セレッソ大阪がサポーターに出資をお願い なぜうまくいかないのか

セレッソ大阪(写真:田村翔/アフロスポーツ)

セレッソ大阪がクラウド・ファンディングをしている

 マクアケ(Makuake)という、クラウド・ファンディングのサイトがある。クラウド・ファンディングとは、あるプロジェクトや仕事のために、インターネットを使って、小額の出資を個人にお願いするものだ。そのサイトを眺めていたら、面白い案件をみつけた。セレッソ大阪のクラウド・ファンディングのページだ。期限は、2018年2月28日までと残り僅か。そして、目標金額は600万円だが、2月21日時点で、半額も集まっていない。

 セレッソ大阪は、Jリーグ所属で昨年のルヴァンカップの覇者だ。そんな人気サッカー・チームがクラウド・ファンディングを行っていることに非常に興味がある。そして、セレッソ大阪という有名なチームであれば、このクラウド・ファンディングに、もっとお金が集まっても良いのではと思うが、そうなっていない。そこで、このクラウド・ファンディングの取り組みについて、マーケティング視点で、特に問題点を考察してみる。

バナー広告の失敗

 クラウド・ファンディングの仕組みは、まずクラウド・ファンディングを行っていることを告知するところから始まる。私のように、マクアケのサイトに何かないかと探している人もいるだろう。今回の場合、支援して欲しいのはセレッソ大阪のファンだろうから、一番の告知はセレッソ大阪のファンクラブや、セレッソ大阪のサイトなどになるだろう。まずは、セレッソ大阪のサイトを見ると、このクラウド・ファンディングの情報は見あたらない。

 

 探してみると、「まいど!セレッソ」というセレッソ大阪の公式ファンサイトには、クラウド・ファンディングの情報があった。なんともよくわからないバナーになっている。実際のバナー広告は、ここに掲載しないので、サイトhttp://www.mycerezo.jp/のバナーを探して欲しい。ページの最初の部分に、背景が赤いバナーが見つかるはずだ。

 バナー広告には「0INJURY PROJECT」「ハナサカクラブ10周年記念誌発刊!」「目標金額600万円。クラウド・ファンディング実施中2018.02.27 18:00まで」と複数のメッセージが書かれている。このバナー広告を最初に見た人は、ほとんどクリックしないのではないだろうか。理由は、単純にわかりにくいからである。バナー広告の基本は、バナー広告の先に、どのように魅力的なことがあるか、どのようなお願いしたいことがあるのか、わかりやすく伝える必要がある。

 (以上は、記事執筆時のバナー広告です。その後、バナー広告が更新され、「みんなのチカラで選手に酸素カプセルを届け、怪我からの早期復帰を後押ししよう!」というメイン・コピーに変更されました。2018/2/21 11:50 加筆)

 広告では、バナー広告も含め、「わかりやすさ」が重要なのである。しかし、このバナー広告はわかりにくい。その理由は、メッセージが3つもあることである。なぜ、3つのメッセージがひとつのバナーに載るようになったのだろうか?きっと、一番伝えるべきことが何か悩んでしまい、メッセージをひとつに絞ることができなかったのではないだろうか?

クラウド・ファンディングの本当の目的は

 では、このクラウド・ファンディングの本当の目的はなにだろうか。今回のマクアケの該当ページを確認してみる。

 まず、クラウド・ファンディングのタイトルは、「【セレッソ大阪】もう選手にケガで悔しい思いはさせない。世界最高の環境を皆で創ろう」というタイトルである。これだけでは、何にお金が必要なのかわからない。そこで、支援するコースをいくつか見てみる。

3,000円コース

◆ ハナサカクラブ10周年記念誌にご芳名記載(小サイズ)

◆ セレッソ大阪LABからのお礼メッセージ

◆ 今後のプロジェクトの進捗報告

とある。あれ、今後のプロジェクトとあるが、このプロジェクトとは何だろうか?「ケガで悔しい思いはさせない。世界最高の環境を皆で創ろう」というのがプロジェクトなのか?でも、ここだけでわからないので、他のコースも見てみる。

100,000円コース(税込)

◆ 酸素カプセルへのご芳名

◆ ハナサカクラブ10周年記念誌

◆ ハナサカクラブ10周年記念誌にご芳名記載(特大サイズ)

◆ セレッソ大阪LABからのお礼メッセージ

◆ 今後のプロジェクトの進捗報告

とある。ここでも「今後のプロジェクト」という言葉が出てくるが、初めて「酸素カプセル」という「購入物」の名前が出てくる。

そして、このページの下のほうに、今回のクラウド・ファンディングの予算計画がある。

【セレッソ大阪ハナサカクラブ 記念誌製作費】 2,700,000円

【医療設備拡充費】2,100,000円~

【手数料】1,200,000円~

この医療設備拡充費で、まずは酸素カプセルを購入の予定とある。

 ここまで読み、少し見えてきたことは、「【セレッソ大阪】もう選手にケガで悔しい思いはさせない。世界最高の環境を皆で創ろう」とは、セレッソ大阪の「医療設備拡充」のプロジェクトであること。その支援をお願いする人たちに、参加の証として「セレッソ大阪ハナサカクラブ 記念誌」を発行するという構造なのだ。非常にわかりにくいプロジェクトだ。

 さらに、今回は皮肉なことに、この医療設備のクラウド・ファンディングの期間中に、清武、右ふくらはぎ負傷で全治6週間というニュースが舞い込んできた。ファンとしては中期的な投資よりも、短期的な問題に目がいってしまい、ファンドが集まらなくなっているのかもしれない。

もっとわかりやすいバナーに

 話を、バナー広告に戻す。ここまで整理すると、実はバナー広告はもっとシンプルにできたはずだ。「皆さんのサポートで、セレッソ大阪に酸素カプセルを。3000円から支援可能です」ということが一番伝えるべきメッセージだったのだ。

 セレッソ大阪として、最初のクラウド・ファンディングということもあり、おそらく関係者との合意形成や整理が大変になったのだろう。その中で、このようなわかりにくいバナーになったのかもしれない。

もっとわかりやすいクラウド・ファンディングのタイトルに

 もうひとつ、このクラウド・ファンディングのプロジェクトのタイトルだ。「【セレッソ大阪】もう選手にケガで悔しい思いはさせない。世界最高の環境を皆で創ろう」ではなく、「セレッソ大阪に、みんなの支援で酸素カプセルを導入しよう」とかにできたはずだ。そうすることで、ファンの間でもこのクラウド・ファンディングの情報がスムーズに流れるはずである。

なぜ、このようなことが起こるのか

 今回起きていることは、他の企業や組織でも起きてしまう。まず、クラウド・ファンディングをすると決まっても、どこまでお金が足りないと素直に伝えるべきか。特に歴史ある組織、企業では、ファンやお客様に支援してもらうことそのものが、周囲に迷惑をかけている、と考えてしまうこともある。おそらく、今回のセレッソ大阪の場合も、「酸素カプセルを、本当にファンの支援で購入してよいのか」と考えたのかもしれない。

 しかし、現在では企業や組織と、そのお客様や支援者が、共存・共創する時代になっている。今回の場合であれば、ファンはサッカー選手が、酸素カプセルによりケガが少なくなり、それによって活躍する姿を見たいと思っているのだろう。その気持ちは、チームもファンも同じである。

 今は、組織、企業の考えていることを素直に伝え、協力して欲しいことも素直に伝えることが、より求められているのである。お客様や、ファンも、普段は組織や企業で働いており、組織や企業の状況は理解しているはずだ。

残り数日で目標にたどり着くのか

 この原稿を書いている間にも、クラウド・ファンディングの残り時間は減っている。まだまだ、目標金額には届かない。しかし、少なくともこの記事で今回のセレッソ大阪のクラウド・ファンディングの内容の整理はさせてもらった。読者の中に、セレッソ大阪のファンの方がいて、この活動を理解し、支援する方が増えることを願う。