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紅白歌合戦で「歌」に割かれている時間は9割  2021年もっとも時間かけられた歌手はMISIA

堀井憲一郎コラムニスト
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

4時間15分という長丁場の紅白歌合戦

紅白歌合戦は、大掛かりなお祭りなのだな、とあらためておもう。

4時間15分という長時間番組に、50組ほどの歌い手が出てきて、次々と歌う。

あいまあいまに、いくつかのコーナーもある。

SDGsを扱ったレポートや、東京五輪の振り返り、それに寸劇のようなコーナーがあった。

ニュースが5分はさまっている

見ていると、実に無駄なく進行している。

司会者が余計なことを言っていたとしてもせいぜい3秒くらいで、とんとんと進んでいく。

4時間15分のうち、どらぐらいが歌に裂かれているのか。

20時55分からはニュースが5分間あるから、実質は4時間10分、つまり250分である。このうちの割合を見てみる。

歌の時間が全体の88%を占める

「歌手を紹介して、歌って、そのあと引き取る」といういわば「歌とその前後の時間」は歌関係 3時間40分19秒であった。つまり220分だ。

全体の88%になる。ほぼ9割。

企画コーナーやお祭りらしい寸劇などがおもったより短くて、この合計が20分46秒ほどである。8%だ。そんなものである。

進行には合計9分が充てられていた

あとの9分足らずは、いわゆる「進行」である。

視聴者にリモコンでの投票を呼びかけたり、NHKオンデマンドの紹介をしたり、永瀬廉が主演するドラマを案内したり、「最後はほたるの光の合唱です」と声をかけたりする。

そういうお仕事ぽい喋りの部分、これが8分55秒であった。

おもったより歌の比重が大きい。

大泉洋がふざけている時間はかなり長いように感じていたが、あれはほんの一部なのだ。

「歌合戦」の名のとおりに、歌の時間がとても長い素敵な番組である。

時間が割かれていた川口春奈の企画コーナー

企画コーナーで長かったのは、川口春奈が故郷長崎へロケにいった「福江島×SDGs」のコーナー。

ロケVTRが3分32秒ほどあって、そのあとの受けトークを合わせて4分を越えたコーナーであった。

コンテンツ詰め詰めの紅白歌合戦では、かなり長いコーナーである。

劇団ひとりのいたずらコーナーの長さは3分足らず

次に長い企画コーナーだったのは、劇団ひとりがまた登場してきて(また、というのは東京五輪の開会式に続き、という意味)、紅組白組採点の途中経過発表を邪魔したコーナーである。

ライトを消したり、とても明るくしたり、いたずらを繰り返すコーナーはずいぶん長く感じたが、あれが2分46秒である。

おふざけコーナーとして2分46秒というのは、紅白ではとても長く感じる。

だって、2分46秒も歌わせてもらっていない歌手もたくさんいるんだから。

純烈よりも劇団ひとりに時間が割かれていたことになる。

リアル「おかえりモネ」コーナーはしみじみした

あとは「現在の気仙沼」についてのドキュメンタリーふう映像が2分44秒あって、これはよかった。リアル「おかえりモネ」としてしみじみした。

いやがる大泉洋がエヴァンゲリオンに乗り込む茶番劇は2分12秒もあった。

でもちょっと笑ってしまったし、歌に入る瞬間はちょっとかっこよかった。

川口春奈担当コーナーはもうひとつあって「はあちゃんの楽屋レポート」と称して、けん玉練習をしている楽屋を盗み見るというのがあった。

DJ Cooは練習せずにけん玉を磨いているという、たぶんその姿を見せるのを目的としたコーナーで、この寸劇的レポートが1分23秒であった。

もっといろいろ楽屋をレポートするのかとおもっていたがこれ一本だけだった。ちょっと残念であった。

最初の大泉洋の呼び出しに1分近くかけている

一番最初、オープニングは、川口春奈と和久田アナが大泉洋の楽屋を訪ねて、もう始まりますと呼び出すところから始まった。これは、いわば「お笑い寸劇」コーナーでもあり、ここで56秒使っていた。

振り返ってみると、贅沢な時間である。

ライブの寸劇はだいたいそれぐらいで、たぶん秒刻みで管理されたやりとりだったのだろう。

実際に笑ったのは、川口春奈が「逃げるんですか、大泉!」と叫んだところぐらいだったけれど、きちんと管理された進行だから、それはそれでいいのだとおもう。

「歌」が歌われていた合計時間は2時間44分

歌の時間は、「紹介」「歌唱」「ねぎらいや感想」の三つに分かれている。

それぞれの全員ぶんを集計してみると、「紹介」が39分45秒、「歌唱」が2時間44分43秒、「ねぎらい、感想」が20分22秒だった

番組全体250分のうち「実際に歌が歌われている時間」は、164分ということになる。全体の三分の二である。かなり長い。

コマーシャルもないから、かなり多いとおもう。

充実の歌番組であると見ていいだろう。

紅白歌合戦は、本気で歌を聞かせる番組なのである。

「紹介」に時間を割いてもらっていた歌手ランキング

「さて次は」という声がかかってから、歌い出すまでの「紹介」時間の長かった歌手を並べるとこうなる。

MISIA 4分30秒

三山ひろし 2分17秒

ケツメイシ 1分41秒

氷川きよし 1分28秒

AI    1分27秒

平井大   1分26秒

藤井風   1分23秒

乃木坂46  1分11秒

キャロル・キングの歌が流れたMISIA紹介映像

MISIAは最後の最後に登場したから、番組の締めくくりの意味もあるのだろう、紹介VTRが、東京オリンピック・パラリンピックの振り返りになっていて、そこが長かった。VTR中にキャロル・キングの歌が流れていて、急に1970年代の空気も感じられた。

あれは、MISIAの紹介というより東京オリンピックパラリンピックを振り返るコーナーだったと見ることもできるのだが、でもまあ結果としてはMISIAの紹介部分である。

キャロル・キングが流れたのは、このVTRに「友だちが大事だ」というメッセージが込められていたからのようだ。(『つづれ織り』のB面の1曲目)

それぞれの紹介が長かった理由

三山ひろしが長いのは、もちろん彼の紹介が長いわけではなくて「けん玉ギネス挑戦コーナー」だからである。鈴木福くんや、ぺこぱも登場していた。

三山ひろしが歌い終わってもけん玉は続き、12秒後に成功していた。

成功してよかったとおもう。二年連続成功したから、区切りがついた気がする。

このあと「連続けん玉の連続挑戦年数記録」に挑んだりしたら、終わりがないですけどね。

ケツメイシ、平井大、藤井風は初出場なので、紹介VTRがしっかり作られていて長かった。

氷川きよしの紹介は、美空ひばりを歌うので彼女の紹介VTRが流れていた。

氷川きよしは年々、妙な迫力が増してきているように感じるが、2021年は、一瞬、美空ひばりがのりうつってるふうに見えた。正直、ちょっと怖かった。

「ねぎらい・感想」が長くなったサプライズ藤井風

歌い終わったあとの「ねぎらい・感想」の余韻部分が長かったのは何といっても藤井風であった。

次の歌手にいくまで1分26秒あった。

これは、サプライズで、岡山からの中継に見せかけて、突然、ステージに登場するという展開だったからで、司会者三人にも知らされていなかった(という態になっていた)ので、そのぶんリアクションが長かったのだ。

この1分26秒というのは、予定の時間内だったことを祈るばかりである。

余韻部分で長かったのはあとはKing&Princeだった。

メンバーの永瀬廉が朝ドラ『おかえりモネ』に出ていたから、審査員だった清原果耶・坂口健太郎とのやりとりがあり、また1月から始まるNHKドラマ主演の告知もやったからだ。

NHKも隙あらば告知をするわけで、前のめりなのはいいとおもう。

歌唱時間の長かった歌手ランキング

実際に歌っていた部分、歌唱時間が長かったのはこういう順だった。

MISIA 6分31秒

BUMP OF CHICKEN 6分16秒

福山雅治  6分11秒

ケツメイシ 5分29秒

さだまさし 4分50秒

星野源   4分49秒

藤井風   4分36秒

YOASOBI 4分13秒

氷川きよし 4分05秒

布袋寅泰  4分05秒

東京事変  4分04秒

薬師丸ひろ子4分03秒

(BUMP OF CHICKENはあいだの「おかえりモネメンバーによる演奏シーン」を抜いた2曲演奏合計時間)

この12人(組)が4分を越えたパフォーマンスだった。

だいたい後半に固まっている。

歌唱時間が短めだった歌手たち

だから短かったのは前半の曲である。

二曲つづけてどうぞ、と紹介されている人たちは、やや短めになる。

短かったほうはこんなメンバーである。

山内惠介  1分57秒

純烈    2分02秒

GENERATIONS 2分03秒

日向坂46  2分04秒

NiziU    2分07秒

櫻坂46   2分11秒

DISH//    2分12秒

上白石萌音 2分14秒

milet   2分16秒

天童よしみ 2分19秒

三山ひろし 2分19秒

三山ひろし以外は前半に登場している。

MISIAは国の宝

「紹介+歌唱+感想」の1セットが長かった人、つまり2021年紅白歌合戦で長く時間を割いてもらった人はやはりMISIAであった。

彼女だけが10分を越えていた。

MISIAの絶唱を年の最後に聞くというのが、ひとつの型になってきているのだろう。彼女の歌唱は日本の宝である。

2020年代はそういう時代がつづくいていくのだとおもう。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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