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桃田が金メダルを争う相手は、中国のエース石宇奇

平野貴也スポーツライター
中国のエース、石宇奇。男子単決勝で桃田賢斗と対戦する【写真提供:大会公式サイト】

 バドミントン世界選手権は4日、中国・南京市ユースオリンピック公園アリーナで各種目の準決勝を行い、男子シングルスは日本のエース桃田賢斗(NTT東日本)と地元・中国の石宇奇(シー・ユーチー)が決勝に進出した。

開催地の江蘇省出身

 悲願の初優勝は、完全アウェイの雰囲気を破らなければ、つかめない。石宇奇は、開催地の南京市から高速列車で2時間半ほどの距離にある南通市の出身。南京と南通は、同じ江蘇省にある。「南京は、縁のある町。親戚や故郷の知人も応援に来てくれるので、海外や国内の別の町で試合をするよりも自分にとっては良い」と地元優勝を狙っている。

桃田不在の期間に台頭

 

石宇奇は、どこからでも強打を打てるのが持ち味【写真提供:大会公式サイト】
石宇奇は、どこからでも強打を打てるのが持ち味【写真提供:大会公式サイト】

過去の実績では桃田が上回るが、バドミントン大国の新エースを侮ることはできない。桃田は2016年4月に違法賭博店の利用が発覚。無期限の出場資格停止処分を受けたため、今年に入るまでトップレベルの国際大会からは1年以上離れていた。処分を受ける前、中国では2008年北京、2012年ロンドンと五輪を連覇した1983年生まれの林丹(リン・ダン)や、2016年リオデジャネイロ五輪の金メダリストとなる1989年生まれのシン龍(※シンは、ごんべんに甚。チェン・ロン)が主軸だった。しかし、桃田不在の間に世代交代が進み、当時は国際舞台で駆け出しだった石宇奇がエースとなった。

 石宇奇は、今大会で自身の中国代表における立ち位置を示すような勝ち上がりを見せた。3回戦で林丹を圧倒。準決勝では、チェン・ロンを撃破。ストレート、クロスともにキレ味鋭い強打をたたき込み、ボディへ打たれた強打も好反応で返してみせた。世界トップクラスの実績を誇る2人の先輩を、ともにストレートで下し、寄せ付けなかった。「先輩たちは年齢を重ねており、スピードの面で自分にメリットがあったから勝てたのだと思う」と話した石宇奇は、1996年生まれの22歳で桃田よりも2歳年下。まだ成長力が見込める若手ながら、最新の世界ランクでは3位につける。

4月の初対戦は、桃田が勝利

初優勝を狙う桃田は、中国の新エースを再び破れるか【写真提供:大会公式サイト】
初優勝を狙う桃田は、中国の新エースを再び破れるか【写真提供:大会公式サイト】

 しばらく世界のトップ戦線から名前が消えていた桃田と、その期間に存在感を増した中国の新エースの対決になる。準決勝を先に終えた石宇奇は、対戦する可能性がある相手の印象を聞かれると「桃田選手は、技術の全面に優れていて、メンタルも強く、非常に良いコースを打ち分ける。成熟した選手だと思う。ダレン・リュウ選手(マレーシア)については、桃田選手ほどの情報は持っていない」と話した。桃田との国際大会における過去の対戦は、一度だけ。桃田が優勝した4月のアジア選手権(中国・武漢)の2回戦で、スコアは2-1(21-15、12-21、21-12)だった。雪辱の準備を整えて来るだろう。桃田も「石宇奇選手は、オールラウンダー。ディフェンスもアタック、スタミナ、パワーもすべてトップレベル。厳しい戦いになると思うけど、気持ちで負けないように足を動かして、自分らしくネット前のプレーから崩したい」と警戒心を示した。

 世界選手権の決勝で桃田と対戦する石宇奇には、地元だけでなく中国全土から期待がかけられる。桃田には、世界2位だった出場停止処分前を超える完全復活と進化の証明が期待されている。どちらが勝っても初優勝。5日に行われる金メダルをかけた大一番は、日中両国を筆頭に多くの視線を集めている。

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

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