Yahoo!ニュース

子どもに日焼け止めを使ってもいいですか?

堀向健太医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。
(写真:アフロ)

日差しが強くなってきました。

日本では6月から8月に最も紫外線が強くなることもあり、子どもに日焼け止めを使ってもいいですか?と外来で尋ねられることが増えています。

紫外線は、見た目の老化(光老化)の8割に影響し、皮膚がんのリスクにつながることは広く知られており、心配になる方も多いのでしょう[1]。

一方で、2020年に、JAMA(米国医師会雑誌)に日焼け止めの成分が血液の中から検出されるのではないかという報告[2]があり、当時、心配になるような報道もみかけました。

そこで今回は、特に年齢の低いお子さんへの日焼け止めの選択に関し、簡単に解説してみたいと思います。

そもそも、皮膚の薄い子どもは紫外線の影響を受けやすい

写真:アフロ

そもそも乳幼児期は、皮膚を防御する角層が大人よりも薄く紫外線の影響を受けやすい年齢です。特に午前10時から午後2時までは、日差しが強いために紫外線に対する注意喚起がされています。

しかし生後6ヶ月未満の乳幼児に最適な日焼け対策は、日陰に入る、すなわち木陰やベビーカーで紫外線を防ぎ、そして(透けて裏が見えない程度の)薄手の長ズボンや長袖のシャツを着て、つばのある帽子をかぶるとよいとされています[3]。

というのも、生後6ヶ月未満の子どもへの日焼け止めは、例えばかぶれなどのリスクが高いために勧められていないのです。

『こども向け』の日焼け止めだから大丈夫…ではないようです

イラストACより
イラストACより

FDAでも、生後6ヶ月以降であれば、日焼け止めのメリットのほうが大きいとして使用が推奨されています。

そのなかで、日焼け止めが皮膚から吸収されるという話題がでてきていたのです。

こども向けと表示されていればよいというものではないようです。

たとえば、「子ども向け」とされている日焼け止め製品533種類のなかにアレルギーになりやすい成分を調べ、値段との関連を評価した研究があります。

すると、こども向けとしてもアレルギーになりやすい成分を多く含む製品はあり、含まない製品よりも安価である傾向だったという結果でした[4]。

紫外線散乱剤である酸化亜鉛や酸化チタンは、高価であることもあり、そのような結果になったのだろうと考えられます。

紫外線散乱剤、という言葉は耳慣れないかもしれません。

日焼け止めが体へ吸収されることに関しては、その成分に配慮する

日焼け止めは大きくふたつの成分に分かれます。

一つは、紫外線吸収剤であり、スポンジのように太陽の有害な光を吸収します。

もう一つは紫外線散乱剤であり、太陽の有害な光線を防いだり反射させたりし、盾のように機能します[5]。

イラストACの素材から筆者作成
イラストACの素材から筆者作成

今回の話題に上がっている日焼け止めに関し、皮膚から吸収されるので安全ではないとFDAが結論したわけではありません。あくまで、今後さらに調査を進めるようにとしています。

ですので、紫外線吸収剤の入った日焼け止めを使ってはいけない、というわけではありません。

ただ、それでも心配な方もいらっしゃるかもしれません。

この、皮膚から吸収される日焼け止めは、紫外線吸収剤(さまざまな化学物質)の話です。

そしてFDA は、紫外線散乱剤である酸化亜鉛と酸化チタンの2種類を "一般的に安全で効果的な“日焼け止め成分として認定していて、子どもであったり敏感肌である場合は、酸化亜鉛や酸化チタンの使用を優先したほうが良いとしています[6]。

そして米国小児科学会は、生後6ヶ月以上であれば、SPFという紫外線をどれくらい防ぐかを表す値が15以上の日焼け止めを使い、ほとんどの人はSPF15か30で十分としています[7]。

SPFが高ければいいというわけでもないのですね。

ざっくりまとめて私は、生後6ヶ月までは日焼け止めは使わずに紫外線が強い時間帯の外出を避けて、どうしても外出する場合は長ズボンや長袖として屋根のあるベビーカーを使うこと、生後6ヶ月以上では日焼け止めを使うこともお話しています。

そして日焼け止めは、SPFが極端に高いものではなく(たとえば20くらい)のもので、実際に塗ってもかぶれず、もし心配ならば紫外線吸収剤、すなわち化学成分が少ないノンケミカル製品を選ぶと良いでしょうと付け加えています。

さて今回は、子どもへの日焼け止めの話をしてみました。

この記事が、これから強くなる日差しに対策するためのなにかの参考になれば幸いです。

【参考文献】

[1]Molecules (Basel, Switzerland) 2014; 19:6202-19.

[2]Jama 2020; 323:256-67.

[3]Should You Put Sunscreen on Infants? Not Usually(FDA)

2022年5月4日アクセス

[4]Dermatitis 2018; 29:81-4.

[5]Is Sunscreen Safe?(フィラデルフィア小児病院)

2022年5月4日アクセス

[6]Shedding More Light on Sunscreen Absorption(FDA)

2022年5月4日アクセス

[7] Sun Safety: Information for Parents About Sunburn & Sunscreen(米国小児科学会)

2022年5月4日アクセス

医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5500人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

堀向健太の最近の記事