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全球団制覇か、準制覇かー。両先発が、ちょっぴりマニアックな記録に挑んだ夜。

一村順子フリーランス・スポーツライター
救援投手が打たれて、アストロズ戦初勝利が幻となったヤンキース・田中将大投手。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ヤンキースの田中将大投手(30)が22日(日本時間23日)に先発した本拠地でのアストロズ戦は、7対5で競り勝ったヤ軍の二番手、ホルダーが勝利投手、ア軍の三番手、プレスリーが敗戦投手に。先発投手は共に勝ち負けがつかなかった。

 この試合、田中が勝てば、ア・リーグ14球団目からの勝利。所属するヤンキース以外では公式戦唯一未勝利のア軍戦初勝利となり、“リーグ準制覇”がかかっていた。一方、ア軍先発・左腕マイリーは、ア・リーグはヤンキース以外の14球団から勝ち星があり、“リーグ制覇”がかかっていた。

 ヤンキース戦は、過去10試合に先発し、これまで0勝4敗のマイリーは、四回まで無被安打だったが、五回にウルシェラに2ランを浴び、5回0/3を投げて4失点。“11度目の正直”も実らなかった。一方、田中は六回を投げ4−2と勝ち投手の権利を得て降板したが、中継ぎ陣が打たれて白星がフイに。マイリーが「調子は悪くなかったけれど、大事な場面で球が甘かった」と振り返れば、田中は、「点を取られるタイミングが悪すぎた」と反省。2人の偉業は、共に持ち越しとなった。

 1997年に交流戦が始まったとはいえ、計30球団ある大リーグ全球団から勝ち星を挙げるのは極めて難しい。移籍しなければ、最初の所属球団とは永遠に戦えないし、地区が違えば、対戦は1年で本拠地&敵地の2カードのみ。必ずしもローテが巡るとは限らない。長いキャリアで両リーグを通じて活躍しなければ、到底、果たせないし、巡り合わせの運も必要になってくる。

 リーグ拡張後のメジャーで達成したのは、過去に18人。最も最近では、2017年にバートロ・コローン(ツインズ)がDバッックス戦に勝って、30球団制覇を達成した。他には、ランディー・ジョンソン、カート・シリング、マックス・シャーザーら錚々たる顔ぶれが並ぶ。日本人では、野茂英雄氏が古巣ドジャーズを除く29球団、黒田博樹氏がタイガースを除く29球団と全制覇に王手を賭けながら、あと一歩及ばなかった。また、現在のヤンキースでは、サバシアがマーリンズ以外、ハップがドジャーズ以外の29球団から勝利を挙げ、メジャー制覇に王手をかけている。

  「そのこと(リーグ制覇)は、特別、意識していなかった。それより、大事な試合に勝てなかったことが残念だ」と試合後のマイヤーは言った。左腕はヤ軍とメッツ以外の28球団で勝ち星を挙げており、両リーグでNYを本拠地とする球団を残して王手をかけている。「ほんと、ニューヨークが嫌いになっちゃうよ」と冗談めかした後で、「また来年があるさ。Will see (どうなるかみてみよう)」と笑った。

 

 

フリーランス・スポーツライター

89年産經新聞社入社。サンケイスポーツ運動部に所属。五輪種目、テニス、ラグビーなど一般スポーツを担当後、96年から大リーグ、プロ野球を担当する。日本人大リーガーや阪神、オリックスなどを取材。2001年から拠点を米国に移し、05年フリーランスに転向。ボストン近郊在住。メジャーリーグの現場から、徒然なるままにホットな話題をお届けします。

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