ニュースは耳から。欧米若年層の間で急成長を続けるニュース分野のポッドキャスト利用

ポッドキャストでニュースをチェックする人が欧米を中心に急速に増えています

日々溢れるようにニュースが流れてくる中、みなさんはどのように自分が求めるニュースを取得していますか?

Yahoo!ニュース、LINEニュース、スマートニュース、ニューズピックスなど、ニュースキュレーションサービスが登場して多くの人が利用していると思いますが、一つ一つの記事を読むのはどうしても時間がかかってしまいます。自分の興味あるテーマについての重要なニュースと、なぜそのニュースが重要かをコンパクトに知りたいという層にとって、欧米を中心にポッドキャストを利用する人がここ数年の間に急激に増えていることをご存知でしょうか?

右肩上がりを続けるポッドキャスト市場、中でも成長顕著なニュース系ポッドキャスト

米国内の週次、月次のポッドキャスト視聴者数 (エディソン・リサーチ調べ)
米国内の週次、月次のポッドキャスト視聴者数 (エディソン・リサーチ調べ)

エディソン・リサーチという調査会社の調べによると、米国では毎月9,000万人がポッドキャストを利用し、その数は2015年から倍増したとされています。車の運転中、ジョギングや家事をしながらでも耳から情報収集ができる便利さもあり、欧米では若年層を中心に急速に広がっているようです。

特にニュース分野に関する調査を行った英オックスフォード大学ロイター・ジャーナリズム研究所の調査によると、ニュース分野のポッドキャストは2019年に全世界で12,000もの新しい番組が誕生し、前年比32%の勢いで成長しているそうです。

過去2年で急拡大するポッドキャスト番組数とニュース分野で特に広がりを見せる利用動向
過去2年で急拡大するポッドキャスト番組数とニュース分野で特に広がりを見せる利用動向

ポッドキャスト市場全体で見るとトークショー、フィクション、ドキュメンタリーなども人気ジャンルで、その中でニュース系ポッドキャストの比率は実は6%とまだそこまで大きな存在ではありません。ただ消費動向のデータを見た際、ニュース系ポッドキャストを聴く人は米国で21%、イギリスで16%、フランスで34%など、高い需要があることが特徴的と言えます。

近年急速に増えつつあるニュース分野のポッドキャスト(米国、英国、オーストラリア、フランス、スウェーデン)
近年急速に増えつつあるニュース分野のポッドキャスト(米国、英国、オーストラリア、フランス、スウェーデン)

こうした成長の火付け役になったのがニューヨーク・タイムズが2017年1月に開始した人気ポッドキャスト番組「The Daily(ザ・デイリー)」です。毎朝20分程度、一つのトピックについてホストと記者とのやり取りを通じて掘り下げるスタイルの番組は今では毎日200万人が視聴するほどに成長しています。ニューヨーク・タイムズに触発されるようにその後ワシントン・ポスト、フィナンシャル・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、ガーディアン、エコノミスト、米公共ラジオ局であるナショナル・パブリック・ラジオなどが、過去2年の間に次々と平日配信のニュース番組をスタートさせています。

ニュースの要約を紹介するサービス、「サマリー・アズ・ア・サービス」とは

既にご紹介した大手メディアのニュース系ポッドキャストのトレンドを踏まえ、今回ご紹介したいのは様々なメディアからの注目ニュースのダイジェストをコンパクトに届ける、というニュースの要約分野のポッドキャスト活用です。

米国テック系ニュースのまとめを毎日15分程度のポッドキャストで要約する「Techmeme Ride Home (テックミーム・ライド・ホーム)」という番組は、2018年にスタートした比較的新しいサービスで、シリコンバレーのテック系の起業家、エンジニア、投資家など、3万人以上が毎日帰宅時の通勤時間中などに聴いている人気番組です。平日には毎日米国東部時間の17:00に配信され、その日一日に話題になったテック系の記事のポイントと解説を15分程度のダイジェストにして紹介する内容です。

Techmeme(テックミーム)とは、2005年に元Intel勤務のエンジニア、ゲイブ・リベラ(Gabe Rivera)氏により個人のプロジェクトとして始められた、アルゴリズムの技術を活用して注目のニュースを集めて掲載するニュースサイトです。多くの業界人に閲覧されるテックニュース・アグリゲーション・サイトとして、その人気と影響力を誇っているサイトですが、ポッドキャストでは注目の記事がテンポよく紹介されることが人気の秘密です。

何故タイトルに「ライド・ホーム(Ride Home)」とつけられているかというと、ポッドキャストが始まった2018年3月には、既にニューヨーク・タイムズが提供している人気ポッドキャスト番組 「The Daily(ザ・デイリー)」が朝に配信されていたからです。競争を避けるために、帰りの通勤時間を狙った、とのことです。

サービスとしての要約

「テックミーム・ライド・ホーム」を運営しているのはライド・ホーム・メディア社と言う会社ですが、ホームページの紹介欄にはこう書かれています。

「ライド・ホーム・メディア社は、最新のニュースを把握しておきたい忙しい人々のために、毎日のニュースポッドキャストを配信します。つまり、サービスとしての要約(サマリー・アズ・ア・サービス)です*。」

出典:ライド・ホーム・メディア社ホームページより
  • 英語では「tl;dr as a service」と書かれています。「tl;dr」とはテック業界のスラングで、Too Long, Didn’t Read(長すぎて読まない)という意味で、要約をする際にも使われる表現です。

同社は2019年4月には来年の米大統領選挙を見据え、「Election Ride Home(エレクション・ライド・ホーム)」という新しいポッドキャストを水平展開する形でスタートさせています。大統領選挙は長期間に渡りメディア業界を挙げてニュースが飛び交う時期であり、この選挙関連の注目記事の要約サービスは既に人気番組に成長しています。

さらに先日、「Celeb News Ride Home(セレブ・ニュース・ライド・ホーム)」という芸能、エンタメニュースに特化したポッドキャストをスタートさせました。フォーマットは全く同じで、注目ニュースをピックアップし、パーソナリティが要約、解説を届ける、というものです。もちろん配信時間は夕方5時、帰宅の通勤時間を狙っての戦略です。

ライド・ホーム・メディア社は同時に、100万ドル(約1億800万円)の資金調達をしたこともリリースで明らかにしています。「テックミーム・ライド・ホーム」のホストであり、ライド・ホーム・メディア社の共同創業者でもあるブライアン・マッカラ氏は、調達した資金を活用して今後あらゆるニッチなトピックで同じような番組を展開していく意気込みを語っています。例えばゲーム、金融、メディア、或いはスニーカーなどが挙げられてますが、あらゆるトピック、或いは地域などのカテゴリでの展開も視野に入れているようです。

マッカラ氏は、こうした要約サービスは3万人程度のファンがいれば広告収益などでクリエータにも報酬を払うことが出来ると指摘します。メディアとして発見してもらうのが難しい立ち上げ期の支援、運営ノウハウなどを提供することで、専門性と情熱を持っているクリエータのメディア運営の支援を目指しているそうです。

ニュースの要約、或いは興味のあるトピックについてのニュースの取捨選択を行う「キュレーション」というテーマについては、以前にも本連載でいくつか事例を取り上げてきました。今回ご紹介した帰宅の通勤時間を狙った「ライド・ホーム」の特徴としては、毎日の「習慣化」という点で視聴者のロイヤリティがとても高まる試みである点にとても可能性を感じます。

今後1年後、2年後、ニュースの耳から消費の動向、そしてこうしたニッチ分野のニュースまとめサービスがどのように成長していくのか、或いは国内でどのように広がっていくことになるのか、注目したいと思います。

カバー画像:Corey Agopian on Unsplash