水痘(水ぼうそう)は、『水痘・帯状疱疹ウイルス』というウイルスによる感染症です。

以前は年間100万人以上の方が罹っていたのですが、2014年に1歳から3歳未満のお子さんに定期接種が導入され、感染する子どもが大きく減りました[1]。

しかしいまだに『水痘(水ぼうそう)は、罹っている子どもの家にいってもらったほうが良い』という趣旨の意見もみかけます。

この『水痘に罹っている子どもの家に集まる』という方法は、『水痘パーティー(pox party)』などと言われている手法ですが、決して子どもたちにとって負担の少ない方法ではありません[2]。

そこで今回は、水痘の予防接種に関してと、それに伴って成人で思いがけない問題も起こっていることをかんたんに解説しようと思います。

水痘(水ぼうそう)の合併症は少なくない。

イラストAC
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たしかに、麻しん(はしか)ほどには多くはありませんが、水痘の合併症はすくなからずあります。

皮膚の感染症である膿痂疹(とびひ)、脳炎や肝炎などを起こすことがあり、妊娠初期に罹ると流産や奇形などの問題を起こすこともあります。特に、免疫が抑えられるような病気や薬を使っている方にとってはとても重篤になることも珍しくないのです。

そして水痘は、顔などに跡が残すことも少なくありません。

さらには、そのような合併症を回避できたとしても、ウイルスは人間の神経に潜伏感染して居座ることがわかっています。そして年齢が上がると、一時的にウイルスが活性化し神経にそって皮膚や粘膜に水疱などをつくる、『帯状疱疹』という病気を発症することがあります。

帯状疱疹は50歳以上、特に70歳代で発症率が高くなり、80歳までに3人に1人が経験するという報告もあります[3]。

そして全員ではありませんが、ひどい痛みを長期間残すことがあり、帯状疱疹後神経痛とよばれています

すなわち、まともに水痘にかかると『あとからの帯状疱疹のリスク』を、その後の人生で負い続けなければならなくなるということです。

そこで、2014年に水痘ワクチンが1歳から3歳未満の子どもに対し2回接種をする定期接種になり、そしてそれ以降水痘にかかるお子さんが大きく減ったことになります。

しかし最近、新たな問題がもちあがってきました。

大人での帯状疱疹が増えています。

イラストAC
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それは、水痘の流行が減ってきたことからナチュラルブースター効果(周囲で感染症が流行することで抗体が上昇する)が弱まり、成人の帯状疱疹が増えてきていることです[4]。

いってみれば、水痘に苦しむひとの体を犠牲にして、過去水痘にかかった、もしくは予防接種をして抗体を持っているひとの抗体をブースター効果で大きく上げて帯状疱疹を防いでいたのです。

その効果が弱まってきているため、水痘はこどもの疾患だと軽く見ていると、実は水痘に引き続きおこる帯状疱疹に苦しむのは成人の可能性があるのですね。

しかし、当然のことながら、成人の帯状疱疹をへらすために子どもたちが犠牲になる必要はないでしょう。

50歳以上の方に、(自費ですが)追加の予防接種が推奨されるようになってきました

イラストAC
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そこで、50歳以上の成人に対して、水痘帯状疱疹ワクチンを追加接種することで帯状疱疹のリスクを減らすことが推奨されるようになりました[5]。

帯状疱疹予防として、2016年以降、公知申請(海外では認められているが日本では未承認の医薬品について科学的根拠が十分と認められた場合承認が可能となる制度)が認められ50歳以上で接種できるようになりました。

また、2020年1月に新しい帯状疱疹“サブユニット”ワクチンが使用できるようになっています。

現状では自費ではありますが、今後考えておくべき予防接種であり、かかりつけ医に相談しておくと良いでしょう。

昔、私も水痘後に小脳炎をきたしたお子さんなどを診療したことがあります。

水痘パーティーなどの参加はおすすめできませんし、防ぐことのできる疾患は事前に予防接種で予防しておいたほうがお子さんに対する負担は格段に低くなります。

この記事が予防接種にむかう保護者さん、そして50歳以上の方々の気持ちに助けになることを願っています。

[1]Vaccine 2018; 36:5977-82.

[2]Infectious Diseases in Children 2016; 29:8.

[3]N Engl J Med 2013; 369:255-63.

[4]J Dermatol Sci 2018; 92:89-96.

[5]N Engl J Med. 2005; 352: 2271-2284.