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花粉症に、鼻にスプレーする市販薬を使ってもいいですか?

堀向健太医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。
(写真:イメージマート)

スギ花粉症の季節になりました。

アレルギーを専門としている私の外来は花粉症の症状が強くなっているお子さんも多くなっています。

花粉症の鼻の症状が強くなると、集中力が低下し成績が落ちたりすることが知られていまいますし[1]、適切な治療が必要となります。一般的に、眠気や副作用が少ない飲み薬の抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬(鼻にスプレーする)を処方します。

そしてご家族からも、ご自身の花粉症に関して尋ねられることも増えています。

たとえば、『私(保護者さん自身)は、市販の点鼻薬を使ってもいいですか?』というご質問です。

点鼻薬は、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬、血管収縮薬にざっくり分けられます。その中でも血管収縮薬に関しては注意が必要です。

そこで今回は、血管収縮薬に関して簡単に解説したいと思います。

血管収縮薬を使った点鼻薬は即効性があるものの、効果は早くなくなる

花粉症によるアレルギー性の鼻炎は、鼻づまりや鼻水、くしゃみやかゆみを起こします。

そして血管収縮薬は、鼻の粘膜にある血管を締めて鼻づまりを改善させます(鼻水やかゆみにはほとんど効果はありません)。

すみやかに鼻づまりを改善させるのですが、数時間で効果が失われるのです。ですので、繰り返し長期間使用しがちな薬といえます。

血管収縮薬は、長く使い続けると『薬剤性鼻炎』を起こし、かえって鼻づまりを悪化させる

写真:イメージマート

しかし、続けて使用すると効果が続きにくくなり、血管はリバウンドして拡張し、かえって鼻の粘膜が強く腫れる『薬剤性鼻炎』を起こす可能性が高くなります。薬剤性鼻炎は、早い場合は3日、最長4〜6週間の使用で発生します[2]。

ですので、血管収縮薬の使用は10日間までと記載されています[3][4]。

血管収縮薬は即効性があり、しかも安価な製品があるので手に取りやすいのですが、『長く使わない』ように気をつけなければならない、あくまで緊急用の薬といえるでしょう。

市販薬に含まれる血管収縮薬にはどんな成分がある?

提供:イメージマート

血管収縮作用のある点鼻薬の成分としては、ナファゾリン、オキシメタゾリン、トラマゾリン、テトラヒドロゾリン/プレドニゾロンがありますが、市販薬にはナファゾリンやオキシメタゾリンがよく使われています。

もし現在、市販薬を長く使っておられる方は、その成分を確認しておくと良いでしょう。

薬剤性鼻炎は、ステロイド点鼻薬などで治療されますが[5]、一時的に鼻づまりの症状が強くなることもありますので、医師と相談して治療を行っていくことをおすすめします。

小児でも血管収縮薬は使用されています。

しかし眠気や動悸を起こすことがありますし、2歳未満の乳幼児には使ってはいけない(禁忌)とされています[4]。

私は小児に対して血管収縮薬の点鼻薬を使用していませんが、使用する場合は耳鼻咽喉科の医師に相談されたほうが良いでしょう。

飲み薬の血管収縮薬は、病院の処方薬として使用される

なお、飲み薬の抗ヒスタミン薬と血管収縮薬の配合剤(フェキソフェナジン塩酸塩/塩酸プソイドエフェドリン配合剤; 商品名ディレグラ)が、処方薬として使用できるようになっており、ガイドラインでも標準的な治療となっています[4]。

飲み薬の血管収縮薬は点鼻薬に比べてリバウンドは起こりにくいと考えられています。保険適用のある12歳以上の方はかかりつけ医に相談してみると良いでしょう[6]。

さて今回は、血管収縮薬の点鼻薬による『薬剤性鼻炎』に関して簡単に解説いたしました。

市販薬を使用していて鼻づまりがひどくなり、受診された場合は医師に申し出てくださいね。

[1] Journal of Allergy and Clinical Immunology 2007; 120:381-7.

[2] J Allergy Clin Immunol 2008; 122:S1-84.

[3] J Investig Allergol Clin Immunol 16(3):148–155

[4] 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会: 鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2020年版(改訂第9版)

[5] BMJ Case Rep 2021; 14.

[6] 鼻アレルギーフロンティア 2017; 17:23.

医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5500人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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