喘息やアトピー、食物アレルギーを持つ子どもの親が知っておきたい災害対策は?

(提供:アフロ)

大型の台風10号は各地に大きな爪痕を残しています。

鹿児島で開業されている医師からは、ホームセンター含め街のスーパーから様々なものがなくなり混乱がみられたとお聞きしています。

台風シーズンはこれからです。

そして、各地で続発する災害時には、アレルギーのあるお子さんたちは体調を崩しがちです。

最近、学会からもさまざまなパンフレットや情報が公開されており、とても参考になるものが増えてきました

そこで今回は、そのような情報の共有をしたいと思います。

喘息のこどもへの対応

災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレットより(日本小児アレルギー学会)
災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレットより(日本小児アレルギー学会)

喘息発作は、ダニや動物の毛などの刺激で起こる可能性があります(※1、2)。

また、台風時には、気候の急な変動がおこります。そして空気中に細かい花粉やカビが増えて喘息発作が起こる可能性があります(※3、4)。

(※1)Br Med J 1969; 2:723-6.

(※2)Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2018; 6(1): 101-7. e2.

(※3)Ann Allergy Asthma Immunol 2009; 103:220-4.

(※4)J Environ Public Health 2017; 2017:2793820.

一方で海外からの報告では、ロックダウン中は喘息発作が少なくなったことがわかっています。

受診控えとともに、集団生活が少なくなり感染症が減ったからかと推測されています。

しかし、皆さんも感じられているように、ステイホーム中に少なくなっていた喘息が再度増えてきています(※5)。もし喘息の予防薬を中断している方は、早めに再開して継続できるようにかかりつけ医と相談しましょう

(※5)Gupta A, et al. Lancet Respir Med 2020.

そして、現在使用している喘息の予防薬の吸入器が、電源を必要とするかどうか確認しましょう。

電源を要する吸入器(多くはネブライザー)の場合は、非常電源が必要になります。

そして、霧状の薬を大量に発生させるネブライザー治療は、エアロゾル(空気中に存在する細かい粒子のこと)を発生させます。新型コロナウイルスと同じ、コロナウイルスの1種が原因とされるSARSやMERSでもエアロゾルが感染源になることが報告されています(※6、7)。

学会からも『喘息発作に対するネブライザー使用時の注意喚起』がなされています(※8)。

(※6)Yu IT, et al. N Engl J Med 2004; 350:1731-9.

(※7)Adhikari U, et al. Risk Anal 2019; 39:2608-24.

(※8)COVID-19流行期における喘息発作に対するネブライザー使用時の注意喚起

ネブライザー治療に代わる方法として、『定量噴霧式吸入剤』がありますが、事前に医師から処方してもらう必要があります。かかりつけ医に相談しておきましょう。

定量噴霧式吸入剤の例(写真AC)
定量噴霧式吸入剤の例(写真AC)

『定量噴霧式吸入剤』を使用する場合は、スペーサーがあると効率的に吸入できます。

もし災害時に入手できない場合は、紙コップやペットボトルの底に穴を開け、スペーサーの代わりにできるでしょう。

スペーサーの一例(筆者撮影)
スペーサーの一例(筆者撮影)

アトピー性皮ふ炎のこどもへの対応

災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレットより(日本小児アレルギー学会の許可を受けて転載)
災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレットより(日本小児アレルギー学会の許可を受けて転載)

まだまだ汗をかきやすい時期です。

悪化したアトピー性皮膚炎には頻回に入浴したほうが、改善しやすいという研究結果もあり、皮ふを清潔にできない環境になると、アトピー性皮膚炎が悪化することがあります(※9)。

(※9)J Allergy Clin Immunol Pract 2020; 8:1014-21.

しかし、災害時にシャワーが使えない場合もあるでしょう。

その場合は、ウェットティッシュや濡らしたタオルで拭くという方法にならざるを得ませんよね。そういった自体に備えて、『お子さんの皮膚にあうウェットティッシュ』を探しておいたほうが良いでしょう。

ステロイド外用薬は普段と同程度、もしくは少し強めのものを使いましょう。

軟膏壺にはいった薬よりもチューブで処方をしてもらうと、保存性がよくなります。

保湿剤はお子さんの皮膚にあった市販品も探しておきストックしておくと良いでしょう。

食物アレルギーのこどもへの対応

災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレットより
災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレットより

食物アレルギーのお子さんへの対策として、表示義務がある7品目と表示推奨のある21品目があります。一時的にこれらに配慮した食品が手に入りにくい場合があるでしょう。

そのため、『ローリングストック』が勧められています。

ローリングストックとは、普段の食品を少し多めに買い置きして、古いものから消費しながら買い足すことで、常に一定量の食品が家庭で備蓄されている状態を保つという方法です(※10、11)。

食物アレルギーのある方は、アレルゲンが含まれていない食品を備蓄する必要があります。

アレルギー対応の粉ミルク、アレルギー対応のレトルト食品、缶詰、フリーズドライ食品などを候補にしておくと良いでしょう。アルファ化されている乾燥麺やアルファ米は、水のみで食べられる状態にできます。

注意点として、アレルギー用粉ミルクは70℃以上のお湯で溶かす必要があります。カセットコンロがあると重宝します。

(※10)家庭備蓄のすすめ

(※11)大規模災害対策におけるアレルギー用食品の備蓄に関する提案

非常時に備えた物品チェックリスト

災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレットより
災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレットより

上に、日本小児アレルギー学会からのチェックリストを示します。

それ以外にも、アレルギーのあるお子さんとしてすぐ持ち出せるようにしておきたいものとして、1)薬(1週間分)、2)お薬手帳のコピー、3)緊急時の情報を書いたカードなどを用意すると良いでしょう。

また、強いアレルギー症状がおこったときのために、『食物アレルギー緊急時対応マニュアル』を印刷しておき持ち出せるようにしておくと安心です(※12)。

(※12)食物アレルギー緊急時対応マニュアル

アレルギーをお持ちのお子さんたちへの配慮をお願いいたします

子どもは災害時の弱者であり、さらにアレルギーを持っているお子さんはサポートすべき対象です。ご配慮をお願いいたします。

なお、日本小児アレルギー学会は、『アレルギー医療相談窓口』を開設し、被災時の小児のアレルギー性疾患症状全般(ぜん息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど)についてご相談に応じております。

リンクを参照いただき、わからないことがあればご連絡いただければ委員が対応いたします(情報の漏れがないようにお願いいたします)(※13)。

(※13)台風10号で被災された皆様へのお見舞いと「アレルギー医療相談窓口」のご案内

※今回の記事は、日本小児アレルギー学会の委員会で相談させていただき公開させていただいています。