モバイルオンリー世代によるWebデザインの死

画像や動画などの撮影から編集、加工の技術などのプリミティブな領域の重要になる。

先日見かけたある記事で、WordPressを保有するベンチャー企業AutomatticのCEOのコメントが気になった。

WordPressはオープンソース型CMSとして無償配布していると同時に、SaaSとしてWordPress.com経由でWebサイトをオープンできるような仕組みを提供している。シェア的にはほぼ半々とのことだが、このシェアは数年で大きくバランスを崩して自社サーバ上でWordPressをホストする企業がほとんどになるというのである。

前回の記事でWeb構築サービスを提供するベンチャー企業の躍進を伝えたが、彼らの多くはWordPress.comと同様に自社のWebサービス上へCMSを置き、広くユーザーに提供している。Automatticとしては、WordPress.comで勝負するのではなく、オープンソースを配布し、プラグイン提供やサポートで利益を出すディストリビューション型ビジネスに特化していくというわけだ。つまりAutomatticは、大企業を中心としたビジネスモデルにフォーカスをあてるということだろう。

ご存じかと思うが、WordPressは2014年時点で多くの主要Webサイトが採用している世界最大規模のCMSだ。もとはブログ構築システムだったが、さまざまなプラグインツールやテンプレートの拡張により、大規模な企業サイトの構築からコンテンツ管理をまかなえるCMSへと成長した。ブログの領域ではMovableTypeの後塵を拝していたものの、企業向けのCMS分野への進出を契機にやがて逆転し、現在では圧倒的な差をつけている。

台頭著しいWixやWeebly、SquareSpaceなどのWeb構築サービス企業は、基本的には中小企業向けのサービスといえる。というより、大企業はどうしても自分たちが直接管理するサーバ環境にWebサイトを置きたいという欲求が強いので、必然的に彼らを避けがちだ。

Automatticは、彼ら新興企業との直接対決を避けると同時に、みずからの陣地を固く守り、侵入を妨げる戦略をとろうというのだろう。そのために、Automatticは1.6億ドルもの巨額の資金調達で兵站の充実を図っている。

もともとWordPress.comにしてもそのほかのSaaS型Webサイト構築サービスも、一般企業やユーザーがサーバを購入したり、データセンターの契約を行なう手間やコストをなくすことで、Web制作会社やホスティングサービス企業を無力化しようというビジネスモデルだ。しかし、最近ではAWS(Amazon Web Services)をはじめとするクラウドコンピューティングのプロバイダが急増し、企業が自前のサーバやネットワークをもつことに躊躇する必要がなくなっている。Automatticとしては、そうしたクラウド環境の充実という時代が自社の後押しをすると考えているのだ。

Web制作に関わる仕事をされている方も多いと思うが、HTMLやCSSなどの基本知識はいつまでも必要かもしれないものの、それらを巧妙に駆使してWebサイトをつくり込んでいく時代は、ほぼ終わりかけている。

現在ではWordPressを使いこなすか、そのほかのWeb構築サービスを使うかという二択の、新しい時代が近づいている。逆にいうと、HTMLやCSSなどの基本的な知識でさえもブラックボックス化されてきているが、そのぶん画像や動画などの撮影から編集、加工の技術という、よりプリミティブな領域の重要性があがっているといえるのではないか。

つまりWebサイト全体の設計やデザインは、さほど重要でなくなる。ただでさえスマートフォンでしかWebサイトを見ない層が増えており、狭い画面で複雑なデザインは鬱陶しいだけになっている。ということは、即座に情報をつかみやすく、関心を引きやすい写真や動画のつくり方・使い方に再び焦点があたる時代へと、業界が変わりゆくのではないか。

via Mdn Interactive