日本人だけが知らない、欧米スタートアップにおけるWebサイト構築サービスの台頭

画像重視。

Webサイト構築サービスベンチャーに注目しよう

国内ではほとんど知られていないが、実は欧米では、Webサイト構築サービスを主力にするスタートアップの躍進が注目されている。

彼らの多くは、HTMLやCSSの知識を必要とせず、WYSIWYG型のWeb制作ツールと運営用のサーバ・ネットワークも同時に提供するという統合型のサービスだ。もちろん昨今のサービスであればモバイル対応もなされている。昨年には代表的なWebサイト構築企業であるWixがNASDAQに上場をはたしているし、2014年に入って大型増資に成功したスタートアップのニュースも続いている。もはやWordPressやMovableTypeでWebサイトを制作している場合ではないのかもしれない、とまで思ってしまう。

まずプレイヤーの紹介をしよう。

Wix.com

イスラエルのベンチャーであるWixは、2013年11月にIPOをはたした。1.27億ドルを調達し、企業価値はIPO当時で7.50億ドル。これはイスラエル企業のIPOとしては最大の成功とのことだ。社員数は350名を超え、すでに日本語対応もしており、Facebook広告などを中心に日本国内でも積極的にPRを行なっている。Wixを利用して制作されたWebサイトは4000万以上といわれており、この分野のスタートアップとしては最大級である。

単純にWebサイトを構築するサービスやアプリの市場リーダーといえばWordPressだ。WordPressサイト数は世界で7500万以上。Wixは肉薄とまではいかないが、無視できない規模になっているといえるだろう。

Jimdo.com

Jimdoはドイツのハンブルグに拠点をもつスタートアップだ。2007年の設立(創業は2004年)なのでスタートアップとはいえないかもしれない。現在1000万アカウントを超えるWebサイトを運営しており、日本国内ではKDDIウェブコミュニケーションズと組んで中小企業向けのWebサイト構築事業に取り組んでいる。ヨーロッパ発のベンチャーとしては、もっとも成功しつつある企業のひとつといえよう。

SquareSpace.com

SquareSpaceは、デザイン面で他社を圧倒するすばらしい制作ツールを提供しているのが特徴だ。自社サイトもおしゃれで、社員数も300名近く在籍しており、もはや貫禄さえただよう。創業は2003年で老舗ベンチャーといえるが、2014年4月にシリーズBを成功させ、4000万ドルを調達した。これまでの調達総額は8000万ドル近く、また獲得したアカウントは数百万サイトだという。

Weebly.com

WeeblyはスタートアップインキュベーターであるY Combinator出身のスタートアップだ。サービス的には先述のWixやJimdoらとほぼ同じだが、Y Combinator出身者という輝かしいレッテルをうまく利用して最近急成長している。Weeblyもまた、2014年4月に3500万ドルもの大型調達をはたしており、本格的に海外進出を目指しているようだ。Weeblyを使った運営サイトはすでに2000万を超えている。

Strikingly.com

Weebly同様、Y Combinator出身の中国人が創業したスタートアップだ。上述のライバルたちに比べると、創業したてのため実績はまだ少ない。WebサイトというよりもWebページ制作という感じで、複数ページをもつWebサイトではなく縦に長い1ページのWebページが制作できる、というコンセプトで差別化を狙っている。

その理由は、StrikinglyがWebサイトではなくスマートフォンサイトをつくろうとしているからである。Strikinglyがいうには、アジア圏では日本や欧米と異なりPCサイトをつくってからスマートフォン向けに最適化するというプロセスをほとんどしない。PCサイトはつくらず、いきなりスマートフォン向けサイトをつくることが多いという。PCの普及が遅れた結果、逆にスマートフォンの普及に勢いがあり、結果としてPCサイトの需要は少なくスマホサイトのみで問題ないということらしい。

だからスマートフォン向けサイトとしては、縦に長い1ページのWebページがあれば十分で、あとから充実させていけばよいというわけである。ただし、制作ツールはいまのところスマートフォンに対応していないようだ。

このように、優秀なプレイヤーがそろい、世界的にかなりホットな市場になっているのが簡単Webサイト構築サービスという、一見レガシーな領域なのだ。

ターゲットはモバイルオンリー世代

従来のWebサイト構築サービスや各種インターネットサービスは、モバイルファーストという考え方を標榜しているが、現代は若者を中心にPCを使わずモバイルデバイスだけでインターネットを使う傾向が加速的に進んでいる。このような世代はモバイルオンリーとよばれる。

2014年現在、モバイルファーストという考え方ではもう足りない。モバイルオンリーの考え方こそが必要なのである。PCサイトをつくり、モバイルデバイスでも閲覧できるように工夫したり、スマートフォン用のデザインを考慮するような複雑な考え方は、もはや古いのだ。逆にいえば、モバイルオンリー層に対して最適な利用体験を与えられるWebサイトを、企業に対してリーズナブルなコストで提供するベンチャー企業が台頭しているのである。

モバイルオンリーへ情報を伝えるために必要な工夫というものがある。それはスマートフォンに最適化したスタイルシートを用意することであり、OGP(Open Graph Protcol…FacebookやTwitterなどメジャーなソーシャルネットワーク上で引用された記事を、正確に表示するための規格)をサポートすることだ。

スマートフォンおよびタブレット端末を総称してスマートデバイスという。スマートデバイス上でのインターネットトラフィックのシェアは

モバイルトラフィックシェア
モバイルトラフィックシェア

(2014年4月現在 ※出典:http://www.flurry.com/bid/109749/Apps-Solidify-Leadership-Six-Years-into-the-Mobile-Revolution#.U2nimF5-PA8)

・ゲームアプリ 32%

・Facebookアプリ 17%

・その他アプリ 37%

・Webブラウザ 14%

という割合になっている。

「その他アプリ」はTwitterなどのソーシャルネットワークやニュースアプリなどが中心だ。だからこの結果だけをみると、スマートフォンサイトの必要性を軽く感じてしまうかもしれないが、実際はそうではない。

なぜならFacebookアプリはもちろん、ゲームアプリをのぞくほとんどのアプリは、コンテンツとしてWeb上の情報を流通させているからだ。結局のところ、複数アプリ間で情報を共有するには、Webがもっとも使いやすい。Facebookアプリをはじめ各種アプリはいわゆるアプリ内ブラウザというWebサイトを表示させる機能を包含しており、それによってコンテンツをシェアしている。

要するに、ゲームアプリ以外のモバイルトラフィックを支えるアプリの68%は、Webとの共存状態にあるプラットフォームであるということだ。そして、アプリ内ブラウザの恩恵を正しく受けるには、OGPをサポートしておく必要がある。スマートフォンの狭い画面では、ピンチアウトしなくても文字や画像を綺麗にみせるような工夫とOGP対応が必要なのである。

これらの仕様を、あえてユーザーに意識させることなく簡単に提供する。そういう、いわばファストWeb、ファストモバイルのコンセプトをもつベンチャー企業の台頭は、今後日本国内でも大きな注目を集めるだろう。

via Mdn Interactive