読者の方々にはすでにiPhone5の予約申込を済ませ、入手した方も多いだろう。僕ももちろん入手した。

Mapの出来の悪さにはご多分に漏れず失望を隠せないものの、全体的には非常に満足している。筐体の軽さや、反応の良さはさすがにこなれていると思う。

iPhone 5
iPhone 5

とはいえ、iPhone5は、iPhone4Sと比べると凡庸な進化に過ぎない、という感想を抱く読者が多いかもしれない。実際にはCPUなどのアーキテクチャが一新され、画面も3.5インチから4インチへとiPhoneの登場以来はじめて変更されているうえに、OSもメジャーバージョンアップされているのだが。やはり、ほぼすべての変更点が事前にさまざまなメディアにリークされていたことが、新奇性を損なってしまったのかもしれない。iPhone5はスティーブ・ジョブズ亡き後のAppleがはじめて出したiPhoneであり、同社の今後の成長が継続するかどうかを占う重要な製品であるが、マーケティングやブランディング的な観点でいうと、ジョブズ時代のAppleの特徴であった新製品事前情報の完全秘匿による神秘性を失いつつあるのは悪い兆候かもしれない。

iPhoneはおよそ年に1回のハードウエアアップデートであるが、Android OS搭載機はほぼ毎月どこかのメーカーが新製品をリリースしている。この結果、世界中のスマートフォン市場の60%をAndroidが占め、iPhoneは20%足らずまで追い込まれた。年に一度(最近ではたいてい9~10月)の新iPhone発表イベントは、今後もより衝撃的な印象を世界に与えていかねばならない宿命にあるといえるのだ。

しかし、ソフトウエア――特にOSの面でいうと、iPhoneはAndroid陣営をはるかに凌いでいる。iOSの現段階の最新バージョンは5.1.1だが、現在アクティブなiPhone/iPadの70%近い筐体にインストールされている。iPhone5に搭載される次期バージョンiOS6は既存のiPhone3GS/4/4S、iPad2、新iPadに適用可能だから、またたく間にiOSのバージョンシェアはiOS6がトップになるはずだ。

これに比べるとAndroidは一世代古い2.3が60%ほどで、さらに古い2.2と2.1が合わせて30%を占めている。最新OSである4.0は3%に満たないという。つまりOSベースでみる限り、あきらかにiPhoneのほうが進化している。

開発者目線でみたときに、ネイティブアプリにしてもWebアプリにしても、Androidは実に難物である。これだけ新旧の複数のバージョンが混在し、それぞれに対応するアプリを開発するのはかなりの手間がかかるからだ。

僕はこれまで幾多にわたって、iPhoneこそはハードウエアによって物理的にコントロールされているスマートフォンではない、史上はじめてソフトウェアによってコントロールされたスマートフォンであると述べてきた。iPhone以前に世界を席巻していたBlackberryは物理キーボードを備えていたが、iPhoneは入力デバイスを仮想キーボードにすることでスマートフォンの常識を一変した。Androidもまたソフトウエアによって制御されるスマートフォンではあるが、進化速度がハードウエア依存でありソフトウエア依存ではない点で、まだまだiPhoneには劣っていると僕は考えている。

iPhoneは年に数回のOSアップデートによって購入した後でも着実に進化するし、その喜びをユーザーに熟知させることに長けている。Android陣営はその点でひどく見劣りしている。

(本記事は、MdN Design Interactive 2012.09.18に掲載された記事に少しだけ手を入れて掲載しています。元記事はこちら