「中国政府は世界人権宣言に違反しています」 スイス・ジュネーブの国連人権理事会で在日香港人が訴えへ

在日香港人のウィリアム・リーさん 昨年秋からインタビューを続けてきた 撮影:堀潤

「香港国家安全法が施行され、いま一番動けるのは、在外の香港人です。私も亡命が必要になるかもしれません。しかし、いま諦めてはいけない。世界に声を届けなくてはならないのです」

在日香港人のウィリアム・リーさん(27)は、力を込めながらもそう静かに語り、きのう(20日)、成田空港からスイスに向かった。

ジュネーブで行われる国連人権理事会の定期会議に参加するのが目的だ。

ウィリアムさんは在日香港人として、香港版国家安全法と12名の香港人が中国大陸に連行されたことについて、90秒間発言する予定だ。近年の香港への制圧や、内モンゴル自治区でモンゴル語が強制的に排除されるなど、中国政府の一連の行動が「世界人権宣言」 に違反していると訴え、国連人権理事会に対処と措置を促したいという。

ウィリアムさんは、日本に住む香港人が中心になり設立した、民主派活動を支持する団体「Stand with HK@JPN」のメンバーの一人。積極的に街頭に立ち、顔と名前を明らかにして香港の民主運動への支持を日本人にも広く訴え続けてきた。

私は、昨年の秋に知り合い、一時帰国中の香港の実家でインタビューをさせてもらったことを機に、この1年間、共に発信を続けてきた。

私が初めてインタビュー撮影をしたその日、ウィリアムさんはデモ参加中に、警察に逮捕された。

火炎瓶も投石もしない平和的なデモだったが、突然踏み込んできた警官隊によって逮捕された。普段仕事の事務作業でも使う文房具のカッターがカバンに入っていたため、凶器と判断され逮捕された。警察車両に詰め込まれ、拘置所で48時間、外部との接触も閉ざされ拘束された。弁護士への連絡も自らではできない。逮捕にいち早く気付いた仲間や支援者たちによって、かろうじて弁護士を派遣できるような状況だった。

ウィリアムさんの仲間から「逮捕された」と一報が入り、居ても立ってもいられず胸が締め付けられるような時間が過ぎていったが、48時間後、無事が確認できた。ほっとしたのもつかの間、その後「攻撃性武器所持罪」で起訴され、今は保釈中である。

ウィリアムさんは日本で集めたメッセージを香港にも持っていき、そこで展示する準備をしていた。カッターはそうした工作に使うもので決して武器ではない。この撮影直後の出来事だった。不当逮捕だ。撮影:堀潤
ウィリアムさんは日本で集めたメッセージを香港にも持っていき、そこで展示する準備をしていた。カッターはそうした工作に使うもので決して武器ではない。この撮影直後の出来事だった。不当逮捕だ。撮影:堀潤

今年、国安法が施行され、ウィリアムさんを取り巻く環境はさらに厳しくなったが、彼はその後も発信を止めることはしなかった。

「希望があるからやるのではないのです。やってみるからこそ、そこに希望が生まれるのです。諦めたら、そこでゲームオーバーです」。

子供の頃から日本のアニメが好きで、独学で学んだという流暢な日本語を使って、ウィリアムさんは私たちにメッセージを届け続けてくれている。

先週土曜日、私が監督をした短編ドキュメンタリー映画が映画祭で上映され、出演者の一人として、ウィリアムさんも舞台挨拶に登壇した。そこで語ったメッセージは、ぜひ多くの人に共有したい内容だ。短編国際映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2020」の公式アカウントがその時の様子をツイッターで残してくれているのでシェアしておきたい。

ウィリアムさんは、司会者から「日本人は皆さんを支えるために何ができますか?何をするべきでしょうか?」と問われ、こう答えた。

「もし、私たちの活動にご支援、ご参加いただければそれは一番確実に助けになるかと思いますが、一般の方でも簡単にできる方法があります。いま、日本の国会では香港のことに限らず、普遍的な人権法案の成立を議員連盟が目指し可決しようとしています。衆議院の解散総選挙も近くあるかもしれませんが、人権法案に賛同する議員の方に投票していただきたいです。もちろん、日本人の皆さんがご自身の考えにあった方がいればということですが。そして、私たちのこととは関係なく、投票にはぜひ、必ず行ってください。これは私たちが求めて、求めて、20年間以上求め続けてきたのに手に入らない権力なので、みなさんには既にあるなら、絶対に使っていただきたいです。それによって、私たちの願いとは違う結果が導き出されたとしても、それはいいんです。ちゃんと皆さんが民主主義を尊重していくことができれば、私たちの願いと重なるからです」

スピーチの中で、ウィリアムさんが投票行動を「権利」とは言わず「権力」という言葉を選んでいたことに心が揺さぶられた。

そう、本来私たちの一票は力を持っている。一票が政治を変える。それは私にとっての行使できる「権力」なんだと。いつも香港の若者たちに

様々な気づきを与えてもらっている。感謝しているし、だからこそ共に考え声を上げ続けていきたい。

きょう、9月21日は国連が呼びかけている「世界平和の日」、ピースデーだ。戦争や紛争の停戦を呼びかけ、非暴力を確かめ合うための1日だ。国家体制やイデオロギーには関係なく、普遍的な価値として、それぞれの自己決定が尊重される考えは共有されるべきだと思っている。

ジュネーブで行われる、国連人権理事会定期会議。ウィリアムさんの発言時間は、今のところ日本時間22日(火)17時から20時の間の

予定だという。

日本から声援を送り、スピーチの成功と、無事の帰国を祈りたい。