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「老いては子に従え」ーiOSの背を見て開発されるMac OS X

小川浩株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。
iOS8の登場は今秋

WWDC 2014は、大好評のうちに幕を閉じた。ソフトウェアの発表に終始し、新しいハードウェア、デバイスの発表がなかったことに肩すかしを食らった人も多かったようだが、僕は最初からハードの新製品はない、と踏んでいた。

今回の発表でさらに明らかになったが、Appleは基本的にiOSを先行して開発し、そこで得たフィードバックをMac OS Xに取り入れるという開発プロトコルを採用している。もともとMac OS Xから派生して生まれたiOSだが、いまや文字通り「老いては子に従え」の格言のように、iOSが有用性を実証した機能がMac OS Xにもうまく融合され、シームレス化が進んでいる。

MicrosoftもGoogleもOSを有し、それぞれモバイル用とデスクトップ用を開発し続けているわけだが、なぜか彼らにはAppleのようなプロトコルが明確に存在していない。Appleの最大のライバルであるGoogleにしてもモバイルOSはAndroid、デスクトップやそれ以外にはChromeをベースとしており、一貫性がない。(GoogleがデュアルOS戦略を採っているのは、本当はWebOSであるChromeで統一したいが、Androidが思いのほか速く普及に成功したために引っ込みがつかないためだと思う)

Appleだけが、モバイルOSとデスクトップOSの間にある差異を埋めつつも、現実の使い勝手や利用状況に合わせて程よい進化を遂げるすべを理解しているのが現状だ。

OSに関しては、Androidの成長を評価する人も多いことは分かっているが、僕は常にデスクトップOSとモバイルOSの関係性にもっと眼を向けるべきだと思う。Androidについていえば、いつか必ずChromeとの間の存在意義の矛盾が露呈して問題化するだろう。どちらかのOSを捨てなくてはならない状況にGoogleは直面するはずだ。それはそう遠くない未来だと考えている。

Microsoftも同じだ。Window8を僕は全く評価しないが、それはモバイルで成功していないのに、モバイルOSぽいUIをいきなりデスクトップに持ち込むからだ。

その意味で、iOSとMac OS Xにおける整合性と、その進め方の巧みさがAppleの現在の最大の資産であると思う。

この秋にiPhone6が複数画面サイズで発表されるという噂が流れており、多くのAppleウォッチャーを不安にさせているが(ジョブズが生きていたら絶対に採らない戦略だからだが、既にiPadで同じことをやっているクック陣営だけに、おそらくほんとにやってしまうだろう・・)、ハードウェアにおける”確信”と”革新”は、ジョブズ時代と比較して相当に揺らいでしまっているものの、ソフトウェアにおけるそれは、いまのところ相当にうまく舵取りが進められているようだ。

株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。

複数のスタートアップを手がけてきた生粋のシリアルアントレプレナーが、徒然なるままに最新のテクノロジーやカッティングエッジなサービスなどについて語ります。

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