人口の何%が、感染を恐れて他地域に移動したのか? 「緊急事態宣言から2週間」での外出調査から

(写真:アフロ)

前報のおさらい

 前報では,筆者が行った「新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言に関する外出・接触についての社会調査(N=2,261) (注)」から

  • 緊急事態宣言が出た後の7都府県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・大阪府・兵庫県・福岡県)では既に,9割の人が何らかの外出自粛を行っていること
  • なかでも現在,「食事・社交・娯楽」目的の外出は平常時の7割が,「買い物」目的の外出は4割5分が,「通勤・通学」目的の外出は3割の人が外出を控えていること
  • この7都府県では,緊急事態宣言が出る前は「人と会った回数」が平常時の51%程度だったが,緊急事態宣言後はこれが34%にまで減少しており,現在は平常時と比べて65%程度の「≒人との接触」が回避されたと考えられること
  • 外出目的によって自粛を促す施策は大きく異なるため,都市封鎖一辺倒ではなく,地域や都市の特徴と外出目的に応じたきめ細かい施策の必要性

などを記述いたしました.これに続き本報でも,調査から得られた緊急事態宣言や外出自粛の影響について報告したいと思います.

前報:新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言で,どのような外出がどの程度減少したのか?

若い人は半数程度が通勤・通学を控えているが、50歳以上は大多数が出勤している(年齢別・目的別の外出傾向を分析)

図1:7都府県の目的別・「外出をしている人(青・黄・緑)」と「外出を控えた人(黒)」の割合
図1:7都府県の目的別・「外出をしている人(青・黄・緑)」と「外出を控えた人(黒)」の割合

 はじめに,7都府県の目的別外出を年齢別に分けて作成したものが図1になります.これを見ると,「何らかの外出を自粛している」割合(黒色)は50歳未満(実線)と50歳以上(点線)では大きく変わらず,どちらも約9割が何らかの外出自粛を行っていることがわかります.煩雑になるため図には入れていませんが,「買い物」目的の外出も両グループでほぼ同傾向でした.

 両グループで多少の差異がみられたのが,「通勤」目的の外出(青)と「行事・イベント」目的の外出(黄)です.はじめに「通勤」目的の外出は,50歳以上がどの週においても多く,現段階で通勤を控えている50歳以上は22.1%と低い水準であることがわかります.30歳未満を取り上げてみるとこの傾向はさらに顕著で,彼らは現段階で42.4%が通勤・通学を控えています.年齢によって,従事する業種や仕事内容に若干の異なりは考えられるものの,社内の立場によっては在宅勤務をしにくい傾向にあることなどがこれより示唆されます.同様に「行事・イベント」も年齢によって多少質が異なると思われますが,こちらは逆に50歳未満の人が50歳以上の人よりも多く外出していることがわかりました.

 次に2月中旬の時点から両集団の差について注目します.これを見ると「通勤・通学」を除いて,50歳以上の回答者(点線)は早い段階から外出自粛を行っていることがみてとれます.これは初期の段階より,新型コロナウイルスに感染した場合の高齢者の重症化リスクの高さが知られていたためかもしれません.政府などはこのような傾向をモバイルデータの分析などで把握していたのでしょう,最近では政府や自治体・メディアをはじめとして若い人の外出抑制を呼びかけるメッセージが頻繁に出されるようになり,緊急事態宣言を経た現段階で,「買い物」や「食事・娯楽・社交」目的の外出については50歳未満も50歳以上もほとんど変わらない水準となっています.

 ところで図にはありませんが,もっと高齢である65歳以上の回答者の目的別・「外出を控えた行動」を分析してみた結果,65歳以上の人はより多くの方が自粛していることがわかりました.例えば「何らかの外出の自粛をしている」人は94.8%(全年齢では90.5%),「買い物」目的の外出を控えている人は58.4%(全年齢では45.4%),「食事・社交・娯楽」目的の外出を控えている人は75.1%(全年齢では68.9%)の方が現段階で外出を控えていることがわかりました.これも高齢の方の重症化リスクが関係しているものと考えることができるかもしれません.

「仕方なく」行くスーパーと「安全だと思って」行く公園

 緊急事態宣言から2週間が経過しようとしているなか,報道やSNSでは閑散とした都心部の映像や画像が取り上げられて緊急事態宣言の効果を伝える記事や投稿が目立ちますが,それにあわせてスーパーや公園などの混雑状況なども頻繁に報告されるようになりました.上記では外出目的に焦点を当てた分析を行いましたが,それではいま,多くの人はどのような場所を避けてどのような場所を恐れているのでしょうか.これを示したものが図2です.これは調査時点で「恐れている場所」と「避けている場所」をそれぞれ回答してもらい,それを平面上に落としたものです.

図2:感染を恐れている場所と、実際に避けている場所(N=2261)
図2:感染を恐れている場所と、実際に避けている場所(N=2261)

 はじめに多くの人が避けている場所は,夜の繁華街やゲームセンター・カラオケ,ライブハウス,スポーツジムなどでした.これらは,実に8割以上の回答者が感染を恐れており、6割以上の回答者が実際にこれを避けていることがわかりました.また,昼間の繁華街,雀荘,レストランなども,7割前後が感染を恐れており,また半数以上が避けていることがわかりました.図3は「もともと繁華街へはほとんど行かない回答者」を除いて、7都府県の繁華街への外出の程度を尋ねたものです.これをみると,現段階で「繁華街にまったく行かなくなった」という回答者は現状で8割にも及びます.特に,3/23~3/29の週から3/30~4/5の週にはこの割合が11%の急上昇を見せていることから,この時期を境にして繁華街には普段の利用者ですら行かなくなったということが明らかになりました.メディアなどでよく目にする「人気のなくなった繁華街」の映像と同じ傾向がデータからも読み取れたことになります.

図3:7都府県の繁華街への外出頻度の変化(N=711)
図3:7都府県の繁華街への外出頻度の変化(N=711)

 これらとは多少異なるのが,スーパーと公園でした.最近は飲食店や遊戯施設が休店・休園するケースも多く,またそもそも現段階では「食事・社交・娯楽」目的や「観光・行楽・レジャー」目的の外出が平常時の3割程度に減っています.また,図4は別の設問で「不要不急の外出」だと思うものをお聞きしたものですが,これによれば,多くの人が買い物や通勤・通学,散歩,入学式,卒業式,葬式などは不要不急の外出ではないとみなしているようです.つまり「食事・社交・娯楽」目的ならば食事の代わりに買い物へ,「観光・行楽・レジャー」ならば娯楽施設の利用の代わりに散歩へと,「不要不急でない外出」へと外出の質が転換している可能性があります.このうちスーパーは,半分以上が感染を恐れているものの,実際に行かないようにしている回答者は1割程度でした.なので多くの方が不安を持ったまま利用している場所だと言えるでしょう.人間の食べる量はそう大きく変わらないと考えられますので,もし「食事」目的の外出の多くが「買い物」に転換しているとすれば,感染が恐れられつつも多くの人で混雑している現在の状況は,納得のいくところです.

図4:どのような目的の外出を「不要不急の外出」と考えているか(N=2261)
図4:どのような目的の外出を「不要不急の外出」と考えているか(N=2261)

 同様に病院や介護施設も7~8割の回答者が感染を恐れていますが,避けている回答者は半分以下でした.スーパーと比べて避けている回答者の数が若干多いですが,これは病院に行く目的・緊急度が人によって異なることが理由と考えられます.図4から,「病院へのお見舞い」は不要不急と考える人が多い一方,「通院」を不要不急と答えている人は少ないことがわかります.また別の設問では「高齢者・基礎疾患のある家族」や「高齢者・基礎疾患のある友人・知人」にできるだけ会わないようにしている人はともに4割前後となっていました.したがって,図2では病院や介護施設を避けている割合は半数程度ですが,このなかには感染を恐れているものの避けることのできない,通院などの利用者が一定数以上いるものと考えられます.

 これに対して公園での感染を恐れている人は少ないことから,比較的安全な場所と認知されているようで,避けている人も少ないことが分かります.なので,不要不急と考える人が少ない「健康維持を目的とした屋外での散歩や運動」の目的地として選択された結果,利用者が多いのではと考えられます.

感染を恐れて他地域に移動した人はどのくらいいたのか

 4月17日に政府は,緊急事態宣言の対象を全国に拡大しました.これには,都市部から地方部への感染拡大を防ぐ目的も含まれているのではないかと考えられます.調査では,このような比較的長距離の移動についても尋ねています.はたして,感染を恐れるなどして他地域に移動したり住まいを変える行動(メディアなどで「コロナ疎開」と呼ばれている行動)はどの程度あったのでしょうか.ここではスクリーニング調査で,新型コロナウイルスが原因で他の都道府県に住む場所を変えたかどうかを回答してもらいました.新型コロナウイルスとは異なる理由で住まいを変更した人を除くと,結果としてこのような事例はわずか0.7%でした.また同様に,「新型コロナウイルスが原因で住まいの変更はないが,他の都道府県によくいくようになった」人も0.8%であり,ともにごくわずかと考えられます.なお,これを東京都だけに絞ると,前者は1.1%,後者も0.9%程度でした.

 しかしながら,学生についてのみ絞って分析をすると,「新型コロナウイルスが原因で住まいを変更した」人が3.1%いることがわかりました.特にこの内訳は,7都府県に緊急事態宣言の出る前が0.8%である一方,緊急事態宣言が出た後は2.3%であったため,緊急事態宣言が学生の住まい変更を促した可能性が示唆されます.3.1%という数字をどう評価すればよいかは難しいところですが,参考のため図5に「外出自粛が生活に与えた影響」を示しました.これをみると「健康上の問題が発生したり進んだ」という人が3.4%いることや,「家族と会話する時間が増えた」,「食べる量が増えた」,「睡眠時間が増えた」という人が2割程度いることがわかります.気になるのは,外出の自粛が原因で「精神的に気が滅入るようになった」回答者が約3割と多い点です.私の勤務する東京大学では,4月初旬からオンラインでの講義を行っているのですが,友達と会うことができず,また実家にも戻ることもできずに一人暮らしのワンルームの自室で延々とオンラインの講義を受講し続けている学生も,一定数いるのではと推察します.アルバイト収入も十分に得られないかもしれません.とすれば,新型コロナウイルス対策が想定以上の長期戦になった場合,精神的に気が滅入ってしまったり経済的に困窮する学生が急増する可能性も十分に考えられます.4月3日に携帯事業者各社が25歳以下を対象として追加データの購入を50GBまで無償化する対応を発表しましたが,地方への感染拡大を防ぐ意味でも,彼らの心の健康を守る意味でも,このような学生に対する手厚いサポートや配慮をぜひお願いしたいと思っています.

図5:7都府県における「外出自粛による影響」(N=1144)
図5:7都府県における「外出自粛による影響」(N=1144)

続きはこちらの記事になります.

注:このアンケート調査は2020年4月15日および16日に,東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・兵庫県・大阪府・福岡県・宮城県(仙台市)・愛知県(名古屋市)・広島県・北海道に居住する18歳以上の方5,541人に対し,性別・年齢や住まいの変更,職業・業種などについて尋ねたうち,このなかで性別・年代・職業を絞ったうえで2,261人を抽出し,より細かい質問に答えていただいています.回答くださった方々に御礼申し上げます.また本稿で用いた数字などは速報値になりますので,今後加筆修正する可能性があることをおことわりいたします