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阪神がCSで広島にひと泡吹かせる方法

本郷陽一『RONSPO』編集長

10人に聞いて10人が広島有利だと答える。

今季の阪神と広島の対戦成績は12勝12敗の5分。可能性で言えばフィフティーフィフティーのはずである。パ・リーグのファーストステージ、西武vsロッテの勝敗予想を聞けば、半々に分かれるが、阪神vs広島ではそれがない。

8月以降は阪神が5勝8敗。しかも開幕で投げてくる前田健太には甲子園で0勝2敗で、防御率、0.00。2位チームのハンディのない3戦勝負のファーストステージにおいて逆に、そのマエケンの存在が阪神にとって逆ハンディとなってしまっている。

果たして阪神にファーストステージを勝ち抜く可能性はないのだろうか? 

なぜ、マエケンを打てないかを、阪神OBの掛布雅之さんに聞いたとき、かつての“ミスタータイガース”は、こんな指摘をしていた。

「阪神の選手はとにかく打ち損じが多い。それもストレートをファウルしている。マエケンレベルで甘いボールは1打席に1球あるかないか。4打席で数球だ。それをファウルしてしまうのだから、カウントは悪くなり打席での余裕がなくなる」

もし掛布さんならどうしますか?と聞くと「内側に変化してくるカットやスライダーを狙うだろうね。必ず使ってくるボールですから。4打席のうち、“ここ”という場面の1球でいいんです。それを仕留めるとマエケンが考え始め流れが変わりますから」と言った。

掛布さんのような打者が一人でもいれば何かが起こるかもしれないのだが、いかんせん、今の阪神で、そういうマエケン苛めに期待できるバッターは少ない。

マエケンは、阪神で注意すべきバッターは誰か?という質問にマートンと、西岡の名前が挙げたらしいが、確かに西岡は、対マエケンに13打数4安打、打率・308と、相性はいい。逆にマートンは、打率・158と抑え込まれている。新井兄弟は、揃って打率は1割台。福留に至っては、今季1本のヒットもない。

対マエケンにチームホームランは2本で鳥谷と坂。左の今成が、9打数5安打で打率・556とチームナンバーワンの“マエケンキラー”だが、データから見ると打てるバッターは限られている。

広島で長らくコーチを務めてきた評論家の高代延博さんは、こんな意見を持っている。

「動くことでしょう。今の阪神には何かをやってくるかもしれないという怖さがない。広島の内野は、案外とフォーメーション的な動きができないですから。揺さぶれば、アタフタとミスが生まれるかもしれない。特に初回、その立ち上がりです。ただ、普段やってきていないことをCSでいきなりと言うのは難しいかもしれません。順位決定後のゲームで訓練しておくべきでした」

野手が若手中心なので内野の守備フォーメーションが徹底されていないケースがあるという。揺さぶれ! 立ち上がりにチャンスがある! と言う意見は、阪神でチームスコアラーを務めていた三宅博さんも同じだ。

「ノムさんが常日頃から言っていたよね。立ち上がりのいいピッチャーなんてそうはいないと。マエケンと言えど、狙いはそこ。足を使う、何かしようとすることは大事ですね、ただ、阪神を見ていると、選手一人ひとりに任せてしまっている野球にしか見えないんです。マエケンのような投手の攻略は選手任せではいけない。なのに、全員でという姿勢が見えない。新井兄弟は、ひとつインサイドを見せられたら終わりだしね。巨人は、阿部が中心になって、そういうことをやっている。短期決戦では、日替わりで打線の調子が変わるようなことは少ない。一戦目で、マエケンに押さえられたら野村も打てませんよ。そう考えると厳しい、こっちも1点もやれないからピッチャーがキューキューする。広島は、若いバッターに積極性がある。キラも、振れているから、打ち損じ少ない」

和田監督の頭の中に出来上がっているマエケン攻略法も、そう変わりがないのだろう。直前の実践形式の練習では、“機動力”というものを再確認している。

難攻不落のマエケンに、阪神がどうあがくか? 勝負の世界に“負けて納得”の敗戦は少ないが、全員の意思が統一された“知の汗”を流す懸命な姿を見たいものである。

『RONSPO』編集長

サンケイスポーツの記者としてスポーツの現場を歩きアマスポーツ、プロ野球、MLBなどを担当。その後、角川書店でスポーツ雑誌「スポーツ・ヤア!」の編集長を務めた。現在は不定期のスポーツ雑誌&WEBの「論スポ」の編集長、書籍のプロデュース&編集及び、自ら書籍も執筆。著書に「実現の条件―本田圭佑のルーツとは」(東邦出版)、「白球の約束―高校野球監督となった元プロ野球選手―」(角川書店)。

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