少子化時代に、高等教育は生き残れるか?大学経営に足りない視点

政治的な視点ではなく、マーケティング的視点での考察

 昨今、学校の新規開校、開設が、選挙や政治の話題になった。新規の学校の開設。それは、まだまだ教育というビジネスが成長する余地があるからである。いや、実際には日本は少子高齢化の一途をたどっており、待っていれば大学に学生が集まるという時代はとっくに終わったのだが。

 今回は、教育の事業の中から、高等教育の大学を取り出し、大学のビジネスをマーケティング的に大胆に考えてみる。それは、私も東京大学で客員教授をさせて頂いており、考えるところがいくつかあるからだ。今後の大学について、マーケティング的な視点で考えると課題が見えてくる。その考え方の基本は、将来の大学ビジネスの3C分析だ。きっと、他の領域のマーケティングにも役に立つだろう。

マーケティングの基本3C分析とは

 マーケティングでは良く、3C分析という、フレームを使う。この3Cとは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の単語の頭文字をとったものだ。マーケティングを考えるときに、この3者の視点で、きちんと網羅的に考える必要がある。

 では、具体的には大学の3Cとは、誰になるのだろうか。

 まず、考えるのはCustomer。以前であれば、Customerは受験生、つまり高校3年生や、予備校生であった。しかし、現在ではこの状況は大きく変化した。まずは、受験生の両親がかなり鍵を握っている。従って最近では、受験生の親もCustomerに含まれる。多くの大学では、大学の説明のために、Open Campusというイベントを開催している。これは、少子化に伴い、どの大学も受験生集めに苦労しているからである。そのOpen Campusには、多くの親御さんが参加される。そして、受験生と親御さんの会話によって、受験校が絞られていくのである。

 次にCompetitorは、誰だろうか。今までの大学は、他の大学だけが競合だったとっても過言ではない。しかし、昨今では海外の大学や、専門学校も競合になり始めている。多くの高校生は大学の就職のための過程と考えている。就職のために、特別な技能や知識を習得するべきか、総合的に学び学歴というタイトルをつけるかにより、受験生の進学の選定は左右される。つまり、大学のCompetitorは、以前よりも多様化しているのだ。

 最後に、Company。これは明確で、大学の職員と教授などの先生になる。実はここが、大きな問題なのだ。

大学が、ビジネスとして残るには

 今までの大学は、マーケティング活動をあまり行っていなかっただろう。それは、受験生が毎年増加しており、大学を作れば、倍率1.0以上の受験生が応募していたこと。大学を卒業すれば、就職もスムーズに行えていたことなどの理由がある。まぁ、受験生の増加という環境にあぐらをかいていた。

 しかし、少子高齢化の現在は、高校卒業直後の受験生は減少している。そして、大学卒業をしたからといって、必ずしも希望の職に就けるという保証はないのだ。大学の入学、そして大学卒業後の環境は変わり続けている。

受験生集めに、マーケティングを行った大学

 そこで、最初に大学が考えたのが、高校生にむけた大学の説明。つまり、宣伝というマーケティング活動である。最初は、受験生向けにOpen Campusや、大学説明資料の送付などを中心に行っていた。今での多くの大学のマーケティング活動のKPI (重要数値目標)に、大学の資料請求の数や、大学の願書の取り寄せの数がある。

 しかし、次第にこの活動も、ほぼすべての競合の大学で行われることになり、あまり差別化できなくなってきた。そして、Open Campusには、親御さんも参加されるようになり、親御さん向けのコンテンツも必要になってきた。つまり、以前より大学の宣伝というマーケティング活動も難易度が高くなってきたのである。

大学内で、大学のBrandingについて考えているのか

 今まで、大学は受験生の学力によってポジションが決まっており、大学のBrandについては、大学の内部では議論してこなかった。しかし、環境は大きく変わり、受験生が減っていき、最近では大学志願者数が、応募定員を下回る大学も出てきた。また、日本版大学ランキングのように、第3者が大学のランクを発表するようにもなってきた。これらの理由から、大学も大学のBrandについて考えないといけなくなっている。

 大学のBrand。つまり、一般のマーケティングで出てくる、その大学のユニークネス、守り続けているポリシーなどを明確にしないといけなくなってきた。今まで、このような大学のBrandingは、大学の学長と、一部の事務方で、議論されてきたが、3C分析でのCompanyのメンバーできちんと大学のBrandingを議論し、Brandストーリーを受験生に伝えていかないといけないのでしょう。ここには、Companyの中での意見が、きちんと形成されないなど大きな問題がある。しかし、大学の中の人が、大学の紹介をきちんとできないようでは、大学を選択しようとしている受験生や親御さんに、きちんとした大学のイメージも伝わらず、その結果、選ばれなくなるのだ。

あるべき大学のBrand

 このように、3C分析を大学に行うと、さまざまな問題が浮かび上がってくる。

 まずは、Customerのとらえ方が甘かった点。今までは、受験生にわかりやすく言うと大学の難易度を、模試を行う会社にランク付けしてもらい、大学からはCustomerに積極的に説明していなかった。しかし、これからはCustomerが、受験生と親御さんであることを理解して、自分たちの大学がどのような大学であるか、きちんと説明・コミュニケーションしていく必要がある。

 次に、Competitorが、同じ大学だけではないということの自覚。実は、日本では平成28年度学校基本調査でも、約60%程度の学生しか、大学に進学していないことも事実である。なぜ、大学が選択されないのか。なぜ、専門学校に進む学生がいるのかも分析して、大学に進学する理由を大学自身が説明しない限り、大学への進学率は上昇しない。このままでは、大学ビジネスは成長しないのだ。

 最後に、Companyだ。今までの、Customerへの説明、さらに大学を選択しないCompetitorに取られる高校生にきちんとした説明をするには、大学の中で「自分たちの大学」の定義をすることが急務である。つまり、大学のBrandを確立して、大学のBrandストーリーを積極的に関係者に説明する。今までのように、受験は大学の総務の仕事、教授は学生が来るのを待っている、という時代はとっくに終わったのだ。

もうすぐ受験シーズン

 もうすぐ受験シーズン。今年の受験シーズンは、大学に関係のない方も、発表される大学の倍率に注目してみては、どうだろうか。その倍率や受験生の人気度、話題の考察から、大学ビジネスのマーケティングについての考察ができるのではないだろうか。そして、それは他の領域のマーケティングのヒントにもなるはずである。