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新型コロナウイルスと、子どもに多い川崎病は関係しますか?

堀向健太医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。
(写真:ロイター/アフロ)

新型コロナウイルス感染症(SARS-Cov2)が各地で流行しており、心配なニュースも日々報道されています。そんな中、新型コロナが川崎病と関連しているのではというニュースがありました(※1)。

(※1)欧州で川崎病に似た症状の子ども 新型コロナとの関連調査

『川崎病』をご存知でしょうか?

イラストAC
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川崎病とは、1967年に日本人の川崎富作先生により初めて報告された、乳幼児によく診られ発熱を伴って全身の血管炎が起こる『原因不明の』病気です。決して少なくはなく、日本では、2018年に17364人の報告があります(※2)。

(※2)第25回川崎病全国調査成績

川崎病は『原因不明』の病気ですが、症状による診断がおこなわれます。

その症状としては、(1)発熱、(2)眼球結膜(目の白い箇所)の充血、(3)くちびるや口の中が赤くなる、(4)発疹、(5)手足の先の変化(赤くなったり腫れたりする)、(6)首のリンパ節が腫れる、があり、これらの症状がそろうと診断が確定します(※3)。

(※3)川崎病診断の手引き 改訂第 6 版 - 日本川崎病学会

もともと川崎病は、感染症が引き金になるケースがあることが知られていました

写真AC
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そして原因不明とはいえ、感染症が引き金になっているケースが少なくないことが報告されています。

というのも過去、川崎病の大流行が3回(1979年,1982年,1986年)報告されているのです(※4)。

さらに、川崎病の流行地域が移動したり、流行に季節性があったりすることも感染症が関連していることを示しています(※5)。

『原因不明』とはいえ、感染症が引き金になる可能性は、知られていたのです。

(※4)Pediatr Int 2018; 60:581-7.

(※5)日本臨床 2016; 74:503-7.

コロナウイルスには”新型”だけでなく、従来の型があります

写真AC
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最近になって新型コロナウイルス(SERS-Cov2)が急に注目されるようになりましたが、“新型”と名前が付いているように、従来の型もあります。

もともとコロナウイルスはα,β,γコロナウイルスに分かれ,αコロナウイルスのうち2種類(229E株、 NL63 株),βコロナウイルスの2種類(OC43 株,HKU1 株),そして2002年に流行したSARS、2012年に流行したMERS、すなわち6種類が人間に感染することがわかっていました(※6)。

(※6) 小児内科 2017; 49:1659-63.

これらの従来のコロナウイルスは、川崎病の原因になるのでしょうか?

写真AC
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では、従来のコロナウイルスは、川崎病の発症リスクになるのでしょうか?

台湾における川崎病の子ども226人と、年齢と性別をおなじようにマッチさせた健康な子ども226人に関し、鼻や喉にいるウイルスのPCR陽性率を比較した研究があります。

すると、健康な子どもと比較して川崎病になった子どもは、PCR検査のウイルスが陽性になる率が高く(50.4% vs.16.4%)、コロナウイルスの陽性率も高かったのです(7.1% vs.0.9%)(※6)。

(※6)J Formos Med Assoc 2014; 113:148-54.(日本語訳)

ですので今後、新型コロナが流行している地域では川崎病の特徴を覚えておき、症状がそろってきたとしたら医師に相談することが勧められます。

ただし、川崎病自体が”感染症”というわけではありません

これまでお話してきた研究は、従来のコロナウイルスに対するものです。

しかし、新型コロナウイルス感染症も、(今後の検討も待たなければならないながら)川崎病の発症リスクになる可能性があるといえるでしょう。

かといって、すでに(1)川崎病自体が簡単に家族で感染するわけではない、(2)(新たな感染がなくとも)再発があるなど、感染症以外の特徴もあります。

そして覚えておきたいことは、川崎病そのものが感染するわけではないということです。

川崎病の原因は新型コロナだけではなく、川崎病になったら新型コロナだと即座に結びつけることも危険です。

そして、新型コロナと異なり、川崎病にはきちんと確立した治療があります

ですので、川崎病自体にあわてず、医師に相談しながら治療にあたっていただければと思います。

【2020年5月10日追記】5月7日に発表された論文などを軸に、さらに情報を更新した記事を公開しました。

新型コロナと『川崎病類似の重症の病気』を、現状でどのように理解すればいいか?小児科医が解説

医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5500人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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