接触8割減を達成している人は、どのくらい外出を控えているのか 緊急事態宣言後の外出調査から その3

(写真:アフロ)

これまでの報告まとめ

 筆者は「新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言に関する外出・接触についての社会調査(N=2,261) (注1)」を行うことで,ロックダウンという手段を選択した他国に対し,わが国独自の「自粛のお願い」という要請に基づく解決策は,どの程度外出や接触を抑制できているのかを明らかにしようとしました.この調査によって,前々報および前報では,

・緊急事態宣言が出た後の7都府県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・大阪府・兵庫県・福岡県)では既に,9割の人が何らかの外出自粛を行っているが,「通勤・通学」目的の外出を控えている人は3割程度であること

・外出目的によって自粛を促す施策は大きく異なると思われること

・スーパーは感染を恐れつつも仕方なく行っているが,公園は安全な場所だと思ってみんなが行っていること

・感染を恐れて他地域に移動した人(巷でいうコロナ疎開)は全体の0.7%であったこと

などを記述いたしました.これに続き本報でも,外出自粛の影響について報告したいと思います.

前々報:新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言で,どのような外出がどの程度減少したのか?

前報:人口の何%が、感染を恐れて他地域に移動したのか? 「緊急事態宣言から2週間」での外出調査から

「接触8割」という社会の目標(?)とは

 さて,メディアの報道やSNSを見ると,外出自粛の達成目標として「人との接触8割減」「通勤7割減」などの数値を目にすることがあります.私は感染症対策や経済の専門ではないため,この数字の根拠が妥当なのかどうか判断がつきません.しかしながら,都知事が買い物回数の制限にまで言及し始めたいま,もし「人との接触8割減」を目指そうとするならば,我々はどの程度外出自粛に貢献すればよいのでしょうか.最近では,屋外空間である公園で遊んでいる子供たちに対して,役所にクレームがよせられたという報道もされています(参考1).一方で我々の調査では,回答者の約3割が外出の自粛が原因で「精神的に気が滅入るようになった」と答えており,外出の自粛は経済的なダメージのみならず,精神的な影響も少なくないようです. このようななか,最重要事項とはいえ「なんでもかんでも自宅待機」の感染症対策一辺倒でない日々の暮らしをどう実現すればよいのでしょうか.

 他方でここ数日は,大型連休に向けて「来ないでください」というお願いが観光地からされるといった報道を目にするようになりました.海岸への立ち入りを自粛してもらうよう求めた看板が設置される事例もあるようです.しかし,一部の場所を制限するだけでは,いたちごっこになるかもしれません.なので,今回は人が集まる「場所」ではなく,発生の需要に注目するため「外出」をキーワードとし,人との接触を避けている回答者の外出状況データをみることで,我々は個人個人がどのような外出をどう制御すればよいのか,について考えてみたいと思います.

「外出の程度」と「人と会った回数」をどう数量化するか

 上記の調査では,「通勤・通学」,「買い物」,「食事・社交・娯楽」,「観光・行楽・レジャー」などの外出目的ごとに「あなたは,この目的の外出回数は普段と比べてどの程度になりましたか」といった形式で,2月中旬から緊急事態宣言が出た翌週の4月中旬まで外出頻度をお尋ねしています.なので外出の程度については,今回はこの回答を用いたいと思います(なお,以降では「通勤・通学」を通勤,「食事・社交・娯楽」を食事,「観光・行楽・レジャー」を観光と表現).次に接触の程度です.これも前々報でお伝えしましたが,この調査では,満員電車などのケースを考えると「あなたがこの期間に行った"人との接触"は,コロナウイルスの感染が問題になる前と比べてどの程度になりましたか」という設問が非常に答えにくいことが予想されました.そもそも満員電車での接触人数1人と,会って話す状況での接触1人は感染が伝播する確率は等しいとは言えません.そのため悩んだ結果,調査では「平常時と比較して人と会った回数がどの程度減ったか(ただし同居者を除く)」という数字を答えてもらっています.したがって,現在の感染拡大抑制の目安である「接触8割減」と本調査で尋ねた「人と会った回数8割減」は異なるとしつつも,ここでは「人と会った数」を「接触」の程度とみなし,ふだん人と会う回数と比較した割合をその時期の「対面率」と定義しました.つまり対面率が8割の場合は,「普段と会う人数がそこまで変わっていない」ということを表します.

 それでは,この「対面率」に応じて,緊急事態宣言後の外出頻度はどう変わるのでしょうか.ここではそれぞれの外出目的で「もともとこの目的での外出はない」というサンプルを除いたうえで,両者を比較したいと思います(注2).

「8割減」を達成している人は、どのような外出を控えているのか

 図1は対面率が普段の8割以上,つまり人と会う回数が普段とあまり変わっていない集団の目的別外出割合です.

図1:対面率が普段の8割以上の人(あまり変わっていない人)の目的別外出割合(N=213)
図1:対面率が普段の8割以上の人(あまり変わっていない人)の目的別外出割合(N=213)

 どうやら,「仕事や買い物はいつも通りで,食事と観光を控えている」という人は,人と会った回数はあまり変わっていないようです.図1を細かく見ますと,普段より多く仕事や買い物に行くようになった人も若干いるようですが,仕事・買い物に全く行かなくなった人はともに10%以下で,73%がいつもと同じように仕事をしています.一方,食事と観光についてはどちらも半分以上が外出を控えています.食事は密集・密閉・密接のいわゆる3密が揃うような場所を避けるという目的で,観光は他地域への感染拡大防止という目的で,それぞれ外出の自粛が促されているのだと思いますが,「出会う人の数を減らす」という意味では,半分程度の人が食事や観光目的の外出をやめたところで,まだまだ「接触8割減」には遠く及ばないということが示唆されます.

 一方で,図2をご覧ください.これは対面率が3割から7割,つまり「人と会った回数」がまあまあ減っている方々の目的別外出状況です.

図2:対面率が普段の3-7割以上の人(やや人と会う回数が減った人)の目的別外出割合(N=362)
図2:対面率が普段の3-7割以上の人(やや人と会う回数が減った人)の目的別外出割合(N=362)

 図1との大きな違いをみてみましょう.まずは,いつもと同じように仕事に行っている人は10%減少し(73%→63%),仕事に行く回数が半分くらいになった人が9%上昇しています(8%→17%).しかし,それよりも大きい変動は買い物にありました.いつもと同じように買い物に行く人は53%から32%と実に21%減っており,買い物目的の外出が半分くらいになった人は19%から39%へ2倍以上に増加しています.他方で食事や観光も, いつもと同じくらいの人がともに1/3くらいに減少しており (食事が23%→8%で観光が21%から7%),食事に全く行かなくなった人が9%(46%→56%),観光に全く行かなくなった人が12%増えています(61%→74%).図1と図2を比較すると「目的にかかわらず普段と同じように外出している人が満遍なく減ったが,特に買い物を半分くらいに減らした人が顕著で,観光や食事に全く行かない人もけっこう増えた」という解釈ができそうです.ここまでは,プライベート目的の外出を制御することで達成できるようです.

 最後に図3は対面率が2割以下,つまり「人と会った回数」が8割以上低減したと回答した人の外出状況を示したものです.

図3:対面率が普段の2割以下の人(かなり人と会う回数が減った人)の目的別外出割合(N=492)
図3:対面率が普段の2割以下の人(かなり人と会う回数が減った人)の目的別外出割合(N=492)

 図3の人たちの標本数は図1と比べて2倍以上で,結構多くの方が「人と出会う回数が8割以上減った」と回答してくれています.もし「人と会った回数8割減」と「接触8割減」は感染拡大を抑制する上で同程度と見なせるならば,「接触8割減」を達成するためにはこの人たちを目標とすべき,と言えるかもしれません.さて図2と図3を比較すると,買い物目的の外出は1/4に減らした人がやや増えたものの,大きくは変わっていません.また,観光目的の外出や食事目的の外出は多くの方が全く行っていませんが,図2と比べると変動は10%くらいで,このあたりはもう限界かもしれません.大きく変わっているのが通勤です.いつも通り仕事に行っている人は図2と比べ,63%から39%と激減しています.また,全く仕事に行かなくなった人は,8%から34%と激増しています.そしてまた,通勤については全く行かなくなった人といつも通りの人で二極化しています.この調査は様々な職種の方に回答いただいていますが,会社員に限っては,会社への通勤は個人の意思決定よりも会社の意思決定が優先されるので,通勤者個人に自粛を促しても効果は低いでしょう.事実,通勤や通学,日用品の買い物を不要不急と思っている人はごく少なく,いずれも10%程度です.小池都知事の「スーパーは3日に1回」という呼びかけは,図2~3でまだまだ減らす余地があるように思える,買い物の赤色の部分を減らしたいという意図かもしれません.しかしながら「8割の接触回避」という目的を達成するには,やはり通勤目的の外出抑制が鍵となるように見えます.つまり,図2の外出状況を図3のようにするためには,「不要不急の外出をしないようにしよう」というお願いだけではなく,「公園で遊ぶ人達がけしからん」ということでももはやなく,会社に働きかけるなどして通勤を何とかしないと目標達成は厳しいということではないかと考えられます.

おわりに

 今後,状況がより深刻になる場合も考えられます.上記の分析からは,「接触8割減」が適切な目標なのかどうかはともかく,それを達成したいのであれば「プライベート目的の外出自粛をお願いする」だけではもうちょっと限界で,現在各地で行われている施策のように,会社に対する休業の要請や休業補償,テレワークの推進などをより広範に,ピンポイントで促すことが必要とされるかもしれません.つまり「最低限の都市活動を機能させるためにどの社会機能を止め,どの社会機能を生かすか」といった取捨選択と,「会社への働きかけ」を検討しないかぎり,個人個人の意識向上だけではどうも「8割減」は難しそうということが,なんとなく見えてきました.社会機能の維持については以前から,例えば内閣官房などでも新型インフルエンザ等を対象とした社会機能に関する有識者会議が開催されていますが(参考2),これらの議事録や資料を見ても,そもそも医療・福祉・インフラ・公務などだけでも相当数の従業者がおり,またテレワークできない仕事内容の方々も多く,通勤目的の外出を大幅に抑制すること自体がそんなに簡単なことではないように思われます.今後の状況次第では,何人の命を助け,その代わりにどの程度の社会全体の経済的損失を許容できるかといった,「リスクの許容」についての認識を,このあたりで共有しておく必要があるかもしれません.

注1:このアンケート調査は,東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・兵庫県・大阪府・福岡県・宮城県(仙台市)・愛知県(名古屋市)・広島県・北海道に居住する18歳以上の方5,541人に対し,性別・年齢や住まいの変更,職業・業種などについて尋ねたうち,このなかで性別・年代・職業を絞ったうえで2,261人を抽出し,より細かい質問に答えていただいています.回答くださった方々に御礼申し上げます.また本稿で用いた数字などは速報値になりますので,今後加筆修正する可能性があることをおことわりいたします.

注2:なお本調査では,ここで定義した対面率と目的別・外出の程度に関する重回帰分析を行いたかったのですが,分析してみた結果,有意な変数はいくつかありましたが相関係数が0.4と低く,対面率の減少と各目的の外出行動の減少はどういった関係性があるか,といった結果の導出は失敗に終わりました.

参考1:親子で公園、役所に苦情も

参考2:新型インフルエンザ等対策有識者会議「社会機能に関する分科会」