Yahoo!ニュース

18歳選挙権という切符

一井暁子一般社団法人つながる地域づくり研究所 代表理事

18歳は、まだ子ども?それとも、もう大人?

あなたはどっちだと思いますか?

子どもだ、と言う人の考えは、18歳では、まだ世の中のことも分からないし、大人が守ってあげないといけない存在、といったことでしょうか。

でも、私たちの国は、そう考えてはいません。

開会中の通常国会で、選挙権を持つ年齢を、18歳に引き下げる、公職選挙法改正案が成立する見通しです。早ければ、来年夏の参議院選挙から、「18歳選挙権」がスタートします。

選挙とか政治とか言われても、よく分からないし、関係ないんじゃない?って思う?

でも、飲酒や喫煙は20歳から、と決めているのは法律です。

高校で教える内容や、誰が教えるか、学校の場所はどこにするか。どれも国や都道府県などが決めています。高校の授業料の無償化も、つい5年ほど前からの制度で、その間にも内容が変わっています。

部活の指導者は先生なのか、外部から雇ってもいいのか、遠征費はいくらもらえるのか。そんなことも同じです。

教室や体育館を、いつ、どのくらい直すか、エアコンを付けるか。

大学入試の方法や内容をどうするか、どういう基準で評価するか、何回テストをするか。

どれも法律や条例、制度などで決められています。

逆に言えば、変えることができる、ということです。

変えるとしたら、実際に高校に通って、授業を受けたり部活をしたり、受験したりしている張本人の声が取り入れられた方が、より良いものになるはず、とは思いませんか?

18歳から選挙権を持つようにするのは、世界的な流れです。

国政よりも身近な、地方の自治体の選挙では、16歳にしている国もあります。

その理由は、たぶん、2つ。

1つは、先ほど紹介したような、今まさに制度やサービスを使っている人たちの声を反映した方が、より良いものになるから。

現在使っているものだけではなく、これから先に関わることもあります。

国や自治体が、今、しようとしている借金は、これから30年も50年もかけて返すのだし、年金だって、今もらう人の立場で考えるか、これからお金を払って、もらうのはずっと先になる人の立場で考えるか、で、制度の組み立ては、相当違ってきます。

だから、できるだけ若い世代の声を届けられるしくみにしよう、とするのです。

もう一つは、時代の変化が、速くて大きいから。

新しい時代に、日本やそれぞれの地域が対応し、成長し、問題を解決していくためには、上の世代にはない感覚や、違う視点が必要です。

それを持っている、より若い世代の参加が求められている、というわけです。

民間企業の商品やサービスが、ユーザーの声や感覚を反映して、改善されていくように、社会の制度やサービスにも、ユーザー・イノベーションが必要なのです。

選挙権は、そのための切符。

投票するって、そういうことです。

一般社団法人つながる地域づくり研究所 代表理事

1970年生まれ。東京大学法学部中退。地中美術館(香川県直島)、岡山県議会議員などを経て、2013年、ローカル・シンクタンク「一般社団法人つながる地域づくり研究所」(岡山県岡山市)を設立。自治体と民間と住民をつなぎ、地方創生やまちづくりの現場を伴走支援する。「官民連携まちづくり推進協議会」「文化と教育の先端自治体連合」など、共通するテーマに取り組む、全国の自治体団体の事務局も務める。地域や自治体、企業の声を聞き、「しごとコンビニ」や「放課後企業クラブ」などの新たなしくみを生み出している。

一井暁子の最近の記事