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「Beat LA」が復活。レッドソックスがドジャーズを倒して5年ぶり世界一を達成した。

一村順子フリーランス・スポーツライター
就任1年目で世界制覇を果たしたコーラ監督(中央)(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 大リーグのワールドシリーズは、レッドソックスが4−1でドジャーズを下し、5年ぶりの世界一を奪回した。優勝が決まった28日(日本時間29日)の第5戦。試合前にドジャースタジアムの電光掲示板で紹介されたビデオに、詰めかけた54367人のファンは喝采したが、それは、大陸を隔てた東海岸のレ軍ファンにも好評を得るクールな映像だった。MLBではなく、NBAの殿堂入り2大スーパースターの掛け合い。今やド軍のオーナーとなった元LAレイカーズのマジック・ジョンソン氏と、元ボストン・セルティックスのラリー・バード氏。NCAA時代からライバルとしてしのぎを削った2人が普段着トークで互いの地元チームを応援する内容だ。

まずは、背広姿のバードが「久しぶり、Mr.ドジャーズ。いいシャツだね」と、青いTシャツを着たマジックに語りかける。マジックが「君はバスケット選手。野球なんて知らないだろう」と言うと、バードが「野球もバスケも一緒」と反論。丸いボールを使い、板張りのコートとバットは木製だ、と共通点を指摘する。ラリーが「一発を打ち、守る」と言えば、マジックは「ボールを支配して動かす」。正確無比なシュートとリバウンドを得意としたバードと、神業的なパス回しで魅了したマジックの掛け合いは、味わいがあった。

 このビデオ映像に先立って、ド軍がブルワーズを破ってWS対戦相手に決まると、ボストンでは「Beat LA」のスローガンが一斉に広まった。売店には「Beat LA」がデザインされたWS記念Tシャツが並び、23日、フェンウェイパークで第1戦が行われると観客は「Beat LA!」を連呼して応援。年配のファンは、30年以上前のTシャツを引っ張り出し、若い世代は、NBAでボストン・セルティックスとLAレイカーズがライバルとしてしのぎを削った80年代のストーリーを、両親から聞かされることになる。米メディアによると、「Beat LA!」の掛け声は、勝てば、NBA決勝でレイカーズが待ち受けていた1982年。フィラデルフィア76ersと対戦した東地区カンファレンス決勝戦が発祥と言われる。その年、涙を飲んだセルティックスは2年後、レイカーズを破って優勝。以後、80年代の黄金期は、周知の通りだ。

 1916年以来となった両球団の顔合わせで蘇った「Beat LA」。その原点に辿る“バードVSマジック”の試合前映像は、2つの都市が共有するプロスポーツの歴史を感じさせる粋な演出だった。

フリーランス・スポーツライター

89年産經新聞社入社。サンケイスポーツ運動部に所属。五輪種目、テニス、ラグビーなど一般スポーツを担当後、96年から大リーグ、プロ野球を担当する。日本人大リーガーや阪神、オリックスなどを取材。2001年から拠点を米国に移し、05年フリーランスに転向。ボストン近郊在住。メジャーリーグの現場から、徒然なるままにホットな話題をお届けします。

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