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血液型は、何歳から調べることができますか?

堀向健太医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。
(写真:イメージマート)

新学期前後は特に、『血液型』に関する質問が増える時期です。

そもそも、いまだに学校や園の書類に血液型を記入する欄があること自体が問題のような気もしますが、現在は、輸血の可能性がない状況で『血液型を知っておく』ために行なう検査は一般的に行われていませんし、保険も効きません

『緊急の輸血があったら心配』という方もいらっしゃいますが、医療機関では、緊急輸血の際でも必ず血液型を検査で確認し、輸血をして問題がないかもしっかり調べています。

ですので最近は、生まれたときに血液型を検査したりしなくなりました。

いや、それでも知りたいという方もいらっしゃいますよね。

小さいときの血液型検査をしないのは、結果が不正確になりやすいことにも理由があるのです。

そうすると持ち上がってくるのは『何歳から血液型を検査できますか』という質問です。

中には『赤ちゃんのときから大きくなってくると血液型が変わることがある』と思っている方もいらっしゃいますが、もちろん、生まれてから血液型が変わることは骨髄移植など特殊な状況をのぞき、ありません。

ではなぜ、小さいときの血液型検査は不正確なのでしょうか。

そして何歳から血液型の検査をすると良いのでしょうか。

今回はそんな血液型の話を簡単に解説してみたいと思います。

ABO血液型はどのように行う?

photoAC
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血液型で有名なのはABO血液型で、オモテ試験とウラ試験があり、基本的に2つの検査を必ず行います。

そして、血液のなかには血球成分と血清成分があり、遠心分離機でふたつに分離させることができます。

ABO血液型検査には、赤血球と血清が使われます。

イメージとしては、ヨーグルトの塊部分が赤血球、水分として出ている部分を血清といえばいいでしょうか。

そして、赤血球がオモテ検査に、血清の成分である免疫グロブリンがウラ検査に使われます

いらすとやとイラストACの素材から筆者作成
いらすとやとイラストACの素材から筆者作成

このふたつの検査が一致すると、『血液型』が確定します。

違う血液型を輸血すると、大変なことが起こるので、ウラ試験で『確認検査』、すなわち検算をしているイメージといえばいいでしょうか。

では、ここまでわかると、小さいときに血液型検査をすすめない理由がわかってきます。

どれくらいの年齢から血液型を調べることができる?

生後4カ月未満の子どもに対してのウラ試験は、お母さんからの抗体の影響や、免疫グロブリン(抗A抗体や抗B抗体といいます)の機能が低いことから、きちんとした検査結果が得られないことが多いことがわかっています。

つまり、オモテ試験とウラ試験が一致しないことがあるわけです。

オモテ試験とウラ試験の一致率は、生後4ヶ月未満で56.6%、生後4ヶ月から1歳で76.5%、1歳を超えてようやく92.2%、2歳で97.6%になります[1]。

イラストAC、シルエットACの素材と文献1を参考に筆者作成
イラストAC、シルエットACの素材と文献1を参考に筆者作成

そこで、生後4ヶ月未満の子どもに対しての血液型検査は、オモテ検査のみの判定でよいと厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」に記されています[2]。半数くらいしか確認試験で一致しないわけですからね。

今後、オモテ検査のみで良い年齢が1歳未満まで延長される可能性もあります。それは、一致率を見ればおわかりになるかと思います。

これ以外にも理由はあるのですが、『小さいときの血液型検査』は確認検査が難しいことなどあり、行いにくいということです。

大きくなってから血液型を知りたいときはどうすればいいでしょう

PhotoAC
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では、大きくなってから、血液型を知りたい場合はどうすればいいでしょうか。

いい方法があります。

16歳からであれば献血が可能になります。

他の方に善意の血液を贈る献血は、輸血を目的としていますから、医学的に必要な検査として血液型も検査します。さらにはB型・C型・E型肝炎検査や糖尿病関連検査なども知ることができます[3]。

さまざまな事情で献血ができない方もいらっしゃるかもしれませんが、血液型を知りたい方は、献血を考えるのも一つの方法ということですね。

血液型の検査が自費になることをお話しすると、残念な表情になる保護者さんもいらっしゃいます。この記事がなにかのお役に立てば嬉しく思います。

【参考文献】

[1]日本輸血細胞治療学会誌 2020; 66:613-8.

[2]輸血療法の実施に関する指針(改定版)厚生労働省医薬食品局血液対策課

2022年5月5日アクセス

[3]検査サービス 東京都赤十字血液センター

2022年5月5日アクセス

医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5500人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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