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欧州王者撃破のU-17日本代表・吉武監督「答えは3試合後にわかる」

小澤一郎サッカージャーナリスト

18日(現地時間)に行われたU-17ワールドカップのグループリーグ初戦で欧州王者のロシアと対戦したU-17日本代表は、前半15分のMF瓜生昂勢のスーパーミドルによる1点を守りきり1-0で勝利した。試合後の会見でU-17日本代表の吉武博文監督はまず「コンパクトにやれたのが勝因」と述べた。また、ローテーションポリシーからこれまでのチームの主軸であるMF鈴木徳真、FW杉本太郎らを先発から外した選手起用については「3試合見た後にみなさんがわかるのかもしれない」と説明。以下、吉武監督の会見の要旨。

――試合の感想と勝因

ヨーロッパの1位のチームとの初戦、リーグ戦の初戦ということですごく大事な試合で勝ち点1でも、というように思っていたのですが、勝ち点3を獲れたというのはすごく大きい。欲を言えば、(得失点差)プラス2でいけばもっと良かったと思います。ただ、後半われわれは多分シュートを2本ぐらいしか打っていないと思いますし、1対1の同点になっても仕方ないような場面もたくさんありました。それを1-0のまま切り抜けられたというのは、守備がすごくコンパクトで、日本の選手たちは身長が低いのですが、コンパクトにやれたのが勝因だったと思います。

――選択肢がある中で三竿(健斗)のアンカー起用を含めこのスターティングメンバーにした理由と試合途中で宮原(和也)のポジションを(アンカー、右サイドバックに)変更した理由

当初より3試合をトータルで(考える)ということで、今日の試合だけ云々ではなくて、答えはもしかしたら3試合見た後にみなさんがわかるのかもしれないなと思います。言われるように、われわれが「アンカー」と呼んでいるポジションは熟考したところで、昨日選手に発表したアンカーの選手とは変わりました。今日の朝に三竿選手に変わったという経緯もあります。途中で色んなポジションを変えたのですが、われわれは「ニューローテーションポリシー」と呼んでいるんですけども、試合の中で相手がどうこうではなくて、われわれのリズムがちょっと悪い感じがあったので、われわれのリズムに戻したいというところで2、3分でも、5、6分でも違うポジションをすることによってちょっとリフレッシュしてもらってまた元の位置に戻すことができればなと。でも、策に溺れたという感じで上手くいかなかったので、次の試合は気をつけたいと思います(苦笑)」

――前後半の序盤に押し込まれたがそれを凌げた理由と、「浅い」という指示の意味

相手のシステムが4-2-3-1で私たちとしては一番組みやすい相手なのでもっと押し込めたはずなんですけど、悪いところは相手のDFラインが浅かったのを見ることができなかったこと。そこの裏、背後にスペースがあったので、もっと背後のスペースを狙うことによって、今言われた時間帯良くなかったというのはそこを狙えなかったので相手が狙っているところでボールを失っていました。狙っていないところを選手たちが少しずつ狙うようになったので相手のDFラインが下がってわれわれが押し込む場面が増えてきた。けれども、その後の質はやはり課題なので、もう2試合の中で若い選手たちが経験を積んでもっともっと質の高いゴール前のプレーを披露してもらいたいです。

――先制点は素晴らしいミドルシュートだったが、相手のラインを押し込むために「遠目からシュートを打て」と指示していたのか

それぞれの試合であまり具体的なことは言わないというか、「こうしろ」、「ああしろ」ではなくて、「自分の最初のインスピレーションを大事にしてもらいたい」ということは伝えます。「どこで何をしろ」ということは日本の選手はそう言うとそっちの方に移ってしまうので、「相手の守っていないところをちゃんと見よう」と。それから、「自分の感じたことを感じたままに思い切ってしよう」ということは伝えましたけど、「ミドルシュートを打て」というようなことは言ってないです。

――瓜生のゴールが生まれた要因

瓜生という選手は少し説明が難しいのですが、日本で高校選手権というのがあって、そちらに行きたい気持ちもあるのですが、日本代表でプレーをしたいということで彼自身すごく期するところがあってこの大会に来ています。前日、試合の中でPKを得るような気がして、誰が蹴るかなということを選手と話していたんですけど、彼が「PKを蹴りたい」と。その気持がやはりゴールを生んだのだと私は思っています。

――大会前にはロシア相手に敗れている

内容的にはそれほど負けた試合と変わらなかったかなと。先ほど言ったように、何が違うかというと0点、無失点で抑えたというところ。前回は1-2で負けて、その2失点がなくて1点しか獲れなかったし、というところで。彼らは若い選手でこの大会の中でどんどん成長するので、大会の中で、次の2試合目、3試合目で、もっといいパフォーマンスをしてくれると信じています。

――怪我人の有無

今のところはいません。もしかすると、心を怪我している選手はいるかもしれませんが(苦笑)。疲れているのは疲れていると思います。

サッカージャーナリスト

1977年、京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒。スペイン在住5年を経て2010年に帰国。日本とスペインで育成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論を得意とする。媒体での執筆以外では、スペインのラ・リーガ(LaLiga)など欧州サッカーの試合解説や関連番組への出演が多い。これまでに著書7冊、構成書5冊、訳書5冊を世に送り出している。(株)アレナトーレ所属。YouTubeのチャンネルは「Periodista」。

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