ブランド、商品に大きな差がない今。重要視される、マーケティングにおける「顧客体験」の調査って何?

クアルトリクスのビル氏とクアルトリクスジャパンの熊代 悟 氏(筆者撮影)

ゾゾタウンのトップ画面にはクーポン対象商品が並ぶと顧客は満足しない

 2018年2月26日に「『ゾゾ頼み』から脱却へ、アパレル企業の苦闘」というニュースがあり、読まれた方もいるだろう。その中に、このような文章がある。

 さらに悩ましいのが、出店各社が乱発するクーポン値引きだ。「ゾゾはセレクトショップ系のブランドが多くておしゃれな印象が強かったが、ここ2年で楽天に出店するような安価なブランドの商品が大量に増えた」(大手アパレル幹部)。

 ゾゾタウンのトップ画面にはクーポン対象商品が並び、店頭では競合にならなかったようなブランド同士での価格競争が過熱。値引き合戦は利益率の悪化に加え、ブランドイメージの毀損にもつながりかねない。

出典:ヤフーニュース

 ゾゾタウンで値引きすることが、ゾゾタウンの「おしゃれな印象」というブランドイメージを低下させ、そして取り扱っている服のブランドのイメージも低下させるではないかという指摘である。

 値引きといえば、一般的には商品を購入するお客様にメリットがある話だろう。しかし、「安売り」を前面に出してしまうことで、ゾゾタウンがもともと持っていた「おしゃれな印象」から、極端に言えば「安売りの印象」が強くなる。このことは、ゾゾタウンのロイヤルユーザーには、受け入れられないだけではなく、ゾゾタウンの利用回数が減ることにつながる可能性すらある。

ラグジュアリー・ブランドは、購入するときの体験も重要

 マーケティングの国際カンファレンスで、講演者の方が「ラグジュアリー・ブランド」について面白いことを話していた。「ラグジュアリー・ブランドは、どこで買うか?そして、どんな購入体験かが重要だ。」

 ラグジュアリー・ブランドは、「モノ」としてみれば、安価なブランドの商品と機能は同じかもしれない。しかしお客様は、ラグジュアリー・ブランドに、そのブランド自身の持つイメージや購入時の接客のサービスなどに、そのブランドに相応しいものを求める。

 このように、「顧客体験」が、現代のマーケティングでは重要になり始めた。そして、多くの企業がこの「顧客体験」を最適なものにしようと調査・研究を行っている。手始めに、「顧客満足度」という指標をさまざまな企業が取り始めているが、「顧客体験」を正確に把握するためには「顧客満足度」だけでは不十分だ。

 さきほどのゾゾタウンの事例で考える。「値引き」によって、「顧客満足度」が大きく下がるわけではないだろう。下がるのは、ゾゾタウンのサイトで感じるブランドイメージである。今まで信頼していたブランドイメージと比べて安っぽく感じるという点だ。つまり、「顧客満足度」を把握するだけでは「顧客体験」の全体像は理解できないのだ。

「顧客体験」を理解する調査手法はほとんどない

 このように、「顧客体験」が重要になった今、「顧客体験」を指標化する調査手法は皆無だ。企業によっては、顧客満足度をアンケートでとっている。「今回のサービスは、満足いくものでしたか?」などの調査をよく目にするはずだ。この調査は、あまり意味がない。なぜなら、そもそもお客様ごとに、期待している「満足度」が異なるのに、それを闇雲に取得しているからである。

 もうひとつは、この「顧客体験」が、その企業の従業員の業務や、商品・サービスの価値にも関係がある。わかりやすくいえば、安価なホテルと、高級なホテルでは、期待する「満足度」が、同じお客様でも異なる。

 このように、「顧客体験」をきちんと理解する手法は、ほぼ存在していなかった。

「顧客体験」をデータ化するとは

 顧客体験などを調査するサービスは、ないわけではない。2018年2月26日に日本に上陸した、クアルトリクスジャパン(正式名称:QJL Technologies合同会社)という会社が手掛けている。この会社は、もともとは大学のサービスの満足度を測定するサービスからスタートした。そのサービスを企業に拡張したのだ。

クアルトリクスが提供する4つの分析ツール(発表資料から)
クアルトリクスが提供する4つの分析ツール(発表資料から)

 クアルトリクスジャパンのカントリーマネージャー熊代 悟さんによれば、すでに日本での利用企業も35以上あり、分析ツールもすでに日本語対応しているとのこと。

クアルトリクスジャパン カントリーマネージャー 熊代 悟 氏(筆者撮影)
クアルトリクスジャパン カントリーマネージャー 熊代 悟 氏(筆者撮影)

 顧客体験の調査に使うデータもユニークだ。o(オー)データと、定義される営業・販売、

顧客情報、生産、財務、製品品番SKU、人事といった業務で発生するデータと、x(エックス)データと定義される、従業員エンゲージメント、顧客満足度、ブランド認知度、ユーザ体験(UX)、製品満足度といったエクスペリエンスデータを活用するところだ。特に、この業務で発生するデータを分析することは、とても重要だろう。たとえば、コールセンターなどで、いくらお客様への回答が完璧でも、その回答を得るまでに長時間待たされれば、顧客の満足度は下がる。

 

 この「顧客体験」について調査会社は、海外ではすでに多く存在する。

他の顧客体験の分析ツール(発表資料から)
他の顧客体験の分析ツール(発表資料から)

 まだ、日本では顧客体験の分析ツールは多くないが、今後さまざまなサービスが上陸するだろう。

私の「顧客体験」も理解したい

 「雰囲気のあるビア・ホールで、ビールを飲むと美味しいと感じる」と昔から言われている。もちろん、そのホールのマスターのビールの注ぎ方によって味や、喉ごしは変わるのだろう。しかしそれ以上に、その「ビア・ホールの雰囲気」が、そのビールの味に影響があると思う。

 このような感覚的な「顧客体験」も、このような調査サービスで理解できるのであろうか。簡単なアンケートや、業務の中から得られたデータから、「顧客体験」が理解できることはとても魅力的である。今まで、なんとなく感覚で行っていた、お店での接客や雰囲気作り、メーカーのコールセンターでの対応などの改善も行える。

 そして、この「顧客体験」が、簡単に測定可能になり、最適化ができるようになれば、今までの「品質」に加えて、「顧客体験」という指標もマーケティングの重要な指標になるのだろう。

顧客体験は最適化できるのか

 さて、今後増えてくる「顧客体験」の調査により、顧客体験は良くなるのだろうか。答えは、Yesだ。今まで、企業ごとに調査していた「顧客満足度」は、各企業でアンケート内容も調査手法も異なっていた。しかし、このような専門の調査会社が出来ることにより、調査手法の知識はこの会社に集まる。そのことによって、調査の精度が上がるだろう。

 調査を行いたい企業は、調査手法を確立したいのではなく、その調査を使って「顧客体験」を向上させ、ビジネスを成功させたいのだ。調査を、専門の会社のサービスを使うことにより、いままで以上に「顧客体験」の向上方法を考える時間が出来る。結果、「顧客体験」はより良くなり、最適な「顧客体験」を提供できる日もくるだろう。

 「おもてなし」の国、日本。今までは、日本人による日本人のための「おもてなし」だったかもしれない。これから、東京オリンピックに向けて、観光客がますます増える。そのような時代になれば、ますますこの「顧客体験」の調査は重要になるかもしれない。「おもてなし」の国、日本のポジションを維持し続けるためにも。