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新型コロナどう不安を和らげる? 妊娠中の女性たちからの声 マドレボニータ創業者・吉岡マコさんと考える

堀潤ジャーナリスト
認定NPO法人マドレボニータ代表の吉岡マコさんが妊娠中の女性の不安に答えてくれた

■「弱音を吐いても大丈夫」という呼びかけに400メッセージ

今月11日から堀のSNS上にLINEのIDを公開しています。新型コロナで生活は一変しました。仕事も、暮らしも、学びも、子育ても、心と身体も「不安に思っていることがあれば、連絡を気軽に下さい」と呼びかけたところ、今日までに400を超える皆さんの声が集まりました。様々な現場、様々な立場からの切実な声です。

大きな危機を目の前にして、「ウィルスに勝とう」「コロナに負けるな」と一致団結することも必要だと思いますが、一方で、「もうしんどい」「これが辛い」など、不安や悩みをお互い打ち明けられるような空気もとても大切だと思っています。不安や悩みはニーズや需要そのもの。共有されなければ、対処もできません。

いま私は、LINEに寄せられたメッセージに一件一件返事を書きながら、暮らしや雇用などテーマ別にそれぞれの声を集約しています。

どうしたら不安が和らぐのか。少しでも知恵を集めたい。

そこで、先週から、NPOや社会的企業で作る団体「新公益連盟」に協力を呼びかけ、社会課題の最前線で試行錯誤を繰り返してきた専門家たちと、みなさんの不安を一緒に考える取り組みを始めました。

不安を共有するライブ番組を配信
不安を共有するライブ番組を配信

TOKYOMXの報道番組「モーニングCROSS」やJ-WAVE「JAM THE WORLD」など、各番組とも協力して進めています。Yahoo!ニュース個人でもその内容を発信します。

インタビューの模様はYouTubeで配信しています。動画もぜひご覧ください。ノーカット版もあります。

■妊娠中の女性たちからの不安の声も多数

初回は、全国各地で妊娠中や産後の女性向けエクササイズを提供している認定NPO法人マドレボニータの創業者吉岡マコさんです。

新型コロナの影響でオンラインでのサービスに切り替え、一人一人の妊産婦さんたちとの繋がりをスタートさせました。自宅で孤立してしまう女性たちとの繋がり、心と身体のサポートを続けるためです。

専門団体と協力してシングルマザーのためのオンライン相談なども始めています。

堀のLINEに寄せられた妊婦さんからの相談や自宅でいられる心身のリラックス法などを聞きました。

(堀)

これまでどのような活動をされてこられたのですか?

(吉岡さん)

私たちは、出産前後の女性と家族をサポートする活動をしています。特に、体や心の変化に適応していけるようにエクササイズをしたりコミュニケーションワークをしたりして、妊婦さんや家族が体や心を整えていけるような活動をしてきました。

(堀)

新型コロナの影響で運営の仕方も変わりましたか?

(吉岡さん)

普段は、スタジオを借りて女性が赤ちゃんを連れて通ってきて、そこでレッスンをするという風にやってきました。でも、この騒動で教室はすべて閉めないといけなくなってしまって、実質レッスンを開設できていません。それでも、こういう事があっても相変わらず子育ては待ったなしで続いていきますし、赤ちゃんも待ったなしで生まれてきますから、私たちで何かできることはないかとヒアリングをしたりしています。

(堀)

みなさんどんな様子でしょうか?

(吉岡さん)

やはり、妊産婦さんの不安というのは、本当にいま大きくてですね。まず人と会えないという事だったり、出産にあたっても家族の立ち合いができないという事で、本当に心細いんですよね。

出産した後も、家から出られなくて人との接触がないというのは、実は出産後の状況と、実は似ているんですけども。

(なるほど)

私たちはそういう状況から密室にこもらないように、体を動かしたりできるように「外に出ていきましょう」という活動をしているんですが、実質その活動ができなくなってしまったので、まずはこういったZOOMやLINE電話といったツールを使って、子供を持った女性が集まって顔を見て話したりだとか、簡単なストレッチ・エクササイズを一緒にしたりしています。

試験的に始めたばかりですけど、こういうツールを使ったことがない方もいらっしゃいますし最初のうちは、どうかな?と思っていましたけど、オンラインでも顔を見て、人と誰かと話せられるだけでもこんなに安心するんだと涙ぐむ方がいたり。

やっぱり体を動かす、ちょっとこうやってストレッチするだけなんですが気持ちがすっきりして。例えば、パートナーとぎくしゃくしてしまっていたところ、自分の体が整うことでパートナーに優しくできました。という声だったりとか。

こういう非常時って、自分の体のケアや心のケアって後回しにされがちなんですね。まずは、安全の確保ということで。特にエクササイズだとかは贅沢品と言われてしまってちょっとそういうことをやるのは不謹慎だという、そういう空気が実はあったりするんです。

でも、私たちはこうやって体を動かしたり、人とつながったりすることが贅沢品ではなくて人間の基本的な尊厳を保つために必要なんだということで呼びかけをしています。

(堀)

具体的にどんな悩みが語られるのですか?

(吉岡さん)

先が見えない不安というのと、それを人と共有できないという事が1番大きいと思います。

家族と話し合いをしようにも、自分がもうどうしていいのか?どうしたいのか?ということすら分からなくなってくる。

そういう時に、話を感情的にならず聞いてくれる相手がいたりとか相手の話が聞けたりという事だけで、少し落ち着いて「自分はこういうことを考えていたんだ」「自分はこんなことが不安だったんだ」ということを、冷静に言語化できる。そういうことが、家の外でもオンラインであることはすごく大事だと思っています。

もし、パートナーと同居していて、パートナーといられるのであれば、まずはパートナーが1番の支えになってくれると思うんですね。よく、私たちも非常時じゃなくても伝えているんですけど母親のほうが、先に母親になるって言われているじゃないですか。でも本当はそうじゃなくて、実は、子育てのスタートというのは夫婦でいっしょに始めることができる。なので、出産後のことっておばあちゃんや、どうしても女性の仕事のなりがちですけど、女性じゃないとできないことは1個もないので、もしパートナ―がいるのであればこの時こそ力を合わせてこの時期を乗り越えられたらいいんじゃないかなと思います。

特に、出産直後の女性の体っていうのはとにかく横になって休むことが大事。横になって休むという事を知らなう方が結構いらっしゃって、無理をして倒れてしまうということがあたりするので、まずは、出産したからだというのはダメージを受けているので4週間くらいは寝たきりで過ごすという環境を作らないといけないので、それをパートナーと共有して母体を休ませるようなことができるように、2人でどうしていこうか?ということを一緒に話していけるといいです。

(堀)

旦那さんが仕事に行かないといけない、一人で考えているという妊婦さんからの不安の声も聞きました。どうしていくべきですか?

(吉岡さん)

こういう状況で一番残念なのが、本人の責任じゃないのに夫婦同士で責め合ってしまったり、ぎくしゃくしてしまったりしたりして、もったいなく残念だと思う。会社は体制が作れないという事は、社員の責任ではないじゃないですか。そのしわ寄せが、家族に行ってしまうのは残念です。

そこで夫婦が険悪な状態になることをできるだけ避けて、こういう状況でも私たちにはできることがないかということを、建設的に話せることが大事だと思います。

そのうえで、本当にできることと言ったら…帰ってすぐにお風呂に入るとか、できることからやるしかないとおもうんですけど、一緒に家庭を運営していく同志として「あなたこうやってよね」という要求ではなくて、どういう風にしていこうかという2人で力を合わせていくチャンスにしていくといいんじゃないかと思います。

(堀)

国は妊婦への態勢を整えるといいますが、現場の企業は追いついていない

休みになれば、無給?という不安の声も上がっています。

(吉岡さん)

妊婦さんが休みを取ってその分の給料を補填するなどの、雇用調整の助成金だったり、雇用主が利用できる制度はいろいろ出てきていますよね。雇い主のほうも、何も考えていないことはないと思うんです。まずは、そういうことを確認するという事。そういう動きがなければ、こちらから働きかけるとか、そういうことはきっとできると思います。

何もできずにただ待っているというよりは、何か働きかけはできるかなとは思います。

(堀)

パートナー側には何を知ってほしいですか?

(吉岡さん)

妊娠期や出産後は本当に体が不安定な状態なので、ただでさえ不安定であるので精神的にも不安定になりやすい時期ということは、まず知っておいてもらいたい。知ったところで、どう受け止めればいいのよ!というのが本音だと思うんですよね。

まずは、妊産婦さんがしてほしいことは一緒に歩んでほしいという事だと思うんですね。一方的に、受け止めてほしいというだけではなく2人の問題として「どうやって行こうか?」と一緒に考えてくれるということがとても大事だと思います。なので、もちろん不安を理解するといっても、人の想像力には限界がありますよね。

なので、理解はできないという前提で「それでも話を聞かせて」と隣に座って、話をまず聞く。

それができると、お互いできるようになります。

パートナー側も、不安がないわけではないので、自分が考えていることや不安に思っていることを率直に妻に伝えてほしいと思う。そういう、落ち着いた会話「どうしていこうか?」というような「こんな時だからこそ、2人でどうやっていこうか?」ということが話せるだけども、気持ちが落ち着くんじゃないでしょうか。

(堀)

パートナーが身近にいない妊婦さんにはどうアドバイスされますか?

(吉岡さん)

シングルマザーの支援団体ですとか、1人親を支援する団体が相談窓口を設けていたりします。ぜひ、そういう所を頼ってほしいと思います。実は、私たちも来週からシングルマザーに向けたセルフケア口座をオンラインで始めるんですね。それも参加費は無料になっています。

これは、シングルマザーズフォーラムというNPO法人と協力して、シングルで頑張っている人達が1番、自分の体のケアが後回しになってしまうので、週1回1時間だけでも枠を取ってオンラインでつないでストレッチしたり、人と話したりしましょうということを実はスタートするんですね。

そういう機会があれば、ぜひ参加していただきたいと思うし、例えば、1人で頑張っている人達同士が繋がったら、それだけでも元気が湧くんじゃないかなと思っています。

(堀)

それは、どこにアクセスすれば情報を得られますか?

(吉岡さん)

マドレボニータのFBやツイッターなどのSNSでも流しています。ぜひご覧になってみてください。

(堀)

すぐにできる体を動かすエクササイズはありますか?

(吉岡さん)

あります。一緒にやってみますか?緊張しているときは肩が縮こまっていいます。座ったままでも、肩を大きく前後に回してみてください。右肩を、グリグリとまずは後ろに、そして前に。さらに左側も。

ポイントは肩にフォーカスするのではなく、肩甲骨を意識してください。肩甲骨をはがすようにしっかり回すのがコツです。

(堀)

妊娠中、周囲の方へメッセージをください。

(吉岡さん)

妊娠中や産後の方は体が普通じゃない。でも、赤ちゃんが一番心配で自分の体や心は後回しにしがち。赤ちゃんにとってはお母さんの体・心が元気であることが1番大事なこと。セルフケアを大事にしてください。

周りの人も、妊産婦さんは普通の状態ではないという事を理解してもらって。妊産婦さんがエクササイズやセルフケアをするということは、贅沢品ではなくて赤ちゃんを守るために必要なことを理解していただきたいと思います。

(堀)

妊産婦さんが人に何か頼るときのコツはありますか?

(吉岡さん)

まず、1番信頼できる人と「今どんな気持ち?」っていうことを聞きあう。話しをする機会を持つと他の人にも、距離の遠い人にも伝わる言葉が自分の中でも持てると思うので、まずは信頼できる方と「今どんな気持ち?」ということを、語り合う時間を持たれるといいと思います。

不安な気持ちは抱え込んでしまいがち。抱え込むほうが楽だったすることもあるのでそうなりがちです。いまは抱え込まないで、ゆだねて感謝することを学ぶ時期。そして過ごしてもらいたいなと思います。

参考リンク

認定NPO法人マドレボニータ

https://www.madrebonita.com/

シングルマザーのセルフケア(オンライン講座)

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdfSOA4eFi70nCsVdgvOGBjoxqhMQK7uyQnwVxesoeuyTzbZA/viewform

※記事中写真は全て堀潤のYouTubeより

ジャーナリスト

NPO法人8bitNews代表理事/株式会社GARDEN代表。2001年NHK入局。「ニュースウォッチ9」リポーター、「Bizスポ」キャスター。2012年、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校で客員研究員。2013年、NHKを退局しNPO法人「8bitNews」代表に。2016年(株)GARDEN設立。現在、TOKYO MX「堀潤モーニングFLAG」キャスター、Amazon Music「JAM THE WORLD」、ABEMA「AbemaPrime」コメンテーター。2019年4月より早稲田大学グローバル科学知融合研究所招聘研究員。2020年3月映画「わたしは分断を許さない」公開。

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