Lady GAGA、倖田來未、ときどき板野友美。

倖田來未ファン専用SNS

レディー・ガガは現代のエンターテイメント業界におけるすぐれたアイコンになったが、彼女ほどソーシャルブランディングを理解しているアーティストはほかにいない。

彼女が早くからTwitterとFacebookを使いこなし、多くのファンからの支持を集めていることは有名な話だが、サインを決して拒否せず、コンサートのあとでもファンとの直接的な交流の機会をしばしば提供するなど、話題づくりもうまい。彼女はインタビューで「音楽はファイルではなくストリームになった」と述べるなど、CDから配信(ストリーミング)へと変質する音楽業界への正しい理解をしており、パッケージングが変わっても音楽ビジネスで生き残れる柔軟な才能を持っていることがわかる。

彼女は奇抜なファッションで有名だが、それらをステージ衣装とするのではなく、一目に触れる可能性がある場合は絶対に普段着で外出することはない。いつどこででもパパラッチに撮影される可能性があり、独特の世界観とガガとしてのコンセプトを壊さないためにも、素顔の自分をさらすということをみずから禁じているのである。世界中がソーシャルネットワークによってリアルタイムにつながっていることを熟知しているからこその覚悟だ。

その彼女が自分自身のブランドによる新ソーシャルネットワークサービスを立ち上げた。それがLittlemonsters.comというWebサイトだ。基本的にはPinterestクローンといってよいが、写真と映像のアップロードだけでなく、ユーザーがWebサイト上で直接描画できる機能をもっており、自作のイラストを公開・共有することが可能だ。

Pinterestは、またたく間に全米第三位のソーシャルネットワークにのぼり詰め、しかも女性を中心にユーザーを集めた。Pinterestの特徴は、写真の共有とシンプルなレビューシステムであり技術的には非常に簡単なつくりであること、同時に簡単なつくりであるからこそ誰にでも使いやすいエレガントなユーザーインターフェイスを持っていることだ。写真をアップする積極ユーザーも多くなるが、受動的に写真を見て、それをシェアするユーザーにとっても「拡散」というモードで気軽に参加できる仕組みだ。

PinterestはAmazonやeBayにも採用され、商品情報の拡散に一役かっている。つまり情報の拡散力を証明したUIをもち、つくりが簡単だから模倣しやすい。その結果、レディー・ガガのLittlemonsters.comが登場したともいえる。

今後、芸能人や大企業のようにそもそも大きな影響力をもっている者は、FacebookやTwitterのようなプラットフォーム上にアカウントをもつと同時に、オウンブランドでの自社ソーシャルネットワークの運営を志向するだろう。特にPinterestのようにクリックを誘発するすぐれたUIを持ちながらつくりが簡単なサービスをコピーすることはよい戦略になる。

その先鞭を国内でつけたのが倖田來未であり板野友美だ。

日本国内でレディー・ガガに匹敵する影響力を持つアーティストを捜すことは非常に困難だが、たぐいまれなる歌唱力とダンスでブレイクした倖田來未と、AKB48という人気グループにいながら独自の存在感でティーンエイジャーの女子にも人気の板野友美が参入したことで、アジア全体に広がる事例ができたと言える。両者ともに、実は僕がプロデュースしたソーシャルネットワークプラットフォームを利用していることから我田引水になるので、これ以上は説明しないが、僕は実践者として、良いと信じるものを形にしたいと思うし、それを人々に伝えたいと考えている。いずれにせよ、コカコーラが運営するコカコーラパークや、味の素が運営するAJINOMOTO PARKなど、高い消費者認知を持つブランドならば、間違いなく自社メディアをソーシャル化して、顧客を囲い込みたいし、その実現性はあるはずだ。

(本記事は、2012年4月17日にMdN Design Interactiveに寄稿したものを一部加筆修正したものです)