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今年はすでにスギ花粉の飛散が開始 症状の「ヤマ」を低くするためのコツとは?

堀向健太医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。
(写真:アフロ)

スギ花粉の飛散がはじまりました。

写真AC
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日本気象協会は、都内でのスギ花粉の飛散開始を発表しました(※1)。

※1)都内で いつもより早い「スギ花粉」飛散開始 対策を

今後、各地でスギ花粉の飛散が始まりしばらく続くことになるでしょう(※2)。

※2)2020年 春の花粉飛散予測(第3報)

アレルギー性鼻炎は、社会への影響が強く出ることがわかっており、例えば労働生産性に強く影響します(※3)。

※3)Vandenplas O, et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2018; 6:1274-86.e9.(日本語訳)

ですので、その辛いヤマをいかに低くするかが注目されますね。

早めに治療を開始すると、症状のヤマがひくくなることが証明されています

イラストAC
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『強い症状が出る前から治療を始める』と、症状がひどくなってから治療を開始するより、その症状のヤマが低くなることがわかっています。

初期療法』といいます。

そして初期療法は、一般的な内服薬である『抗ヒスタミン薬(※4)』でも、鼻に噴霧する『ステロイドスプレー剤(※5)』でも、効果があることがわかっています。

※4)Yonekura S, et al. Int Arch Allergy Immunol 2013; 162:71-8.

※5)Makihara S, et al. Allergol Int 2012; 61:295-304.

しかし、『花粉症の薬で眠くなる』といったことがあるため、抗ヒスタミン薬を避けたいという方もいらっしゃるでしょう。

抗ヒスタミン薬で眠くなる?

写真AC
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アレルギー症状が起こるとき、『ヒスタミン』という化学物質が鼻や目の粘膜にばらまかれています。ヒスタミンが体に反応する際に作用する、ヒスタミン受容体への結合を抑えるのが『抗ヒスタミン薬』です。

そして、日本の医療機関では、花粉症に対する薬剤として『抗ヒスタミン薬』が一番多くで処方されています(※6)。

※6)太田伸男,他.Progress in Medicine 32: 125-133. 2012.

しかし、眠気や口の中が乾くなどの副作用のために、使いづらいと思われるケースがあります。

そのヒスタミンの受容体は脳にもあり、その結合率が高い場合にそのような副作用が大きくなることがわかっています(※7)。

※7)Yanai K, et al. Pharmacol Ther. 2017; 178:148-56.(日本語訳)

最近は、その結合率が低い抗ヒスタミン薬が増え、さらには市販薬でも購入できるようになってきています。医師や薬剤師に相談されると良いでしょう。

鼻に噴霧するステロイド剤は安全ですか?

写真AC
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鼻に噴霧するステロイドスプレー剤は、2016年以降のガイドライン(学会が作成した指針)でも、軽症から最初から使ってよい薬に記載されています(※8)。

※8) 鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症-2016年版(改訂第8版)、鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会、ライフ・サイエンス、2015

重症になるまで我慢せず、使うべき薬と言えるでしょう。

そして最近の病院で処方される鼻から噴霧するステロイド剤は、全身へ回る割合がきわめて少ない製品が多く、全身的な副作用が少なくなるように設計されています(※9)。

※9)Daley-Yates PT, et al. Clin Ther 2004; 26:1905-19.

子どもにも使えますので、医師に相談してみましょう

注意点としては、『市販の』鼻へ噴霧するステロイド剤の多くには『血管収縮薬』が含まれていることが挙げられます。血管収縮薬は、鼻づまりに対してすぐ効くものの、長期間使用することでかえってひどい鼻詰まりになることがわかっています(※10)。

※10)Graf P. Treat Respir Med 2005; 4:21-9.

そして乳児に使うと特に、強い眠気を引き起こす可能性があります(※11)。

※11)Brainerd WK, et al. J Pediatr 1956; 48:157-64.

市販薬の鼻に噴霧するステロイド剤を購入する場合は、やはり薬剤師に相談されたほうが良いでしょう。

今年の花粉症が辛かった場合、来年のシーズンに向けて…

いらすとや
いらすとや

そして、このスギ花粉シーズンに毎年つらい思いをされている方に対しては、舌下免疫療法が保険診療で実施できるようになっています。気になっている方も多いでしょう。

ただし、『スギ花粉の飛散時期には開始できない』という注意点があり、今は開始できません

ですので、花粉飛散シーズンが終わる頃(地域によって差がありますが5月の終わり頃)に、再度、舌下免疫療法に関してお話しようと思っています。

まずは、早めの治療を行いながら、つらい季節を乗り越えていけることを願っています。

医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5500人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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