで、戦術的なことも、みんなには個人も含めて、渡しています。ただ、選手からすると、すごく難しかったらしいです。特に、センターバックの立つ位置、運び出す時の判断、どのように運ぶか、はやはり難しかったらしいので。

相手がプレスをかけてきた時に外すためのアンカー、インサイドハーフ、サイドバックの位置取りとかも、自分は「下を作れ」といつも言っているのですが、そういうのも簡単じゃない。やはり継続してしっかりトレーニングをしていくと、一貫性は多分出る。みんなも一生懸命やってくれるのでそれが入る。ただ、目的は保持じゃないということを同時に伝えています。

ゴールに向かうことを忘れないようにするということを、全体のバランスでやっていて、4番(CB)の國廣は完璧に仕事人なので。サッカーは二の次、みたいな選手なのですが、すごく思考の柔軟性があって。彼は遅れて加入してくれた選手なのですが、自分と初めて会った時のフィーリングがすごく良かった。元々は、中盤のセンターなのですが、やはりセンターバックでしっかりと運べて、(パスを)振り分けられて、ヘディングもできる選手は貴重だから、彼に関しては自分が話をして、コンバートしました。

結局、センターバックにどういう選手がいるかで、ある意味決まる。ボールを持ってプレーしたいならCBで決まるし、GKもそれは同様。そういったものを要求はさせてもらいました。

うちの武器というと、例えば宮崎泰右みたいな選手がいて、彼にどれだけ回数多く、もしくは相手が困る状況でボールを渡せるか。そこに上手くボールが入っていくような順番をチームとして作ること。でも、彼のところをおとりに使うこともある。なぜなら、彼のところに人が集まるわけだから。それを逆手にとって違う選手が飛び出したり、背後を取るというのも同時にやっているつもりではあります。

彼は相手に脅威を与えられる存在なので、自分にボールが来そうな時には必ず相手も来る。それを個人で外すのも一つ。でも、後ろ向きの時シンプルにはたけば、もう1個後ろで自分がもらえるんだよ、というのはずっと言わせてもらっていて。彼、感度がすごく高いから。

もうプロから抜けて時間は経っていると思いますが、まだまだスプリントもできるし、インテリジェンスのレベルも非常に高い。自分にとってはありがたい存在なので、彼には気持ちよくプレーをさせてあげたい。でも、本人のやりたい事だけだと、たまに上手くいかないから、そういう時にはちょっと言わせてもらう。こんな感じでやっています。

写真提供:SHIBUYA CITY FC
写真提供:SHIBUYA CITY FC

――この試合で言うと井上、轟木のような若手選手たちはおそらく、大学時代とは全く異なるプレーをしていると想像します。走れるし、活きはいいのですが、サイドに張るだけではなく内側のポジションを上手く取って相手のマークを引き付ける戦術的に効果的なポジショニングを終始取れていました。轟木に話を聞きましたが、流経大時代には全くそういう選手ではなかったようで、彼みたいな選手が実際にライン間で相手を数名ピン留めして、そのまま背後にスプリントみたいなプレーは彼の大学時代を知らなくともかなり驚かされました。実際、戸田さんから見ても変わりましたか?

 変わりましたね。最初はもう、とにかく走りまくっていただけでした。ただ、走力、スプリント力はあるので、彼の強みをこういうふうに生かしてあげればいいかなというのは考えながら。もちろん、相手が下がった時には彼には幅を取らせるつもりでした。要するに、相手を広げさせたかったから。でもZION FC戦では、それより内側が使えたので、そこからそのまま走ってもらいました。ボールコントロールも悪くないし、まだまだちょっと先走っちゃって早くスペースを取ろうとしてしまって、オフサイドになる事はあります。もっと1mとか、ちょっとした体の向きとかは言わせてもらっていますが、それ以外はできるだけ細かいこと言い過ぎずに走ってもらう。言い過ぎちゃうと、がんじがらめになっちゃうので。井上も、日体大の卒業生なのですが、だいぶ良くなってきたと思います。

いつアクションを起こすか、いつ手前なのか、いつ背後なのか。一つ奥に入った時にはどうなのか、みたいなところは、多分少しずつわかってきたと思います。オフのところをどのくらい引き上げられるかで、オンは変わってくる。同様にオンもやっていますよ。止めて蹴る、もやっているし、相当言っている。だって、止まらなかったら次のプレーなんてできないから。シュート練習も大体毎日色んなシチュエーションでやっています。

あとはやっぱり相手が困る状況を作った時に、相手が勝手に答えを見せてくれる。「ここだよ」というのは相手が見せてくれるから、「それを見つけよう」と言っていますが、これが多分一番難しい。実際、試合が始まってみたら相手の中盤は3枚だったから、その情報を伝えて、サイドバックの場所をちょっとだけ修正させてもらったり。あとはもう自然にやる。いつ背後というのは、自然にやってくれます。

――そのアクションがチーム、グループとして揃っているのが凄いと思いました。

そうですね。でも、実はパターンでやっているわけじゃありません。パターン練習はやっていない。ただ、金曜日のトレーニング時は、こっちとすると難しくなるようなシチュエーション、例えばこの前だったら相手は3-4-3だからウイングバックとシャドーがいて、ここにボールがこういうふうに入った時には、こんな対応が多分必要、といった感じの練習をしています。

プレスがハマる前提じゃなく、上手くいかなかった時の対応をトレーニングしています。あと、センターバックはどういう状況だったら1枚で立つか、最後はクロスだから、みたいなところもやっています。だから、シュートブロックもこの前はよくできていました。クロスが入ってきた時に、中に人がいなくなる課題は改善できました。

失点に繋がりそうな危ない場面も減ってきた。このレベルですけど。でも、どのレベルであっても、目指すものはしっかりと掲げた上で、どれくらい努力を続けられるかだと思います。あとは、喜ぶところはちゃんと喜ばせてあげる。でも、もっとできるんだよ、というバランス。本当にちゃんと喜ばしてあげたいし、自分も評価するけど我々はまだ何も成し遂げていない。

でも、今取っている勝ち点は次(の2ndステージ)に繋がるから。すごく有利にはなるし、今回の相手に勝つことより、集まってくれた人に何を見せられるかの方が余程ハードルが高い。そういうことでチャレンジを続けていけば、勝手に試合結果はついてくる。自分たちのレベルが上がる。

東京都1部だからとか、まだ社会人カテゴリーだから、とかも関係なくて。そんなことを飛び越えて、何か新しいバリューみたいなものを、エンタメをここで提供するチームにしていきたい。

あとは選手に無理なく課題提供して、個人が成長して、個人でチームを変えていく。そういう場所にしたい。若い選手はすごく貪欲だし、成長に向けてすごく意欲的に取り組んでくれている。轟木も点こそ取ってないですが、彼の立ち位置とランニングで相当相手は困ったと思います。じゃあ、今度はその後ろから球を出している大津の配給の質はどうか?みたいなところが、今テーマで。

もうちょっと巻いて転がしてあげれば、(受ける轟木が)そのままクロスを上げられるよねとか。そのために必要な立ち位置とボールの置き場所どこですか?みたいなものを、また個人として改善すべく練習を続けていく感じ。

写真提供:SHIBUYA CITY FC
写真提供:SHIBUYA CITY FC

――確かに、今回のチームパフォーマンス見ていると、若手で言うと轟木を筆頭に、井上やこの試合出場停止だった河西(守生)ら、大卒でJには行けなかったけれど、野心持ってSHIBUYA CITY FCに入り、フットボールを学び、ここからプロの世界を目指せる場所となりそうです。逆に、ベテランでも菊岡、宮崎みたいにJではもう厳しくて社会人リーグに降りてきたけれど、ここでまたフットボールを学び、楽しむ。でも、今までの経験値や貯金でプレーするのではなく、学びながら成長しながらサッカーを続けるという意味では、SHIBUYA CITY FCは誰にとっても非常に良い場になっている気がします。

僕にとってもです。若い選手をしっかりサポートして、彼らが目指す場所に到達できたらいいなと。そういう挑戦をしてもらうのもそうだし、今言ったように、上でやっていた人、田中裕介もそうだし、(菊岡)拓朗もそう。阿部ちゃんもそう。過去は過去。大事なのは今。今のパフォーマンスで決まるんだよ、と言わしてもらっているので。

もちろん、彼らの中にあるものは大切にしますが、今必要なものが別にあったりするから、そこは自分がリスペクトした上で、あくまでSHIBUYA CITY FCとして魅力的なチームになっていくために、個々人を見た時に、阿部ちゃんだったらもっとこれできるよねとか。そういうのは伝えさせてもらって。とにかく、トレーニングを真剣にハードに行って、パフォーマンスが良い人が試合に出る。ここです。

選手には申し訳ないですが、うちの場合は自分がいる限り、実績で優遇とかにはならないので。お陰様で、それでチームは躍動できている試合が多く、若手も伸びている。それをベテランが見て、リスペクトして、「よし俺も」って思ってやってくれている。菊岡みたいな先発で出れなくて、アップしている選手が若い選手が点を取った時に、一番喜んだりしているのも、何かそういうのを見た時に、自分は「すごくいいチームだな」と思ったし。

もちろん、試合に使ってあげられなくて申し訳ないという気持ちもありましたし、それは本人にも言ったのですが、そうやってチーム内で切磋琢磨してリスペクトして、でもあくまでパフォーマンスのある人が出る、という状態に今はなっているので。ここまで来ると、勝手に選手がやってくれるサイクルに来たような気がします。ここから先は、あまり自分が細々言いすぎないことも大事かなと。そんな感じです。

写真提供:SHIBUYA CITY FC
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サッカージャーナリスト

1977年、京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒。スペイン在住5年を経て2010年に帰国。日本とスペインで育成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論を得意とする。媒体での執筆以外では、スペインのラ・リーガ(LaLiga)など欧州サッカーの試合解説や関連番組への出演が多い。これまでに著書7冊、構成書5冊、訳書5冊を世に送り出している。(株)アレナトーレ所属。YouTubeのチャンネルは「Periodista」。

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