悪質タックル問題の日本大学のアメリカンフットボールは、選手のプレーでなく、監督・コーチのプレーに注目

アメリカンフットボール(写真:アフロ)

メディアの方の参考になれば良いのだが

 日本大学のアメリカンフットボールの悪質タックル問題。ここ数日関係者の記者会見が続き、さまざまなメディアで取り上げられている。ところが、残念ながらどのメディアにもアメリカンフットボールに詳しい人が多くないようで、記者会見が「泡のなくなったビール」のようになっている。今日も多くの情報番組でこの問題を取り上げると思うが、もっとわかりやすく、発言の検証が行える点を解説する。

選手のプレーよりも、まずは監督のプレーを見よう

 2018年5月23日の、日本大学の内田前監督の発言で、「ボールを見ていたので、反則行為は見てなかった」との発言がある。ここに大きな矛盾がある。

 まず、当日の試合は、YouTubeなどで、見ることが出来るが、当日は「jnetTVfootball」が、会場でカメラ撮影を行っていたようである。事実、YouTubeには、当日の試合のダイジェスト映像が公開されている。残念ながら、YouTubeには反則シーンが映っていない。しかし、試合全体の映像があるかもしれない。その映像があれば、下記の説明部分を確認できるはずだ。

 まず反則シーンの後に、どのようなことがグランドで起きたかを説明する。今回の反則は、プレー終了後の反則である。悪質タックルを行った後、審判が黄色の布を投げ込むシーンまでが、良く報道されている。問題は、この後である。今回の反則は、「アンスポーツマンライクコンダクト」だと思われる。残念ながら試合の映像が私のところにないので、確認はできないので、ぜひメディアの方はVideoを取り寄せて確認してもらいたい。

 この「アンスポーツマンライクコンダクト」とは、文字通りスポーツマンらしからぬ行為を行ったときに取られる反則である。話をグランドに戻す。YouTubeなどで見られる黄色の布が投げられた後、審判は反則名を会場でマイクを使って、日本語で説明する。そして、日本大学は15ヤード後ろに下がることになる。それも、反則が起きてから、ここまで30秒程度の時間は費やされる。つまり、一瞬の出来事ではない。

 つまり、監督は「反則のプレー」は見ていなかったかもしれないが、反則は聞いて理解しているはずだ。またこの反則が、反則の中でも重たいものであることも理解しているはずだ。さらに監督が、本当にプレーを見ていなくて、その反則の判定に疑問があれば、審判に確認することもできる。

 しかし、内田前監督は、「反則のプレーを見ておらず」「審判の反則の説明を聞いて」「審判に確認することもなく、反則を受け入れて」「反則のため、チームが15ヤード後退したのを見ていた」ということになるのだ。したがって、「ボールを見ていたので、反則行為は見てなかった」の発言には何の意味も持っていないのである。

必ずコーチの中には、プレーを見ていた人がいるのに

 アメリカンフットボールのコーチは、実はたくさんいる。グランドには、監督や、コーチがいる。その監督やコーチがヘッドフォンをしている。ヘッドフォンは、複数のコーチ同志で会話をするためのものだ。そして、コーチの中には、日本の大学の試合の場合では、観客席から試合全体を眺める人もいる。通常、スポッター席に座っているこのコーチは、チーム全体の動きを見ている。そして、フォーメーションの変更が必要な場合などに、さきほどのヘッドフォンを使って、グランドのコーチと会話をするのだ。

 一般的には、このような悪質な反則が起きた時には、スポッター席のコーチが、この反則について監督に報告するはずだ。チームの中の報告がスムーズで、監督のヘッドフォンがダミーでなければ、報告するはずである。したがって、「ボールを見ていたので、反則行為は見てなかった」という発言と関係なく、チームとしてはこの反則を理解して、そして何も問題がなかったように、次のプレーに入ったのだ。。

選手は、反則を認識して反則している

 では、当事者の選手はどう認識していたかというと、「審判の笛は聞こえていたか」 日大選手会見、元関学QB有馬隼人の「重い質問」にも書かれているが、有馬隼人氏の質問から、明確になった。

有馬氏「試合当日の5月6日、どういう形であれ、あなたはグラウンドに立ったわけです。最初に反則をしたプレーで、(プレー終了を告げる)審判の笛は、聞こえていましたか?」

選手「(相手のQBがボールを)投げ終わっていたことには、気付いていました」

有馬氏「プレーが終わっていたということは、認識していたと...(数秒間の沈黙)。わかりました。ありがとうございます」

 つまり、選手は反則を認識して、反則を行っているである。あまりにも、悲しい。

メディアの方へ、反則プレーの後の映像を検証してほしい

 今回の問題、反則の瞬間の映像が流れるが、重要なのは反則の後、次のプレーが始まるまでの、監督・コーチの動き(プレー)である。その映像を入手して、分析すれば、今回の問題の本質に近づけるだろう。

 そして、何より大学のスポーツは、教育の場であることも忘れずに、メディアでも取り上げて欲しい。このプレーで、コーチは選手に何を教えたかったのだろうか。教えたいのではなく、「勝利」による別なものを得ようとする大人のエゴしか感じられないのだが。

最後に、アメリカンフットボールのブランディングを毀損しないために

 おそらく、ここ数日の記者会見を見た、アメリカンフットボールの関係者は、私以上に今回の問題を理解しているだろう。このままだと、アメリカンフットボールのブランドが地に落ちることも感じているだろう。今は、アメリカンフットボールが、良くも悪くも注目されている。

 マーケティングの考えでは、「無関心」な人にアメリカンフットボールを認知・理解してもらうより、「ネガティブなイメージ」を持っている人に、きちんと納得できるようにコミュニケーションを行うほうが、「ファン」になってもらう近道である。注目が集まっているからこそ、スピードをもって、今回の問題に、アメリカンフットボール界全体で対応することで、ファンや理解者が増えるはずだ。このまま、何もしないことは、もっともよくないことである。

 今は、「日本大学」のブランドの問題であるが、きちんとこの問題に対応しないと「アメリカンフットボール」のブランド自体も失墜する。アメリカンフットボールは、選手・監督・コーチすべてが、自分の役割を行うスポーツである。今回は、監督、コーチのプレーが問題である。ぜひ、ここにきちんとメスを入れて、日本でアメリカンフットボールのブランドを下げないことが重要だ。