メディア x プラットフォーム=プラティシャーとは?

platform + publisher

2014年8月現在、メディアとサービスプラットフォームの融合が加速している。

さまざまなサービスやテクロノジーが複合的に交わる様子は、多くの事業領域で見られるようになっているが、今回紹介するのは「コンテンツパブリッシャー」と「パブリッシングプラットフォーム」との融合を称する造語――プラティシャーだ。

プラティシャーはプラットフォーム(Platform)とパブリッシャー(Publisher)を組み合わせた造語である。言い出したのは、SuliaというソーシャルサービスのCEOであるジョナサン・グリック氏で、最近人気を集め始めたブログメディア re/codeに寄稿した「Rise of the Platishers」で紹介されている。

簡単にいうと、プラティシャーとは消費者が誰でも利用できるパブリッシングツールでありながら、同時にみずからコンテンツを生産するメディアとしての側面を併せもつ企業を指す。また、メディアとして自社でコンテンツを抱え、そのコンテンツを配信するための仕組み(CMSなど)も自社でつくり、かつその仕組みを誰でも利用できるように公開している企業も同様だ。

つまり、テクノロジー企業がメディア企業を真似しはじめると同時に、メディア企業もテクノロジー企業の真似をしはじめている。このクロスオーバーの渦中にいるプレイヤーたちを、ジョナサン・グリック氏はプラティシャーと呼んでいるのだ。

たとえばこのYahoo! ニュースというメディアは今のところプラティシャーではない。独自でCMSをつくってはいるが、そのCMSをオープン化しているわけでない。CMSを使える人は限られている。今後、このCMSをオープン化し、より多くの人に利用させはじめたら、それがプラティシャーへの道である。すべての人に開かれたプラットフォームをもち、同時にメディアであろうとする。プラティシャーだ。

グリック氏はプラティシャーの代表例として、ブログを利用したメディア企業であるGawkerと、[http://medium.com/ エヴァン・ウイリアムズ率いるMediumを挙げているが、日本で言えばアメブロがまさしくプラティシャーの代表であるといえるだろう。

芸能人を中心とした著名人をブロガーとして集めて、それぞれのブログ自体とポータルであるameble.jpを広告媒体として利用する。さらにそのブログシステムそのものを一般の消費者にも無償で提供する。

グリック氏は、パブリッシングツールをプラットフォームとして提供するテクノロジー企業がメディア事業の旨味に気づき、メディア企業も自社CMSをサービスとして提供するメリットに気づいたので、両陣営のクロスオーバーが起きていると述べているが、アメブロの例をみれば、読者のみなさんはそれ自体を新しいアイデアとは思わないだろう。

僕は、Bloggers.comやSix Apartのtypepad、そして世界的に見ると現在多くの若者の支持を集めているTumblrが日本での市場獲得に失敗しているのは、アメブロの存在に起因すると考えている。アメブロがテクノロジー面で優れているからではなく、メディアとしてマネタイズを優先する戦略があったからだ。

こうしたクロスオーバーは、小売・流通の世界でも現れている。たとえばセブンイレブンを筆頭とするコンビニチェーンやイオンなどのGMS(総合スーパーマーケット)は、PB(プライベートブランド)の開発と販売に力を入れはじめている。つまり、他社ブランドの商品を仕入れて販売するモデルから、自社ブランドの商品の販売にシフトしようとしているのである。これは小売業者がメーカー、製造業へのクロスオーバーをしようとしていることだ。

無償EC提供を事業としているBASEなどは、現時点ではEC機能のサービスプラットフォームだが、近い将来自社で製品を揃えてEC利用者に提供するようなクロスオーバーを起こすかもしれない。このテクノロジーとコンテンツ(それが情報であればメディアだし、商品であればメーカー)を両方兼ね備える事業形態は、いたるところでブームを起こしているのである。

その意味で、このプラティシャーというひとつのムーブメントを理解しておくことは、とても重要である。そしてもっと大事なことは、このムーブメントの本質をつかみ、自分たちが所属している市場においても同じことが起きているか、やがて起きる可能性があることを理解しておくことなのだ。

via Mdn Interactive