業績不振の大塚家具 提携戦略は実を結ぶのか

家族と家具[写真:FREEIMAGES]

 面白い事業提携が発表された。大塚家具と貸し会議室運営のティーケーピー(TKP)の提携である。大塚家具の空きスペースをTKPが会議室として運用することで、お互いのビジネスを補完・強化しようとする取り組みだ。利害が一致しているように思える。Win & Win の提携に見える。しかし、マーケティング的に考えると、おおきな「?」が浮かぶ。以下、マーケティングの視点で考えてみる。

大塚家具のターゲットとTKPのターゲットは同じか

 まずは、顧客となるターゲットである。大塚家具のターゲットは、個人の消費者。TKPのターゲットは、法人で会議室が足りない会社の、一般に総務だろう。ターゲットが異なる顧客像に、どのようにリーチするのだろうか。大塚家具の顧客にTKPの事業を紹介しても、個人客は貸し会議室には興味がないだろう。一方、TKPで貸し会議室を借りたお客に、個人宅の家具は如何ですかと、紹介しても、ピンと来ないのではないだろうか。

 このような提携で上手くいくのは、お互いのターゲットが近く、2つの提携で顧客像が、増える場合である。例えば、飛行機会社とホテルの提携は、同じ旅行ユーザーだが、顧客リストが少しずつ異なる。このような場合は、マーケティング的に考えると、業務提携は上手くいく。

 今回の提携では、それぞれの事業のターゲットに重なりも、共通のニーズもなく、この提携からそれぞれの顧客が増えるとは、考えににくい。

それ以上に問題なのはBrand

 とはいえ、大塚家具も、TKPも顧客名簿を持っているので、既存の顧客に接触すれば、貸し会議室事業は、顧客数は増えなくても、利用機会が増えることで、伸びる可能性がある。問題は、大塚家具のBrandではないだろうか。大塚家具の一部の場所を、貸し会議室にすることは、そのお店での売り上げが良くないことを明示する。大塚家具の顧客から、大塚家具のBrandの一つの価値だと思われる「良く売れているお店」というイメージが失われるかもしれない。

 さらに、大塚家具というB2C向けのBrandと、TKPというB2BのBrandの融合は、シナジーがなさそうだ。それ以上に、お互いのBrandがお客様にとって分かりにくく、結果それぞれのBrand自身の明確なイメージも薄くなるかもしれない。「あの大塚家具の2Fの会議室です」などと話すお客様が出てくるのである。こうなれば、大塚家具はBrandの名前ではなく、単に建物の名前に変わってしまう。

 つまり、今回の提携で大塚家具はBrandイメージを大きく失う可能性がある。一度、失ったBrand価値を復活させるのは失う速さに比べて大変である。このことを、今回の提携では議論されたのだろうか。ここには、大いに疑問が残る。

事業の提携の考えるときに3C分析が必要

 マーケティングには3C分析というフレームがある。Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)である。今回の事業提携は、Companyの事情、そしてCompetitorとの競争から決定されたと思うが、肝心のCustomerを置き去りにして議論されたのではないだろうか。

 多くの事業は、Customerに支持され、助けてもらわないと、継続的な成長はないのである。大塚家具と、貸し会議室運営のティーケーピー(TKP)の提携の結果は、数年後に出るだろうが、果たしてどのような結果になるか、マーケッターとしてはとても興味がある。