テックニュースの老舗定番サイト『テックミーム(Techmeme)』に学ぶ厳選記事のキュレーション

テックニュースの老舗定番サイト『テックミーム(Techmeme)』

海外のテクノロジートレンドに敏感な方であれば『テックミーム(Techmeme)』というサイトの名前を聞いたことはあるのではないでしょうか。ただ、英語のサイトであることもあり、頻繁にチェックしている人は、それほど多くないかもしれません。

『Meet The Man Whose Site Mark Zuckerberg Reads Every Day(マーク・ザッカーバーグが毎日読むサイトの創業者に聞く) 』(BuzzFeed 2017/3/19

先日BuzzFeedの英語版で創業者のインタビューが掲載されていたこともあり、関連の記事やサイトを調べみたところ、テックミームのシリコンバレーを中心とするテック業界における影響力に改めて驚きました。またテックミームのような、ある特定のトピックに関する厳選した記事のタイトルやリンクを紹介するサービスの可能性についても、多くのヒントを得ることが出来ました。今回は、そのような可能性に関して少し触れてみたいと思います。

まずテックミームについて簡単にご紹介すると、2005年に元Intel勤務のエンジニア、ゲイブ・リベラ(Gabe Rivera)氏により個人のプロジェクトとして始められた、アルゴリズムの技術を活用して注目のニュースを集めて掲載するニュースサイトです。その後、シリコンバレーの業界人の中で話題となり、記事の抽出にも2008年からはアルゴリズムだけでなく専任のエディターによる編集をスタート、2013年からはひと目でニュースの内容が分かるように、タイトル編集もすることになりました。その結果、今日に至るまで多くの業界人に閲覧されるテックニュースサイトとして、その人気と影響力を誇っています。

テックミームのサイトを見ると、テキストが中心のデザインで、地味と言わざるを得ません。独自記事は1つも書いておらず、専用アプリ、eメールのニュースレターもなく、Twitterでの情報発信も決して積極的に活用しているとは言えません。ただ、毎日大量に生み出される何千ものテック系記事の中から、一日大体30~40本の記事を抽出し、注目度、時系列などの順に淡々と更新がされていきます。紹介している記事の類似記事へのリンク、また業界著名人でその記事をシェアをしている人の投稿へのリンクも、各記事毎に併せて閲覧することができます。

シリコンバレーの投資家、起業家、経営者、ジャーナリストなどは、テックミームのサイトをブックマークし、一日に何度もチェックをするという人も少なくないと言われています。そのような人の中には、マーク・ザッカーバーグ氏(Facebook)、サンダー・ピチャイ氏やラリー・ペイジ氏(グーグル)、ジェフ・ウェイナー(リンクトイン)などの著名経営者も含まれているとのことです。

今日、数多くのニュースサイト、ニュースキュレーションサービス、そしてTwitterやFacebookなど、ニュースにアクセスする手段は多様化し、フェイクニュースなどが問題視される時代において、改めて10年間継続して人気を誇っている老舗サイトからどんなことが学べるのでしょうか?今回は3点、注目点を挙げてみたいと思います。

【1】トピックを絞り、読者にとって本当に価値あると評価されるコンテンツを、編集者の目利き力を活かし厳選すること。

スタートアップ起業の資金調達、買収、新しいプロダクトリリース、経営者のスキャンダルなどのスクープ記事は、似たような内容の記事が様々なニュースサイトで30から40バージョンも存在することがあります。そんな時には最初に報じた独自記事、或いは包括的にまとめられ読者にとって有益であると思われる記事を厳選しているとのことです。ただでさえ情報洪水に翻弄されがちな昨今、サイト1ページに見るべきニュースがシンプルにまとめられていて、常時更新されることの価値は高いといえます。

【2】クリックベイト(ユーザーがついクリックしてしまうような釣りタイトルや煽りタイトル)の排除、むしろクリックをしなくても読むだけでおおよその内容を理解してもらえるようなタイトルの編集

例えば先ほど紹介した『マーク・ザッカーバーグが毎日読むサイトの創業者に聞く』というタイトルは、Techmemeで紹介された際には、以下のようにタイトルがリライトされています。

テックミーミがいかにスケール追い求めることなく、ほとんどのメディア企業が陥る罠に適応することなく、影響力を持つテック業界の読者にとってのアジェンダ設定をし続けているか(How Techmeme continues to set the agenda for influential tech readers, without chasing scale or adopting the trappings of most media firms)』

内容は2の次でトラフィックを稼ぐためのサイト設計は結局は読者の信頼を失い、メディア、媒体にとっても不利益をもたらします。結果、テックミームはサイトそのもののページビューはそれほど大きくなくとも、影響力を持ったテック業界のエリートに読まれている、という信頼を生み、独自広告の継続的な出稿を可能にしています。

【3】過度なPV(ページビュー)獲得を目指さなくとも収益を確保することを可能にしている広告モデル

テックミームの収益モデルはサイト内に掲載されている独自の広告収益により成り立っています。例えばスポンサー記事枠として、スポンサー企業が独自に作成した記事をサイト内で紹介するには月間7000ドルから17000ドルの費用がかかります。その他には求人広告、イベント・カンファレンスの広告枠(ともに2900ドルから)があります。テックミームのホームページには現在専属のスタッフとして13名が紹介されていますが(メディア業界に特化した姉妹サイト(Mediagizer)、政治特化サイト(Memeorandum) などの担当者含む)、広告による収益で十分に経営が行われており、今後もベンチャーキャピタルなどからの出資を受け付ける予定もないとのことです。

いかがでしたでしょうか?常に変化が激しいオンラインメディア運営を運営する企業、そして情熱を持っている特定のトピックについてのオンラインでの情報発信を考える個人にとっても、テックミームのメディア運営から学ぶことが出来る点があるのではないかと思います。

TechCrunchの記者であるJosh Constine氏はTwitterでのコメントで「あらゆるトピックに関するTechmemeがあればいいのにと常々思う」と語っています。「ニッチな分野に関するTechmemeのようなサイトの可能性」について、どのようにしたらそのようなことが実現できるか、今後更に深掘りしていきたいと思います。