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新型コロナワクチンと、他のワクチンの接種間隔はどう考えればいいの?

堀向健太医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。
(写真:アフロ)

世界で10億回以上の新型コロナワクチンが接種されてきて、今後さらに普及が進んでくる情勢です(※1)。

そしていよいよ5月の連休明けから日本へも新型コロナワクチンが毎週約1000万回分ずつ供給され(※2)、6月末までに高齢者約3,600万人の2回接種分を配布できる量が供給される見込みとなりました(※3)。

(※1)新型コロナ ワクチン接種 世界で10億回超える

(※2)医療従事者へのワクチン接種

(※3)新型コロナワクチンの供給の見通し(厚生労働省)

一方で、WHO(世界保健機関)から麻疹(はしか)が流行し始めた国や地域があるとの報告がありました(※4)。

新型コロナワクチンだけでなく、他のワクチンとの接種間隔に配慮していく必要があるということですね。実際に、尋ねられることも増えてきています。

では、新型コロナワクチンの接種間隔や、他のワクチン接種に関して、どのような配慮が必要なのでしょうか? 簡単にまとめてみたいと思います。

(※4)ワクチン、コロナだけじゃない はしか流行WHO危機感

ファイザー社とモデルナ社の新型コロナワクチンの接種間隔は異なる

写真:ロイター/アフロ

現在日本に導入されているワクチンは、ファイザー社のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンです。そしてモデルナ社のmRNAワクチンが大規模集団接種会場へ導入予定という報道がありました(※5)。

(※5)ワクチン接種 “大規模な会場はモデルナ製の見通し” 河野大臣

この2つのワクチンは同じようなメカニズムで作成されていますが、臨床研究で行われた量や間隔が異なり、互換性に関しても現状では保証されていません。つまり、1回目をファイザー社で接種した場合は、2回目もファイザー社のワクチンを接種する必要性があります(表)。

新型コロナワクチンと、他のワクチンを同時接種できますか?

写真:ロイター/アフロ

『新型コロナワクチンに関しては他のワクチンと前後2週間空ける』必要があり、同時接種はできません(※6)。

新型コロナワクチン以外であれば、ワクチンの同時接種は可能ですし、小児科ではごく普通の処置として行われています。

複数のワクチンを同時接種することで.それぞれのワクチンの有効性がお互いに影響することはないこと、それぞれの有害事象(ワクチン接種後に起こるすべての好ましくない事柄)、副反応(ワクチンと関連のある反応)の頻度が上がることはないことがわかっているからです(※7)。

(※6)新型コロナワクチン 予診票の確認のポイント Ver1.0 (令和3年3月26日版)

(※7)齋藤 昭彦. チャイルド ヘルス 2020; 23:638-41.

ではなぜ、新型コロナワクチンのみ、他のワクチンと前後2週間空けるのでしょう?

この理由は、新型コロナワクチンがまだ導入されたばかりのワクチンであるため、他のワクチンと同時接種したときの安全性と有効性に関する『データが不足』しているためです。

つまり、特別に危険だ、というわけではなく、あくまでデータが不十分だからということです(※8)。

(※8)Interim Clinical Considerations for Use of COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States(2021年4月27日アクセス)

では、生ワクチンを接種したあと、どれくらい空けて接種しなければならないでしょう?

写真:アフロ

2020年10月に、ワクチンの接種間隔に関して改正されています(※9)。

(※9)予防接種ルールが10月から変更 大事なポイントは接種間隔の変更と「ロタウイルス」の定期接種化

以前は、たとえば生ワクチンの接種後、どのワクチンでも接種間隔を4週間空けなければならなかったのですが、現行のワクチンの接種間隔は、生ワクチンや不活化ワクチンを接種翌日でも、生ワクチンでなければ他のワクチンの接種が可能になっています。

すなわち、以前は生ワクチンである麻疹ワクチンを接種すると4週間空けなければならなかったのですが、現在は2週間空ければ新型コロナワクチンを接種可能ということになります。

ややこしくなったので、まとめましょう。

1) 導入(予定)となっている新型コロナワクチンは2回接種です。そしてファイザー社のワクチンは3週間、モデルナ社のワクチンは2週間の接種間隔を開ける必要があります。

2) 新型コロナワクチンを接種する場合、その前後に他のワクチンを接種する場合は2週間開ける必要があります。

3) 麻疹ワクチンなどの生ワクチン接種後であるとしても、2週間開ければ新型コロナワクチンを接種することが可能です。

この記事が、皆さんの予防接種計画にお役にたつことを願っています。

2021/5/16追記。

CDCの基準が2021/5/14修正となり、新型コロナワクチンと他のワクチンの接種間隔を14日間空けなくてもよいことになったようです。

他のワクチンとの同時接種に関しても、新型コロナ以外のワクチンの接種が遅れることのリスクなどを考慮して、接種可能と判断を更新されたようです。

厚生労働省の推奨も今後変更になる可能性があります。

Interim Clinical Considerations for Use of COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States(2021/5/16アクセス)

(※※)アストラゼネカ社のワクチンに関してはmRNAワクチンではありません。今回はわかりやすさのために省略しました。

医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5500人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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