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一斉休校より4週目に突入、学童保育はいま何に困っている?

平岩国泰放課後NPOアフタースクール代表理事
(写真:アフロ)

 3月2日の一斉休校要請より、月曜日より4週目に入ります。当初は今週から学校が春休みで、学童保育は朝から開校する予定でした。今年は、すでに3週間緊急全日開校を続けている学童保育が多く、大きな疲れを抱えた状況で春休みに突入しています。このたび、放課後NPOアフタースクールでは、ネットワークのある日本全国の学童保育など放課後現場にアンケートを取り、生の声を聞きました。

〇アンケート概要

・日本全国の学童保育など放課後施設

・2020年3月17日~21日回答

・有効回答数:50カ所

*紹介するにあたり、一部表現を統一しました

〇アンケートの主な結果

<開室状況>

アンケートを聞いた全学童保育が開室中、ほとんどが3月2日より緊急全日開室の対応

<緊急開室の影響として困っていることは何ですか(複数回答&フリーアンサー)>

1位:スタッフ/子どもの体調管理(59%)

2位:活動内容の制限(53%)

3位:子どものストレス(49%)

4位:職員のストレス(45%)

5位:活動のマンネリ化(41%)

(フリーアンサー)

・職員が少ないので、総出で毎日フルタイム勤務、交代で休めない(岩手県)

・学童保育は限られたスペースで児童が過ごすため、省庁が示している1メートル以上離れることなど感染予防を徹底は極めて難しい(兵庫県)

・学校が休校しているため、校庭での外遊びも制限されている(東京都)

・雨の日の過ごし方に困る(群馬県)

・マスクを子どもが嫌がる(沖縄県)

・利用自粛を呼びかけた結果、利用人数が予想よりも少ないのでなんとかなっている。春休みに入るとどうなるか心配(北海道)

・今回の対応がいつまで続くのか見通しがたたない(福島県)

・来年度のためのミーティングや準備の時間がとれない。新入説明会の開催ができず、いきなり1年生を4/1の受け入れになりそうで不安が残る(千葉県)

・遠足などの行事が中止になったため、その予算の消化に困った。記念品に充てた(静岡県)

・万が一感染していたら、周囲に多大な迷惑をかけてしまうことになるので、職員全員が不安に思っている(大阪府)

困っていることの1位は、やはり体調管理でした。スタッフ・子どもとも1人でも感染者が出ると、閉めねばいけない緊張感は非常に厳しいものがあります。スタッフは休日の過ごし方も気を遣っています。

3月2日からの緊急開室当初は、スタッフの量的な確保が最も大変なことで、それは現在も続いていますが、少し時間が経ち、課題はより活動の質の方にシフトしてきています。

フリーアンサーからも現場が必死で頑張っている様子がうかがえます。春休みに入っても利用人数に大きな変化はなさそうですが、一方で新年度が迫ってきていて準備不足の不安が日に日に大きくなってきています。

<緊急全日開室にあたり、活用しているサービスはありますか(複数回答)>

1位:特になし(57%)

2位:オンライン学習コンテンツ(16%)

3位:本や学習教材(16%)

4位:お弁当や食品の配送サービス(12%)

こちらは残念ながら「特になし」が最も多くなりました。探求学習系の教材などが広く利用可能になっていますが、小学校低学年が多い学童保育ではなかなか難しい状況です。またそもそも十分なネット環境がない学童保育も数多くあります。色々なサービスを探して手配する暇もなかった、という実態もあります。

<民間企業による支援策として、どんなものがあったら助かりますか(複数回答)>

1位:マスク・消毒薬などの衛生用品(84%)

2位:本や学習教材(53%)

3位:ボードゲーム・カードゲーム(45%)

3位:工作に使える廃材など(45%)

5位:おもちゃ(41%)

やはり圧倒的なのは、マスクや消毒薬のニーズです。しかし日本全国的に不足している状況が続いていますので、現時点ではなかなか厳しいものがあります。今後はこのような事態に備えて学童保育や行政側で必要な備蓄をしておくことが望まれます。

その他では本やおもちゃ、また工作などに使える廃材なども喜ばれる状況です。タブレットやプロジェクター、またインターネット環境の整備支援なども声がありました。

企業ボランティアなど人へのニーズもゼロではないのですが、非常時に普段一緒に過ごしていない人を受けるのは厳しい状況があります。このあたりの支援の最適配分をコーディネートする機能も今後の課題です。

<周囲からの支援で助かったことはありますか(フリーアンサー)>

・上毛新聞の子ども新聞、学校の先生のボランティア(群馬県)

・ローソンのおにぎり配達は、子どもたちがとても喜んだ(千葉県)

・マンガ本の提供、消毒薬の提供(宮城県)

・体育館や空き教室の利用が認められたこと(栃木県)

・学校職員のボランティア対応(沖縄県)

・教育委員会からの提案で図書館の本の貸出(大阪府)

・企業からの本やおもちゃの提供、保護者の方々からの温かいお言葉、子どもたちの元気な笑顔(神奈川県)

・町・国からの助成金で衛生用品の購入指示があったが、商品が無く探すのが大変。現物支給にして欲しかった(熊本県)

ローソンからのおにぎりの提供をあげていらっしゃるところが数多くありました。当初予定より大幅に数を増やして全ての要望に対応してくれたこともあり、今回の企業支援の中で非常にありがたかったものの1つです。他には子どもたちの過ごし方が広がるような本や教材、おもちゃなどのご支援への喜びの声がありました。

また学校からの場所や人の支援はそれほど広く実施されなかったものの、それらが実施されたところでは感謝の声がありました。

<緊急開室にあたりイレギュラーに対応したことなどがあれば、ご記入ください(フリーアンサー)>

・小学生の子どものいる職員が中抜け・早退できるようにシフトを組んだ(北海道)

・児童館が閉館になったため、その職員にもシフトに入ってもらった(宮城県)

・食事の人数を減らすため、学童保育の子どもたちへの昼食提供回数を増やした(岩手県)

・毎日違ったスタッフ企画を実施、オンラインで他の施設とつなげた(東京都)

・NHK for Schoolを学校から借りた(広島県)

以上がアンケートの声です。まだまだ学童保育の現場は綱渡り状態ですが、全力で頑張っている状況が続いています。「ご支援をしたい」と声をかけてくださることも増えていますが、なかなか受け入れる余裕もない状況も続いています。とはいえ、地域や企業が支援できることもありますので、ぜひ上記のアンケートの声が参考になればと思います。

アンケートの最後に保護者から各現場に寄せられた感謝の声の紹介がありました。

「小学校が閉校となり、ただちに学童保育が朝から預け入れる体制を整えてくれたことに感謝(愛知県)」

「素早い対応で 開所していただいてとても助かります!(岡山県)」

「6年生でも卒業まで預かってもらえて、安心して過ごすことができました(大阪府)」

「特別支援の子供達は学年を問わず受け入れを行ってくれてとてもありがたい(北海道)」

このような保護者や子どもたちの感謝の声に学童保育のスタッフは支えられています。現場では、引き続きプレッシャーの強い長期戦が続きますが、使命感で頑張る学童保育の応援をどうかよろしくお願いいたします。

放課後NPOアフタースクール代表理事

放課後NPOアフタースクール代表理事。1974年東京都生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。株式会社丸井入社、人事、経営企画、海外事業など担当。2004年長女の誕生をきっかけに、“放課後NPOアフタースクール”の活動開始。グッドデザイン賞4回、他各種受賞。2011年会社を退職、教育の道に専念。子どもたちの「自己肯定感」を育み、保護者の「小1の壁」の解決を目指す。2013年~文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年~渋谷区教育委員。2019年~新渡戸文化学園理事長。著書:子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門(2019年発刊)

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